新人戦モノリス・コードの予選一試合目が終わってからし二時間後。予選一試合目で二高に勝利した一光達、一高は七高が相手の予選二試合目でも危なげなく勝利して、今は予選三試合目を行っていた。
予選三試合目の相手は六高で、試合会場は草原ステージ。
見渡す限り障害物が一つもない草原で、一光達は自陣のモノリスの前で話をしていた。
「……前の二試合と同じで俺が守り、お前達が攻撃でいいんだな?」
「……」
「ああ、それでいい」
竜玄が確認をとると一光が無言で頷き、森崎が短く答える。
ヴヴーーーーー!
「試合開始だね」
「よし。行くぞ、一光。石金も守りは頼んだぞ」
「分かっている。さっさと行ってこい」
試合会場に開始の合図であるサイレンが鳴り響き、攻撃役の一光と森崎が七高のモノリスに向かって走り出す。
一光と森崎が前を見ると六高の選手達もこちらに向かって走ってきていた。
こちらに向かってきている六高の選手は三人。どうやら三人で一気に一光と森崎を倒し、その後で竜玄を倒す短期決戦が狙いらしい。
「向こうは三人か……。一光、ここは僕が先に行く。お前は少し離れていてくれ」
「一人で大丈夫?」
「ああ。僕には達也が考えて、お前も用意に手伝ってくれた秘策があるからな」
走りながら一光が森崎に訊ねると、森崎はこれから思いついた悪戯を試そうとする子供のような表情で答えて走る速度を上げていった。そうして六高の選手達との距離がつまってくると、森崎は腰にあるホルスターから拳銃の形をした特化型CADを引き抜いた。
「達也、一光、早速使わせてもらうぞ!」
森崎はそう言うと足を止めて拳銃の形をした特化型CADの引き金を引いて魔法を発動させた。その瞬間、森崎の周囲にあるエイドスが魔法の影響を受けて空気が揺らいだ。
『……!』
森崎が何かの魔法を発動させたのを見て六高の選手達は一度動きを止めるが、すぐにアイコンタクトをとって彼を取り囲もうとする。だが……、
ババァン!
『………!?』
六高の選手達は森崎を取り囲もうと動き出そうとしたのと同時に強い衝撃を受けて吹き飛ばされてしまう。
そう、まるで「空中に仕掛けられた機雷の爆発に巻き込まれた」ように……。
(ぶっつけ本番だったけど上手く使えたみたいだね)
六高の選手達が吹き飛ばされた姿を見て一光は内心で安堵の息を吐いた。
森崎が今使ったのは新人戦女子スピード・シューティングで雫が使った魔法「能動空中機雷」の応用であった。
本来の能動空中機雷は空中に九つの起点を設定してそこから振動系魔法を発動させるのというものだが、森崎が使ったのはこの魔法を開発した達也が使用者の周囲に八つの起点を設定して振動を系魔法を発動させるようにとしたものである。
拳銃の形をした特化型CADの引き金を引くことで周囲に起点を設定し、拳銃でいう激鉄がある部分に設けられている四つのボタンを操作することで振動系魔法を発動させるこの応用版能動空中機雷は、素早いCAD操作を得意とする森崎とは非常に相性が良かったようだ。それはたった一人で自分を取り囲もうとした三人の六高の選手達を倒した森崎を見れば疑う余地はないだろう。
「残念だったな。僕の不意を突きたかったら見えないところから狙撃でもしてくるんだな」
森崎が地面に倒れて気絶している六高の選手達に向けてそう言うと、試合会場に試合終了を告げるサイレンが鳴り響いた。
試合開始から終了までの時間は一分四十二秒。これは九校戦始まって以来のタイムであった。