ステルス・ブレット   作:トーマフ・イーシャ

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第一次ケース争奪戦

八幡side

 

今、俺たちはドクターヘリに乗っている。留美たちが『呪われた子供たち』であることが小学校で暴露され、里見とともに迎えにいった帰り、いつぞやの感染源ガストレアが見つかったので、社長が手配したドクターヘリに乗って討伐に行くように指示された。

里見と延珠はストレッチャー部分のほうに乗せた。最初は助手席に乗ろうとしたが、お前以外誰が延珠のケアをするんだと蹴り飛ばしてストレッチャー部分に乗せた。ぼっちの俺があの状態の延珠と話せるわけがないだろ。そして留美もストレッチャー部分に乗せようとしたが、危ういものを感じたので、助手席に座る俺の膝の上に乗せることにした。

 

授業中に留美が通う学校から連絡があり、小学校に留美を迎えにいったあの時、周囲の人間が留美と延珠に罵詈荘厳を投げかける中、留美は笑っていた。あの自虐的ですべてをあきらめて吹っ切れたような笑顔を俺は知っている。ぼっちがぼっちであることに納得し、諦めて、受け入れた瞬間。決定的に自分と他者との間に隔たりがあることを認識し、誰かとつながる事をやめた瞬間。かつての俺だ。

 

留美もぼっちであることは知っている。過去にあったことも知っている。そしてぼっちが間違っていないことも知っている。だが、今の延珠と合わせるべきではないだろう。延珠は、まだそれを知らない。それを知るべきではない。ぼっちは間違っていないが、ぼっちでないことも間違っていないのだから。

 

留美は俺の膝の中で、嬉しそうにしている。顔には出ていないが、触覚がピコピコと揺れている。

 

「嬉しそうだな」

 

「うん、だってようやく解放された。これで延珠と、八幡と一緒にいられる」

 

やはり今の延珠と留美を合わせなくて正解だった。ヘリのプロペラ音が大きいうえに小声で話したため後ろの2人には聞こえていないだろうが、今の会話を延珠が聞いていたらどうなっていたことやら。

 

「あれはなんでしょうか?」

 

横の操縦士が話しかけてくる。窓の外を見ると、ヘリの下に滑空するクモの姿。

 

「見ての通りガストレアだ。あんなデカいクモがほかにいるか。とりあえず高度を下げながらスピードを合わせて「おい、延珠!」なんだおいどうした里見!?」

 

「延珠が飛び降りた!俺も行く。高度を下げてくれ!」

 

窓を見ると感染源ガストレアが地上へ落ちていく。その上でツインテールをなびかせている延珠の姿。なんて無茶しやがる。

 

里見が下りたのち、俺と留美も荷物を用意してヘリから降下する。遅れて里見達と合流しようとすると、蛭子影胤と里見が、延珠と蛭子小比奈が戦闘していた。数日前に一度会っているが、今出て行っても友好的に事をすすめることは出来ないだろう。

 

慌ててマリオネット・インジェクションを発動。体が透ける。敵はまだ自分たちの存在には気がついていない。俺も留美も基本的に相対しての戦闘は不得手とする。むしろ自身のテリトリーに相手を引きずりこむことで最大限の戦闘が行えるタイプ。留美に周囲の木々を利用してトラップを作らせる。指示すると留美は背負っていたバッグから各種道具を取り出して制作にかかる。俺は気付かれないように転がっていた回収目標のジュラルミンケースを回収する。中に何が入っているかは知らんが、見ないほうがいいだろう。胸ポケットを探り、細工を施す。

 

「嫌だ!」

 

延珠の叫びが聞こえる。里見が延珠の足元に射撃。延珠を逃がす算段か。里見は小比奈に腹を貫かれズタボロになりながらふらふらと後退。増水した川のほとりまで追いつめられる。

 

「留美、トラップの進捗は!?」

 

「うん、うん……出来た。でかいのが一個。」

 

「十分だ」

 

ジュラルミンケースの細工の最終調整を完了し、留美に渡す。さあ、俺たちの出番だ。

 

 

 

 

小比奈side

 

「弱いくせに!弱いくせに!弱いくせに!」

 

延珠とたのしく斬り合っていたのに、邪魔された。弱いくせに、生意気。なんにも出来ないくせに、私のたのしみを奪わないで。

 

「おやすみ」

 

パパがそう言って弱いのを撃った。川へと落ちていく弱いの。パパはもう興味がなくなったように、テッポウをしまってケースを探しに行く。パパに気に掛けられるなんて、生意気。パパは私だけ見てればいいんだから。

 

川をのぞき込む。いつもより大量の水が流れている。どぼんって音がして、弱いのの体が沈む。と、もう一つどぼんって音がして弱いのが落ちたところに水しぶきが上がる。でもまわりにはなにも無いのに、なにが落ちたんだろう。何かが落ちたそこには、不自然に水がくぼんでいた。まあいいや。

 

パパがケースを探しているけど、見つからない。そう遠くにはいってないハズなんだけど。きょろきょろしてると、ずいぶん遠くにケースがあった。どうしてあんなところにあるんだろう。と、ケースを持って誰かが走っていく。あの後ろ姿は覚えがある。この前、延珠とたのしく斬り会っていたら横から邪魔してきたヤツ。ザコのくせに。生意気。だからあなたを斬ってあげる。

 

走って追いかけようとして森の中へ入って、逃げる虫けらを追いかけようとして、

 

 

周りの木の根元が爆発して、大きな木が倒れてくる。

 

 

 

トラップ!?びっくりしてると、パパがバリアで守ってくれた。パパはバリアを風船みたいに大きくして、倒れ掛かっていた木を跳ね飛ばす。木は爆発したときに倒れてきた方向とは反対側へと倒れていく。やっぱりパパはかっこいい。

 

と、嫌な感じ。バラニウムのじわっとした感じがする。この感じ、前に聖天使とかいうのと会って、バリアで弾を跳ね返したあとに感じた、あの感じ。かすかにだけど、感じる。

 

小太刀を抜いてジャンプし、上に向かって小太刀を振り回す。ぷつって言って何かを斬った手ごたえ。

 

「ふむ……これはワイヤーかな?なるほど、木々の間にワイヤーを縛っておき、木が倒れることでワイヤーが私たちを切断しようと上から迫ってくるわけだ。木そのものとワイヤーによる二段階トラップとは、なかなかおもしろい」

 

よくわかんなかったけど、今度の敵はちょっとは楽しめるかな?私は、今も逃げている好敵手になるかもしれないヤツを睨みつける。小太刀を構えて、パパと一緒に、あれを斬る。

 

地面に着地して、走りだそうとして、足に力を込める。

 

肩に衝撃。見ると、撃たれている。再生されない。間違いなくバラニウム。痛い。痛い。周りにまたバラニウムのじわって感じ。小太刀を振る。ぷつって音。髪の毛に何かが触れる。髪の毛が切れて体にまとわりつくのが分かる。まだ肩が痛い。髪の毛がまとわりついてうっとおしい。イラつく。気持ち悪い。楽しい。楽しい。楽しい。……

 

「小比奈、私はケースを追う。小比奈は周りをうろちょろするゴースト君を殺していいよ」

 

パパの許可。嬉しい。オバケを斬るなんて初めて。わくわくする。オバケは、私を楽しませてくれる?

 

パパは走ってケースの子を追う。私は小太刀を構える。空中にテッポウが浮いてる。小太刀がきぃん!って鳴る。撃たれた。何にも見えないし、何にも聞こえないのに、テッポウから弾が飛び出している。今度はあのじわってした感じ。かすかに、光る線のようなものが見えた気がした。小太刀を振る。ぷちぷち斬れていく。

 

「ッ!」

 

頬っぺたをなにかがかすめる。たらりと血が垂れてくる。傷口がふさがらない。きっとあのわいやーとかいうやつ。楽しい。なにも無いところから筒みたいなのが出てきて浮いてる。全力の速度で筒があるところを斬りかかる。爆発。私は吹き飛ばされて木に体を打ち付ける。バラニウムを使っているのか、体中に出来た傷口がふさがらない。でもこんなのかすり傷。

 

「ぐうッ!」

 

誰の姿も見えないのに、うめき声。小太刀でけむりを振り払ってみると、空間にノイズみたいなのが走ってる。ノイズができてるところから血が出ている。ノイズだけ見てると近いのか遠いのか分からない。けど、血が落ちてる場所を見ると、すぐ目の前。あの爆発にまきこまれた?ノイズを斬る。血が噴き出す。だんだんノイズが大きくなって、ノイズのなかから人間が出てきた。あはっ♪見つけた。

 

ユーレイ人間は、ノイズを出しながらよろめき、木によりかかって動かなくなる。そしてノイズを出さなくなった。死んじゃった?ユーレイ人間の左肩に小太刀を突き刺す。

 

「があああぁっ!!」

 

なんだ、生きてた。ちゃんと刺した実感もあった。ユーレイじゃないじゃん。

ユーレイもどきは右手でテッポウを構えて撃つ。このテッポウ、音も火も出ないから苦手。まあ、見えていればなんてことないけど。

右肩も小太刀で刺す。

 

動かなくなったユーレイもどきから小太刀を抜いて、私は笑う。けっこう面白かったかな。延珠と戦えなかったのは残念だけど、これはこれで楽しかったかな?今度は、ホンモノのユーレイになって来てね。ちゃんと斬ってあげるから。

 

これでもうおわり。バイバイ。

 

「なあ、お前、幸せか?」

 

ユーレイもどきが喋ってきた。面白くない。このまま気持ちよく斬ってあげようとしてるのに。

前にも私に斬られそうになった人間が、間違っているとか人を殺してはダメとか言い出したことがあった。つまらない。ザコはザコらしくすんなり死ねばいいのに。往生際が悪いよ。

まあ、このユーレイもどきは楽しませてくれたし、ちょっとくらい、いいかな。

 

「うん、幸せ。斬り合うのは、楽しい。ホントは延珠と斬り合いたかったけど」

 

「そうか。お前は、お前のパパが、好きか?」

 

「うん、好き。大好き」

 

「そうか。俺も、留美が、好きだ」

 

「そう」

 

留美っていうと、あの横から入ってきたザコか。もうパパに殺されてると思うよ?

 

「なあ、お前は、パパに怒られるのは?パパが悲しむのは、嫌か?」

 

なんかもうつまんない。さっさと殺しちゃおうか。

 

「それは、嫌かな」

 

「そうか、じゃあ、俺は殺せないな。俺を殺したら、お前のパパはきっと悲しむぞ。怒るぞ」

 

命乞いのつもり?でもパパを使ったのは許さない。

 

「……あなた、バカなの?パパが殺していいって言ったんだよ?殺していいに決まってるでしょ」

 

「なあ、どうしてお前のパパはここに来たんだ?お前のパパの、本当の目的はなんだった?」

 

「……ケースを持って帰ること」

 

「正解。俺を殺すことじゃない」

 

だから?目的が何であれ、弱い人間を殺してもなんの問題も無いじゃない。

 

「俺を殺したら、ケースは爆発するようになっている」

 

「……そんなことここで言って、信じると思うの?死にたくないから、そんなことを言ってるんでしょ?」

 

さっきまで楽しかったのに、なんか台無し。つまんない。最後まで、楽しませてよ。それが出来ないなら、早く死んじゃえよ。

 

 

 

「――と、言ってますが、親御さんはどうお考えですか?」

 

え?

 

 

 

 

 

留美side

 

 

木々の間を抜けて、走る。左手には、ジュラルミンケース。右手にはM92F。そして後ろには、仮面の男、蛭子影胤。木の根を踏んで、倒れた巨木を飛び越え、木と木の間を三角飛びで渡りながら、高速で森を駆け抜ける。

 

八幡曰く、『蛭子影胤・蛭子小比奈。やっかいなのはプロモーターの蛭子影胤。ヤツは斥力フィールドというバリアのようなものを展開する。そのフィールドを破ることは俺にも留美にも間違いなく無理だ。ヤツがあれを展開したら、俺達にはなにも出来ない。

逆に蛭子小比奈は斥力フィールドを発生させることは出来ない。弾を撃ってもはじかれるが、当然捌き切れなくなれば被弾し、殺すことが出来る。

しかし、蛭子親子が一緒なら話は別だ。奴の斥力フィールドは力を発生させる対象を任意に指定できる。つまり小比奈を斥力フィールドで守りつつ、斥力フィールド内からフィールド外の人間を銃で撃つことが出来る。

二人を分断する。小比奈ひとりなら殺せる可能性がわずかにでも発生するが、影胤がいるとほぼ無理だ。なんせ、斥力フィールドを展開さえしていれば俺たちは何も出来ないからな。

 

俺が小比奈の相手をする。留美はケースをちらつかせて、影胤を引き離しすぎないように逃げ続けろ』とのこと。

 

近接戦は無敵と自負する小比奈に挑むのは無謀だと思うが、影胤から逃げ続けらるのはゴキブリ特有の素早さを持つ私しかいないそう。

 

確かに、影胤は人間。『呪われた子供たち』である私に追いつけるとは思えない。そう思っていた。

 

私のトラップを無効化され、八幡が小比奈を分断した後、影胤がすごい勢いでこっちへ向かってきた。一歩一歩の歩幅が数メートルある。私は全力で逃げた。きっと、影胤は足の裏から斥力フィールドを出して地面を押すことで幅跳びみたいなステップを実現しているのだと思う。

 

全力で逃げないと殺される。

 

でも、今日の私はすごく調子がよかった。蛭子影胤が禍々しい銃を構える。構えたことにより空気が動く。その振動を触覚が受信する。いつもならぼやけたシルエット程度にしか感じないけど、今日ははっきりと分かる。目で見なくてもどこにいるかはっきりと分かる。向けられた銃口がどこを向いているかが分かる。正確な射撃をひらひらとかわす。

 

今度は斥力フィールドを無数の鎌みたいにして飛ばしてくる。これも分かる。横に一歩ずれるだけで首を狙う鎌を回避する。ジャンプや木を使った三角飛びで回避。後ろを見ないでM92Fで射撃。射撃音もないので、撃ったことに気付かず、腕をかすめる。鎌を飛ばすのをやめて斥力フィールドを周囲に展開。案外ビビりなのかな?

 

しかし上手く言っていたのは最初だけだった。影胤は私の進行方向にある木々をまとめて鎌でなぎ倒す。進路をふさぐようにして目の前に倒れた木々を思わずジャンプで飛び越えてしまう。空中では身動きが取れず、周囲に立っている木がないので三角飛びも出来ない。

 

後ろから撃たれる。足に着弾。そのままバランスを崩して落ちる。倒れた木々は、鋭い枝が四方八方に伸びていて、まるで剣山。とっさにケースを下に向ける。ケースが枝を折りながら着地。枝自体が体を貫くことは無かったが、大量の枝がほほをかすめ、折れた枝が腕に突き刺さり、足を木の幹に打ち付けてひねった。足に被弾したのはバラニウム弾なんだろう。再生しない。

 

「さあ、鬼ごっこは終わりだ。きみを殺してケースをいただくとしよう。良い夢を」

 

ああ、これで終わり。でも楽しかったかな?いろいろあったけど、八幡がいて、本当に楽しかった。もうお別れ。

 

「ねぇ、ケースを手に入れたら、八幡にはもう手を出さないでほしいな」

 

それだけ。八幡は死んで欲しくない。それだけが今の私の望み。これ以上は、必要ない。

 

「君のプロモーターか。それは彼次第だね。保証しかねるかな」

 

そうだよね。敵同士の関係でお願いなんて、虫が良すぎるよね。やっぱり、私がここで影胤を殺さないといけないみたい。

 

私の背中のバッグには、プラスチック爆弾が入っている。トラップで木を倒すために使用したものののこりだ。これを影胤が斥力フィールドを展開していない状態で足元で爆発させればきっと、殺せる。

 

まだ私は死ねない。この男を殺すまでは、死なない。

 

『――なあ、お前、幸せか?』

 

急に聞こえた八幡の声に驚いて、あたりを見回す。どこにもいない。

 

『うん、幸せ。斬り合うのは、楽しい。ホントは延珠と斬り合いたかったけど』

 

こんどは小比奈の声。そこでようやく声がジュラルミンケースから出ていることに気が付く。私がトラップを仕掛けている間に、ケースに細工していた。このために。

 

『そうか。お前は、お前のパパが、好きか?』

 

八幡の声は小さく、まるで死にそうな蛍の光のようだ。

 

『うん、好き。大好き』

 

影胤もじっと聞いてる。

 

『そうか。俺も、留美が、好きだ』

 

嬉しかった。けどこんなところでいって欲しくなかった。死亡フラグが立ちそう。

 

『そう』

 

そっけない声。でも無感情に発せられたようには聞こえない。

影胤も少し戸惑っているように見える。

だけどそのあとの会話を聞いて、態度が一変する。もしかして、八幡は取引や交渉が目的でこんなことを――

 

 

 

『――と、言ってますが、親御さんはどうお考えですか?』

 

 

 

「比企谷八幡君、だったか。どういうつもりだい?」

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

皮膚に血が付着した状態ではマリオネット・インジェクションは十全に機能しない。M92Fの弾倉は空。バラニウム製破片手榴弾を至近距離で浴びて致命傷は回避したものの全身を損傷。肩を刺突されたためか腕が動かない。戦闘続行は難しいだろう。

 

川に落ちた里見を救出し、その後蛭子小比奈とサシで戦った。油断や慢心なんてものはなかった。ましてや相手は近接戦闘のスペシャリストで、『呪われた子供たち』。セオリー通りなら小比奈には留美をあてがうべきだっただろう。

 

しかし、俺がケースを持っても、ケースは透過しないし、サイズが大きすぎて服の中に隠すことも出来ない。それならば、ケースを留美に託して、俺が戦闘するほうが適切だったと思う。

 

しかし、小比奈がワイヤーの磁場を感知出来ること。トラップのあとの射撃で外してしまい殺せなかったこと。これで俺の敗北はほぼ確定していただろう。

 

体はボロボロ。だが口は動く。思考も可能。だったら、まだ戦える。俺は無線機のスイッチを入れる。

 

『比企谷八幡君、だったか。どういうつもりだい?』

 

無線機から影胤の声が流れる。小比奈の顔に目に見えて動揺が走る。やはりファザコンのこいつをコントロール出来るのは蛭子影胤ただ一人だ。

 

『は、八幡!』

 

良かった。留美も無事だ。しかし声色からかなりの動揺と疲労がうかがえる。

 

「俺を殺せば、ケースは爆発する仕組みになっている。同様に留美も殺せば爆発する。留美とケースが一定距離離れても爆発するぞ。なんなら今ここで爆発させてやろうか?」

 

普通、死ぬ間際の人間がこんなことを言ってもはったりだと判断するだろう。しかし、あのときのトラップの存在がケースに爆弾を設置することが出来ることを証明し、何よりもここに影胤はおらず、交渉は通信機越し。交渉は時には電話越しのほうが通じやすいこともある。

 

『……それで、目的はなにかね?』

 

「パパっ!」

 

『娘よ、今は殺してはダメだ』

 

「パパに嫌われちゃったな」

 

「斬る」

 

『何度も言っているだろう愚かな娘よ、ダメだ』

 

「う、ううう~~」

 

『もう一度きこう。目的はなんだ?』

 

よし、交渉が始まった。これがここから俺たちが生き残る唯一の蜘蛛の糸。御釈迦様の期限を損ねないように慎重に綱渡り、いや綱のぼりといこうじゃないか。

 

 

 

「まずは、自己紹介でもするか?機械化兵士同士、いいオトモダチになれるかもな」

 


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