戦略級魔法師の日記   作:小狗丸

14 / 21
十二頁目

 §月∋日

 

 今日の朝、達也に「昨日、武装をした人間が数名、このホテルに侵入しようとしていた」と非常に物騒な報告をされた。

 

 朝一番から心臓に悪いニュースをありがとう。お陰で目が完全に覚めたよ。

 

 話を詳しく聞くと、何でも深夜まで先輩達の競技用CADの調整をしていた(ボクは昨日、森崎君と石金君とモノリス・コードの打ち合わせをしていていなかった)達也は作業が一段落ついてホテルに戻ろうとした時に偶然、銃などで武装した数名の不審者を発見して、丁度その場に居合わせた幹比古君と一緒に取り抑えたのだそうだ。

 

 取り抑えた不審者達はその後に現れた風間少佐に引き渡したそうで、ボクと達也は今日の午後にホテルに来ている一○一旅団の面々の所に行く予定なので、その時に分かったことを教えてくれるらしい。

 

 ……なんと言うか、この時点で嫌な予感がするのだが。

 

 そして九校戦一日目、午前中の競技、七草先輩が参加している女子スピード・シューティングと男子スピード・シューティングの予選が終わり、ボクと達也が指定されたホテルの一室に行くとそこには一○一旅団の面々が集まっていた。そこで風間少佐が、昨夜達也が捕まえた不審者達が香港系犯罪シンジケート「無頭龍」の構成員であったことをボクと達也に教えてくれて、大会中は注意するようにと忠告してきた。

 

 嫌な予感が的中が瞬間だった。

 

 無頭龍の話が終わると次はボクと達也が九校戦に参加した話となり、その時に真田大尉がボクが大会に参加したことに、正確には「爆炎」の魔法を大勢の人の前で使うことに渋い顔をしていた。

 

 まあ確かにボクの爆炎の魔法は全力で放つと戦略級魔法「フレイム・オア・ヴェノム」になるので、あまり人前で使って情報を公開するべきではないとボクも思うのだが、今回ばかりは譲ることはできなかった。その事を伝えたらボクの事情を知っている一○一旅団の面々も納得してくれた。

 

 午後の競技は男女スピード・シューティングの準決勝戦と決勝戦、男女バトル・ボードの予選。

 

 女子スピード・シューティングは七草先輩が優勝をして、女子バトル・ボードの予選は渡辺先輩が好成績を出して予選を突破したのだった。

 

 

 

 §月⊆日

 

 九校戦二日目の競技は男女クラウド・ボールの予選から決勝、そして男女アイス・ピラーズ・ブレイクの予選だ。

 

 女子クラウド・ボールでは七草先輩が優勝をして、女子アイス・ピラーズ・ブレイクでは千代田先輩が好成績を出して予選を突破したが、男子のクラウド・ボールとアイス・ピラーズ・ブレイクはいい成績は出なかった。

 

 でも昨日風間少佐から聞いた無頭龍の妨害もなかったようだし、この様子だと何事もなく九校戦を終えることができるかもしれないな。

 

 

 

 §月⊇日

 

 ……今日は最悪の気分だ。

 

 昨日、「この様子だと何事もなく九校戦を終えることができるかもしれない」なんて気楽なことを思っていた自分を爆炎の魔法で吹き飛ばしてしまいたいくらいだ。

 

 今日の競技は男女バトル・ボードの決勝リーグと男女アイス・ピラーズ・ブレイクの予選。

 

 この渡辺先輩が出場する女子バトル・ボードでその「事故」は起こった。

 

 事故が起こったのはレース終盤のコーナー。先頭にいた渡辺先輩がコーナーを曲がろうとしたところで、すぐ後ろにいた七高の選手も減速して曲がろうとしたのだがここで減速どころか逆に加速をしてしまい、渡辺先輩を巻き込んでコーナー角に激突をしてしまったのだ。

 

 幸い渡辺先輩も七高の選手も命に別状はなかったが、それでも渡辺先輩は全治一週間の怪我を負ってバトル・ボードの他にも参加する予定だったミラージ・バットを棄権することになってしまった。

 

 ほとんどの人間がこれを単なる事故と見ていたが、ボク達はこれが人為的に起こされた「妨害」であると知っていた。

 

 競技の後で達也が調べてみると、七高の選手のCADに何らかの細工が施されている上に、渡辺先輩がいた周辺の水面に精霊魔法らしき魔法が起こっていたのが分かった。

 

 これからの競技にも似たような妨害がされるかもしれないが、大会に報告しようにも証拠がない上に誰が妨害をしたのかも分からないというのが現状だ。

 

 ……今日は本当に最悪な一日だ。誰がやったのかは知らないが、それでも妨害をした奴が分かればソイツには必ず後悔をさせてやる。

 

 

 

 §月⊂日

 

 九校戦四日目。今日からいよいよボク達一年生のみが参加をする新人戦が始まる。

 

 今日の競技は男女スピード・シューティングの予選から決勝と、男女バトル・ボードの予選だ。

 

 男子スピード・シューティングには森崎君、

 

 女子スピード・シューティングには雫さん、

 

 女子バトル・ボードにはほのかさんが出場をする。

 

 結果だけを言うと、森崎君と雫さんは共に優勝、ほのかさんは好成績を出して予選突破となった。

 

 森崎君は達也が用意した標準補正がついた特化型と同じくらいの処理速度を持つ汎用型CADを使い、更には「ドロウレス」を使用して他の選手を寄せ付けない圧倒的な射撃スピードで優勝。

 

 雫さんは森崎君と同じ標準補正がついた汎用型CADと、達也が開発した新魔法「能動空中機雷」を披露して観客全員の度肝を抜いて優勝。

 

 ほのかさんはスタート直後に水面を光波振動系魔法で輝かせて他の選手の視界を奪い、その隙に先行するという達也考案の作戦で二位以下と大差をつけて予選を一位で突破。

 

 三人の大活躍には達也のサポート(ボクも少しは手伝ったけど)があり、改めて達也の凄さを思い知った。ボクもこれでもCADの調整には少し自信があったので少し悔しい。

 

 それにしても今日は妨害がなくて本当によかった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。