戦略級魔法師の日記   作:小狗丸

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九校戦編
七頁目


 §月※日

 

 魔法の研究、風紀委員の仕事、試験勉強とやることが多く、気がつけば二ヶ月以上日記をつけていないことを思い出して、久しぶりに日記をつけてみた。

 

 一学期の定期試験の結果だが丁度昨日に出て、学校内のネットワークで発表された。そしてその結果発表ではボクが実技試験と記述試験を合わせた総合成績一位に名前を飾っていた。

 

 よし、試験勉強を頑張った甲斐があった。これで九校戦の選抜メンバーに選ばれる確率が大きく上がったはずだ。

 

 そう思って喜んでいたら、今日の放課後に達也が職員室に呼び出された。

 

 それを聞いたボクは一体どうしたんだろうと深雪さんにレオと森崎君とエリカさん、そして美月さんとほのかさんと雫さんのいつものメンバーと一緒に職員室の前で達也を待つことにした。しかし職員室から出てきた達也はボク達の顔を見るなり「一体そこで何をしているんだ?」と聞いてきたのだ。

 

 全くなんて失礼な奴だ。皆、お前の心配をしているのだぞ?

 

 達也が職員室に呼び出された理由は、昨日発表された試験結果に関係しているそうだ。

 

 期末試験の結果は総合成績ではボクが一位だけど、理論のみの記述試験の結果だけを見るとボクは二位で一位は達也だった。しかも二位のボクより十点以上の差をつけて、だ。

 

 この成績を知った教師陣は「なぜこの記述試験の成績で実技試験の成績が悪いのか? もしかしたら実技試験では手を抜いていたのではないか?」と考え、その事について達也に聞いていたらしい。……まあ、その誤解はすぐに解けたそうだが。

 

 その話を聞いて森崎君とエリカさんが「達也が手を抜く理由なんてない」と言って怒っていたが、ボクには教師陣がそう思いたくなる気持ちが少し分かる気がした。

 

 魔法というのは実技ができなければ理論も充分に理解できない。感覚的に分からなければ理解が難しい概念が多数存在するのだ。

 

 いくら実技試験と記述試験が別物だとしても、教師達が達也の実技と記述の成績の差を不自然に見えたとしても不思議ではないだろう。

 

 だが、その話の後で達也が言った「魔法工学に力を入れている第四高校に転校を薦められた。もちろん断ったが」という話を聞いた時は、これは教師陣の判断ミスだとボクは思った。

 

 第四高校は確かに魔法工学や複雑な工程を必要とする魔法を重視しているが実技を疎かにしている訳じゃないし、万が一達也が第四高校に転校をしたら深雪さんも兄の後を追って第四高校に転校をするだろう。

 

 あり得ないと分かってはいるが、友人二人が転校なんてしなくて良かったとボクは思った。

 

 

 

 §月〒日

 

 放課後に風紀委員本部に顔を出すと渡辺先輩からボクと森崎君が九校戦の一年生の部、新人戦の選抜メンバーにまだ出場競技は決まっていないが選ばれたと教えてくれた。

 

 新人戦の選抜メンバーに風紀委員から二人も選ばれたことに渡辺先輩は嬉しそうにしていたが、ボクはそれ以上に内心で喜んでいた。

 

 九校戦の新人戦に出られる。

 

 それは同じく新人戦に出るであろうあの「一条家」の御曹子と、「爆裂」の魔法を使う魔法師と戦える機会を得たということ。

 

 気がつけばボクは渡辺先輩に「第三高校に入学した一条家の御曹子。彼が出る種目は分かりますか?」と聞いていた。

 

 それを聞いて渡辺先輩は意外そうな顔をした後、「そんなことを知ってどうするんだ?」と聞いてきたのでボクは正直に自分の気持ちを話した。

 

「九校戦で一条家の御曹子と戦ってみたい」

 

「ボクの『爆炎』の魔法と一条家の『爆裂』の魔法。どちらが上なのか試してみたい」

 

 渡辺先輩は目を大きく見開いて驚いた顔を見せたが、次の瞬間には大声で笑いだし、ひとしきり笑った後で「この国の魔法師の頂点、十師族に挑むか……。全く、司波といいお前といい、今年の一年生は面白いのが多い。分かった。一条家の御曹子がエントリーしそうな競技にお前を推薦しといてやろう」と言ってくれた。

 

 九校戦が楽しみだ。


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