戦略級魔法師の日記   作:小狗丸

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 ☆月◇日

 

 今日は久しぶりに日記をつけた。

 

 何しろこの一週間、風紀委員の活動にその報告書の作成、家に帰れば爆炎の魔法の強化策の研究と忙しく、ついつい日記をつけるのを忘れてしまったのだ。

 

 いや、正直な話、風紀委員の活動を甘く見ていた。報告書の作成とかを初めとする風紀委員の実務って、高校のレベルを軽く飛び越えてプロの会社のレベルって感じだった。

 

 しかもその実務をマトモにできるのがボクと達也だけというのが風紀委員の実情で、今では風紀委員の実務はボクと達也の二人だけで回していた。そりゃあ、忙しくて時間もなくなるよ。って言うか、今まで風紀委員ってどうやって実務を回していたんだろう?

 

 それにしてもこの一週間は本当に大変だった。毎日十件以上の部員同士の魔法を使った乱闘が起こり、ボクと達也と森崎君でそれを摘発するという日々が続いたのだ。そのせいで今ではボク達の名前は「新入生の風紀委員トリオ」として学園中に知れ渡っている。

 

 あの、最初の風紀委員の活動日に仲直りしてからボクと達也と森崎君は一緒に風紀委員の仕事をしていた。

 

 魔法を使った乱闘が起これば、まずボクがグラム・デモリッションで魔法をかき消し、

 

 次に達也が魔法の起動式を読み取って、起こした騒ぎに相応しい判断を下し、

 

 最後に達也の判断に逆らおうとしたり、逃げ出そうとしたりする部員を森崎君のクイックドロウで放たれた魔法で取り抑える。

 

 以上のパターンが思い付きにしては予想以上に効果を出して、この一週間で乱闘を起こした部員を一番多く摘発したのはボク達三人であった。

 

 とにかく新入部員勧誘期間も今日で終わりなのだから、今日くらいはゆっくりと休ませてもらおう。

 

 

 

 ☆月◆日

 

 達也と深雪さんが七草先輩達と昼食をとるために生徒会室に行ったのでボク達はボク、レオ、森崎君、エリカ、美月さんのいつものメンバーで食堂で昼食をとることにした。

 

 食事が終ればその後は普通に仲間内で会話を楽しむ流れになるのだが、ボク達のメンバーは五人中三人(レオ、森崎君、エリカ)が完全な武闘派であるため、会話の内容は自然と戦闘に関するものに。

 

 そしてその会話の中でエリカが森崎君の戦い方にダメ出しをした。

 

 エリカが言うには森崎君のクイックドロウは魔法の発動スピードこそは驚異だけど、狙いがバレバレでちょっと動きが速い相手ならすぐに逃げられるか発動を邪魔されるとのこと。

 

 そんなことができるのはこの学園ではエリカを初めとする数名だけだとボクは思うのだが、そんなボクの考えをよそにエリカは森崎君に、相手に自分の狙いを悟らせない工夫が必要だとアドバイスをする。そのアドバイスに森崎君は一つあてがあると答える。

 

 ドロウレス。

 

 本来は特化型CADに任せている魔法発動時に行う攻撃対象の位置計算を自分で行い、特化型CADを単なる魔法発動のスイッチにすることで、相手に自分の狙いを悟らせずにクイックドロウを上回る速度で魔法を発動させる高度なデバイス操作技術。

 

 まだ一度も成功していないらしいが、森崎君はそのドロウレスを何とか修得しようと現在特訓中なのだとか。是非とも頑張ってほしいと思う。


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