僕たちは天使になれなかった   作:GT(EW版)

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もしもシリーズ 「パラレルワールドの場合」

 

 

 あんなに怒ったのは、生まれて初めてなんじゃないかと思う。

 

 しかしこれは本当に……心に来る。あの時代のベジータさんも、地球を攻めに来るような人だから非道な人間だっていうのはわかっていた。

 だけど、ボクの知っている人が――言葉を交わして仲良くなった人が死んでしまったのは、とても悲しい。

 

 ――東の都は、ナッパというサイヤ人に滅ぼされた。そこに居る住民も……ネオンちゃん達も、みんな死んでいたのだ。

 

 トランクスさんの話によれば、諸々の事情から彼らがドラゴンボールで生き返ることはなかったのだそうだ。

 だけどそれは元々の歴史通りに起こったことだから、ボクにはもう手を出すことは出来なかった。仮にあそこで東の都の人達が死なないように歴史を改変したとしても、それは時間の秩序を乱すことになり――ボク自身がタイムパトロールの敵になってしまうだろう。

 

「……でも、なんだかなぁ」

 

 先ほどボクが行ってきたのは、改変されたエイジ762年の11月3日。二人のサイヤ人、ベジータさんとナッパが地球に来た時代だ。そこでナッパと対峙したボクは、彼によって東の都が破壊された事実を知ってしまった。

 

 ――その時、ボクは頭の中が真っ白になった。

 

 ボクは激しい怒りに任せて拳を振るい、ナッパを倒した。

 

 

 

 そうして任務を終えて、トキトキ都に帰ったボクは精神的に疲労困憊だった。

 

 タイムパトロール隊員が、歴史の大元を壊すようなことをしてはいけない。だからボクには、あの子達を救うことが出来なかった。

 始めは単に強い奴と戦えるからって喜んで引き受けた仕事だけど……今回の仕事でボクは、タイムパトロール隊員の辛さがわかったような気がする。

 

 

 

 

 

「ねえ、トランクスさん」

「ノエンさん?」

 

 そんな悔しい一日が終わった後、今日はトランクスさんがボクに気を遣って休暇を与えてくれた。

 せっかくだし、その好意に甘えてトキトキ都内をぶらついてくるのも良かったけど……結局、大した気分転換にはならなかったのでボクはトランクスさんの働いている「刻蔵庫」へとお邪魔することにした。

 

「歴史の改変っていうのはさ、パラレルワールドが出来ることもあるんだよね?」

「パラレルワールドですか……ええ、確かにどの時間軸にも多くの分岐点があるので、何らかの拍子に未来が枝分かれすることはありますが……」

「面白いことを話しているじゃない」

「時の界王神様?」

 

 開口一番に切り出したボクの質問に、トランクスさんがすぐに答えを返してくれる。

 「パラレルワールド」というのは、ある出来事がきっかけで時空から分岐して、それに並行して存在する別の世界のことだ。並行世界だとか並行宇宙だとか、並行時空と呼ばれたりすると、昔悟飯さんから聞いたことがある。

 ボクはそのことについて、彼に相談があった。すると丁度その場に居合わせていた時の界王神様が、脚色を入れて「パラレルワールド」について詳しく説明してくれた。

 

「歴史の改変っていうのは、大抵の場合はパラレルクエストで辻褄を合わせたりして一本道に戻るんだけど、この前のあれみたいに酷い改変があった場合には、タイムパトロールからの大掛かりな修正が必要になる。それはわかるわね?」

「うん、今ボク達がやっているのは、その「大掛かりな修正」って奴でしょ?」

「そうよ。でも、それが必要のない改変っていうのが中にはあるの。「もう一つの歴史」としてその時間軸から独立した時空――修正の必要がない改変世界。それが、ここで言う「パラレルワールド」よ。

 貴方の居た世界の「孫悟空が心臓病で死なない歴史」みたいなのはわかりやすいわね。あの世界では孫悟空が死なないことの方が正しい歴史になっているから、修正する必要がないのよ」

「ああ、だからタイムパトロールは、トランクスさんが変えた過去は元に戻さないんだ。戻されたら困るけど」

 

 基本的に歴史の改変は重罪扱いになるのだが、例外的に無罪放免として認められるケースがある。その一つが、「世界そのものがパラレルワールドに分岐した場合」なのだそうだ。

 この場合は元々の世界の歴史が歪むわけじゃないから、時の界王神様達が危惧しているような時空のバランスが捻じ曲がる恐れもないらしい。

 小難しいことはよくわからないけど、ボクとしては「パラレルワールド」が実在することさえわかれば十分だった。

 ……これで、本題に入れる。

 

「じゃあさ! 東の都が滅ぼされずに済んだパラレルワールドっていうのはないかな?」

 

 前振りをしてみたけど、ボクがトランクスさんと時の界王神様に聞きたかったのはそのことだ。

 この世にはたくさんの分岐点があって、何らかの拍子にパラレルワールドが生まれることがある。

 だったら何かがきっかけになって、あの町の人達が救われる世界があってもいいんじゃないかと……ボクはそんな、気休めみたいな救いを求めていた。

 

「さあ、あるんじゃない?」

「あれ、意外とあっけない」

 

 そして意外にも、時の界王神様はあっけらかんと肯定してくれた。

 いわく、パラレルワールドが自然発生するきっかけなんていうのはそれはもう宇宙中無数に存在している為、一個人にとって都合の良い世界があったところで驚くに値しないのだとか。

 時の界王神様の言葉に少し拍子抜けすると、言った傍からトランクスさんが一冊の巻物を棚の中から抜き取ってくれた。

 

「……多分、これじゃないでしょうか? 俺も昨日見つけたばかりで、にわかには信じられませんでしたが……ノエンさんの言っていた「ネオン」という人物が中心になっている巻物は、ここに何冊かありました」

「本当っ!?」

 

 時を司る巻物――「終わりと始まりの書」。

 今しがたトランクスさんが抜き取ったのは、時の界王神様が説明してくれた「パラレルワールド」の歴史の一つが書き記されている巻物だった。

 難しい顔をしながら巻物の中身を確認するトランクスさんに、ボクは逸る思いで詰め寄った。

 

「ねえ! その巻物見せてくれない? あの家族が生きていたら、どうなっていたのか知りたいんだ」

「それは……」

 

 パラレルワールド――それは、この世界における「もしも」の可能性だ。もちろんそれを見たところで現実に失った命はドラゴンボールでも使わなきゃ戻らないし、根本的な解決にもならない。だけどボクはそれを承知の上で、あの子の生きている未来を見てみたかった。

 会話をしたということもあるけど、ボクにはどうしてもネオンちゃん達のことが、赤の他人には思えなかったのだ。

 必死に詰め寄るボクの頼みを受けて、トランクスはこの場の最高責任者である時の界王神様の許可を伺う。

 時の界王神様は肩をすくめると、くすりと笑いながら言った。

 

「個人のプライベートに踏み込む時はちゃんと節度を守ること。それさえ守れば、私からは何も言わないわ」

「やった! 流石時の界王神様! 宇宙一美人で話のわかる理想のレディだね!」

「ふふん、本当のこと言ってくれるじゃない。お礼に手料理を食べさせてあげるわ」

 

 話のわかる素敵な神様に、ボクは喜びに跳び上がりながら礼を言う。

 しかし時の界王神様は、最後に釘を刺すように忠告してきた。

 

「ただ、貴方にとって都合の良いパラレルワールドがあったからって、正史では東の都が滅びている事実は変わらないわ。それだけは忘れないで」

「……うん、わかってる。だけど、あの子達が犠牲にならずに済んだ世界があるなら嬉しい。だって、どう頑張っても死んでしまう未来なんて寂しいじゃない」

「……俺にも、その気持ちはわかります」

 

 目当てのパラレルワールドが見つかったところで、あそこで失った命が戻ってくるわけではない。ボクが見ようとしている巻物は、広げてみたところで自己満足にしかならないだろう。

 ただ、それでもボクは知りたかった。あの家族が……特にネオンちゃんがあれから順調に成長していった可能性の未来を。

 ボクって、思っていたより情に厚かったのかな? 自分でもこの気持ちがとても意外に感じる。

 だけど、あの子が幸せになる姿を見てみたくて、ボクは昨夜中々寝付けなかったぐらいだ。

 晴れて閲覧の許可を貰ったボクはトランクスさんから巻物を受け取り、適当な机の上に広げる。

 そしてボクはその中身を、食い入るように読み上げた。

 

「どれどれ……」

 

 するとほどなくして、紙面の上にその巻物に記されている出来事が、まるで映画のワンシーンのように浮かび上がってきた。これが巻物――「終わりと始まりの書」の特徴だ。

 

 

 

「え……?」

 

 浮かび上がってきたその映像に、ボクは困惑の声を上げる。

 

 だってさ、これって……どういうことだよ?

 

 

『大切なものは全部奪われた! 君達サイヤ人が何もかも壊したんだっ!!』

 

 

 ――その巻物に載っていたのは、何故かボクと同じ色の髪に染まっているネオンちゃんの姿と……彼女と対峙している少年時代の悟飯さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ああ、なるほど、そういうことか。

 

 ボクはこの巻物に載っていたパラレルワールドの出来事を見終わった後、妙に納得してしまった。

 ネオン――そして、ベビー。地球人の女の子と、ツフル人が生み出した怪物。

 お互いが一つの存在へと同化し、お互いの感情を溶け込ませた二人は、反発し合いながらサイヤ人への復讐に臨み……戦いの最後はベビーが死に、ネオンが一人の女の子に戻るという結果に終わった。

 

 悟飯さんが、彼らの苦しみを終わらせてくれたのだ。

 

 しかし戦いの後でネオンはベビーの後を追って昇天し、悟飯さんは後悔の叫びを上げてそんな彼女を見送った。

 

 

 それから三年後――ネオンは悟空さんと一緒に一日だけこの世に戻ってきて、魔導師バビディが起こした騒動に巻き込まれる。

 そして、魔人ブウ――ブウさんの復活を未然に阻止し、戦いは無事大団円を迎えた。

 

 その後、二人の為に開かれた宴会が終わった後、ネオンは最後の夜に自分の故郷へと悟飯さんを連れていき……三年前に死に別れた時には言えなかったことを伝え、思い残すことが無くなった彼女は満足してあの世に帰ったのだ。

 

 

 あの世に帰ったネオンは大界王星での修行をやめて、魂の転生を行うことを大界王様に報告した。

 そんな彼女の決意に、大界王様が粋な計らいを見せて彼女を天国へと送り飛ばした。ジェット機で。

 

 そして彼女は亡くなった家族全員と十一年ぶりに再会し、この世で自分が体験した思い出話を楽しそうに語った。

 

 ……不覚にも、ボクはその場面に泣いてしまった。

 

 全てを語り終えたネオンは、家族と一緒に閻魔様の元へ向かい、魂の転生を行った。 

 しかしその直後、ある大事件が発生する。それこそが、ボクが前に何度か聞いたことがある「ジャネンバ事件」の始まりだった。

 

 

 ジャネンバ事件ではブウさんが復活したり、ジャネンバの正体がベビーの怨念だったりとそれはもう悲惨な出来事の連続だった。

 

 しかし、最後は悟飯さんや生き返った悟空さん達の活躍により、事件は戦士達の勝利で幕を下ろした。

 

 

 

 ――それから数日後、地球に「ノエン」が生まれた。

 

 

 その魂はまさしく、かつて存在していたネオンの物と同じだったという――。

 

 

 

 

 

 ……それが、この巻物に記されていた歴史の大まかな内容だった。

 

 

「ボクの誕生秘話なんか聞いてないよトランクスさぁん!」

「す、すみません! 俺もその巻物は初めて見ました……」

「何だよこれ……! 何だよこれぇ……」

 

 少し、取り乱してしまったけどこんなボクのことを責めないでほしい。

 いやだって、まさか。本当に、まさかだよ。

 

 

 ――他人の気がしないと思っていた女の子は、前世の自分でした。

 

 

 

 あの子達が生き残っているパラレルワールドを探していた筈が、思いも寄らない衝撃の新事実にたどり着いてしまった。そもそもこれ、あの子達が生き残っている世界じゃないし……話が違うじゃないかトランクスさん!

 

 それどころかこの巻物、気のせいじゃなければ――

 

「……ボク達の世界だよね、これ」

 

 ジャネンバの存在と言い、ボクの存在と言い……巻物に載っていたのは、まさしくボク達の世界の歴史だった。

 ジャネンバのこととかブウさんのこととかセルのこととかいっぱい話してくれたのに、ここに載っているネオンちゃんのことは誰もボクに教えてくれなかったのは、悟飯さん達がボクに気を遣ってくれたからなのかなぁ……。これを見てしまったのは、なんだか悪いことをした気分だった。

 

 

 ……自分の知らない自分の世界の歴史を見て、色々と思うことはある。それが自分の前世の話なら、尚更だ。それはなんかこう、どう表現したらいいかわからない感覚だった。

 

 ただ、結局死んでしまったとは言えネオンちゃんが最後に家族のところへ行けたこと。そして悟飯さんと出会い、気持ちを伝えて綺麗に別れることが出来たことは、悲劇的な終わりの中でも確かな救いだったのかもしれない。……本当のことは、あの子自身にしかわからないのだけど。

 

 だけど本当に、あの子は満足だったのかな?

 

 ネオンちゃんはいつの日かまた悟飯と出会うことを夢に見て、その魂でボクを産んだ。ボクにとって彼女は前世の自分に当たる存在だけど、言ってみればもう一人のお母さんとも言える立場だ。十四歳になったネオンちゃんの姿は、お母さんよりボクに似ていたし。

 

 あの子が転生の間際に何を見て、何を為すことをボクに望んでいたのか……それはわからないけど、何となく察することは出来る。だけど、ボクはノエンで、ネオンはネオンだ。ボクとあの子は魂が同じなだけで、全くの別人だ。

 だからボクの性格も、好みも、戦い方も戦闘力もボク自身の物だ。あの子の影響は、少しはあったのかもしれないけど。

 だからこれを見たからと言って、ボクは前世の自分に引き摺られて生きる気は無い。きっとネオンちゃんも、それで良いと思っていた筈だ。

 

 だけど……

 

「諦めんなよ、前世のボク……ボクだったらビーデルさんに渡さないぞ、絶対!」

 

 綺麗な逝き方だ。ボクも将来死ぬ時が来たら、ああいう感じで逝けたら幸せだと思う。

 だけど、いくらなんでも自分で決めて逝くには早すぎるんじゃないかって、ボクは思う。

 彼女の魂で生まれたボクが言うのもなんだけど、ネオンちゃんはまだまだ若い人間だった。もっと自由に、好き勝手に生きて良かった筈だ。それこそ地球にはドラゴンボールなんて素晴らしいものがあるんだから、リスクを背負ってでも生き返る方法はあったんだ。

 あの子の弟みたいに、あの子よりもずっと幼い頃に死んでしまった不幸な人間はたくさん居る。

 ……だけどボクには、あの子の不器用さがどうにもスッキリしない。

 

「ねえ、トランクスさん!」

「ハイッ!」

「このパラレルワールドからさらに分かれて、「ネオンちゃんが寿命までちゃんと生きた世界」とかないかな? 出来れば、悟飯さんとゴールしているパターンで」

「……パラレルに関係する書物は、この段にあります。ご自由にどうぞ」

「ありがとう」

 

 彼女は綺麗に別れた。

 彼女は心から満足して生まれ変わった。

 

 だけど、その終わり方が本当に最善の形だったとは――ボクには思えない。まあボクの勝手な解釈だけどね。

 もちろん、あの子がちゃんと自分で、心から望んだことだっていうのはわかっている。彼女の魂で生まれたボクに、彼女の選択に文句を言う資格も無いだろう。

 

 だけど……だけどだ。無数にあるパラレルワールドの中で、一つぐらいもっとあの子に都合の良い世界があってもいいんじゃないかと思うのだ。

 

 

 トランクスさんに教えてもらった棚の段を漁ってみると、何時間か掛けてボクは目当ての巻物をようやく見つけることが出来た。

 

 ……残念ながらナッパに東の都が焼き払われた歴史は変わっていなかったけれど、ネオンちゃんにとってはボク達の世界よりも都合の良いパラレルワールドが一つだけあったのだ。

 

 

 だけどそれ……ものすっごいハチャメチャな世界だった。

 

 

 まず、ベビーが良い奴だった。

 

 

 もう一度言おう。ベビーが良い奴だった。

 

 

 ……もうこの人、ベビー様って言っても良いんじゃないかってぐらいカッコ良い生き物だったのだ。

 

 その世界のベビーはツフル王の怨念に従いながらも地球人の女の子の為に涙を流せるような奴で。

 地球や宿主のネオンちゃんのことを守る為に、悟空さん達と協力してフリーザやそのお兄さん達と戦ったりしていて。

 復讐を望まないネオンちゃんの気持ちも、ちゃんと理解していて。

 ……だけどやっぱり、自分の存在意義を守る為には、サイヤ人のことを許しておけなくて。

 

 その世界のベビーは、自分の使命と感情の間で何度も葛藤していた優しい怪物だったのだ。

 

 ぶっちゃけると、そんな彼の姿には少し惚れちゃった。

 そのぐらい、その世界のベビーは良い奴だったのだ。多分この世界は、「もしもベビーが良い奴だったら」という無茶苦茶なイレギュラーから分岐した珍しいパラレルワールドなのだろう。

 

 さて、あんまり綺麗なベビーについて語りすぎると肝心なところが置いてけぼりになりそうだから、今はここまでにしておこう。

 

 しかしそんなパラレルワールドの歴史でも、ネオンちゃんと同化したベビーが復讐の為に悟飯さん達と戦う出来事は起こっていた。

 ただ、その戦いの結末は、ボク達の世界とは違うものだった。

 

 ネオンちゃんもベビーも、二人ともあの世に逝くことはなく――二人とも生きて、ツフルの怨念を断ち切るという形で幕を下ろしたのだ。

 

 そんなトゥルーエンドの決め手になったのは悟飯さん達の懸命な説得と、ベビーの心にある確かな「愛情」の存在だった。

 ツフル王の呪縛から解き放たれ、自分の意志で宿主と分離した彼は、ネオンちゃんと悟飯さんに向かってこう言った。

 

『お前達が俺に、人の心を教えてくれた。憎しみしか知らなかった俺に、「愛情」という感情を教えてくれた。この俺に、優しさを与えてくれた』

 

『ネオン、そして孫悟飯……俺は、お前たちのおかげで大切なものを得ることが出来た。……礼を言う』

 

『二度と会うことはないだろうが、最後に一度だけ言っておこう。……幸せになれよ、お前たち』

 

 

 今から話すのはそんな、ボク達の世界ではあり得なかった綺麗なベビーのおかげでたどり着いた、ご都合主義の(理想的な)未来だ。

 その世界では17歳に成長したネオンがこの世に生き永らえ、愛する人々との日常を謳歌していた。

 一個人のプライベートは覗くなって時の界王神様には言われたけど、ボクはあえてその一幕を語ろう。

 

 ボクの前世に当たる女の子が、生きて「彼」と共に歩んだ歴史の一幕を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、ブラックコーヒーはここに置いておくね。

 

 

 






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