MASKED TAIL   作:響く黒雲

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後夜祭

~フィオーレ王国の何処か~

 

荒野に建つ岩の城、そのバルコニーに一人の男がカラスに話し掛ける

 

「カラスぅ~ お前は何故にそんなに美しい。」

 

答えが返ってくる訳でもないがその男、レイブンテイルマスターイワンは話し続ける

 

「あ? そりゃあ嫌われモンだからってよォ? よしよしぃ。」

 

イワンがカラスに触れるとカラスはたちまち紙に変わる

 

そしてイワンは背後にいる男たちに話し掛ける

 

「美しいものは儚い命だ、なァガジルちゃんにコウマちゃんよォ?」

 

その男たちはガジルとコウマだった

 

「ラクサスが滅竜魔導士だなんて聞いてなかったぞ。」

 

「最初に言ってりゃあ面倒な事にならずに済んだのによ~。」

 

すると何を思ったのかイワンは笑い出す

 

「ぶわはははははっ、あれは偽物、偽物ちゃんよォ。」

 

「偽物?」

 

「アイツァ小せェ頃から体が弱くてなァ、不憫に思えた俺はラクサスの体に魔水晶を埋め込んだ。」

 

「滅竜魔法が使える魔水晶だと!!?」

 

「めんずらしいだろォ? 奴は破門されここに来るだろう、丁度いいあの魔水晶は金になるって最近知ったんだョ、それも信じられねぇほどの金になァ。」

 

「おいおい、取り出す気なのか?」

 

「そんな事したらラクサスは……」

 

「ぶはははははっ!!!!!! 元々あのガキにはすぎた力よ、パパかスッキリ元の子に戻してあげちゃうのよォ。」

 

「今は金だ、お金ちゃんよォ、フェアリーテイルと戦争するだけの金がいるんだョ。」

 

イワンは凄みながら二人を睨む

 

「お前達はもう少し潜入を続けろォ、いいか? スパイだとバレてもこの場所だけは吐くんじゃねェぞ。」

 

「ギヒッ、そんなヘマはしねェよ。」

 

「あんたは髪の毛の心配でもしてろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ギルドフェアリーテイル~

 

フェアリーテイルではファンタジアの打ち上げをやっていた

正直いつもとあまり変わらないがギルドメンバーは文字通りお祭り騒ぎをしていた

 

そんなみんなをガジルとコウマは二階から見ていた

 

二人が立ち去ろうとすると

 

「お前達ファンタジアの打ち上げには参加せんのか?」

 

マカロフが話し掛けてきた

 

「これから行く所さ。」

 

「ガラじゃないんでね。」

 

「そうか。」

 

そう言うとマカロフはファンタジアの衣装を脱ぎ始める

 

「ふいー 収穫祭も無事終了か、明日からは街の修復も手伝わんとな、やれやれ。」

 

「マスター。」

 

ぼやくマカロフにガジルは一枚の紙を渡す

 

「マスターイワンの… あんたの息子の居場所をつきとめた。」

 

「よくやってくれた、すまんな… 危険な仕事をお前達に任せて。」

 

「俺たちが二重スパイだってのはまだバレてねえ、けどあのハゲ雷兄さんの魔水晶を狙ってる。」

 

「居場所さえわかればどうとでもなる、奴の好きにはさせん。」

 

マカロフは家族としてギルドマスターとして決意の籠った顔で言った

 

「さ~て 俺は相棒を探しにいきますかな、ガジルは?」

 

「俺もなんか食うか…」

 

そして二人も打ち上げに参加しにいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドの屋根の上にツバサはいた

 

ツバサは一人何をする訳でもなくただ月を眺めていた

 

「ああ… 本当に、いい月だ。 」

 

誰に聞かせる訳でもなく呟く

 

すると

 

「もうすぐ死んじゃう人みたいな事言わないでよ。」

 

背後からミラがやって来た

 

「でもさ… 本当にそう思わないか?ミラ。」

 

ミラはツバサの側に腰掛けるとドリンクの入ったジョッキを渡す

 

「そうね… 確かに綺麗な月ね、でもなんだか淋しいわ。」

 

「それはどうして?」

 

ジョッキを受け取りながらツバサは聞き返す

 

「だって… 星が一つもないわ。」

 

「ああ、確かにそうだね。」

 

そして二人して無言で月を眺める

しばらく二人の間には沈黙が生まれた

 

「…………」

 

「…………」

 

そこから三十分ぐらいたった頃だろうか、この沈黙を破る者がいた

 

「ツバサ…」

 

それはミラだった

 

「なんだい?」

 

「やっぱりおかしいわよ、言葉使いが昔みたいに戻ってるし。」

 

「そうかな?」

 

「そうよ。」

 

「……… もしかしたら死ぬのが恐いからかもしれない。」

 

「…………」

 

「僕は今まで沢山の仲間に囲まれてきた、でもそれがもう終わると思うと…ね。」

 

ミラはようやく気がついた、ツバサが死を恐れている事に

その恐れを自分が癒す事が出来ない事にも

 

そして自分がこれから言わんとする事が更にツバサを恐怖に陥れる事を

 

だがそれでも言わずには居られなかった

もうすぐ消えてしまう想い人に自分の気持ちを伝えずには居られなかった

 

「ねえツバサ、覚えてる? 私と初めて出会った日の事を。」

 

「忘れたくても忘れられないよ… なんせいきなり人殺し扱いされたり、悪魔扱いされたりしたんだから。」

 

「うん、それでツバサは私達の話を一番親身になって聞いてくれた、そして…」

 

「フェアリーテイルに誘った。」

 

「そう、私がギルドに来て中々馴染めなかった時もなにも言わないでずっと側に居てくれた。」

 

「僕が誘ったのに、ほっとく訳にはいかなかったしね、それに約束したから… 最後の希望になるって。」

 

「それから色んな事があったわ、ハッピーが生まれたり、エルザと喧嘩したり。」

 

「エルフマンが漢に目覚めたり、カナの酒癖が酷くなったり、ミラやエルザがS級魔導士になったり。」

 

「そして… リサーナが死んだ…」

 

「ショックで魔法が使えなくなった時も一緒に居てくれた。」

 

「いやだってあの時は僕が悪かったわけだし…」

 

「それを言うなら私だってツバサに酷い事いったわ。」

 

「「…………」」

 

そして二人共再び無言になってしまった

 

「は、話を戻すわね、それからツバサが魔法が使える事がわかって、ファントムと戦争になって、ナツ達が勝手にS級クエストに行っちゃって…… 気がついたらいつも私の側にはツバサがいたし、私もツバサの事ばかり考えてた。」

 

「うん、僕もだ、気づいたら何時だってミラの心配をしてた。」

 

「それでね… 私ずっと言いたい事があったの、でもこれを言えばツバサはもっと苦しむ事になる。」

 

「それでもいいよ、僕がまだこの世にいる内に言いたい事は言っておいた方がいい。」

 

「わかったわ… スゥーハァー。」

 

ミラは深呼吸をし、そして…

 

「私、ミラジェーン・ストラウスは、貴方の事が好きです!! 」

 

「………」

 

「貴方をずっと側で感じたい!! ずっと一緒に居てほしい!! ずっとみんなと笑っていてほしい!! ずっと私を愛してほしい!!!! ずっと… ずっと…」

 

今まで抑えていた気持ちが溢れたのかミラは泣き出してしまう

そんなミラをツバサは

 

「あっ…」

 

優しく抱き締めた

そしてミラの耳元で囁くように話す

 

「僕は…… 君を幸せにする事は出来ないよ?」

 

「うん、その分は私が幸せにするから。」

 

「僕は…… 人間じゃないよ?」

 

「ううん、貴方は人間よ。」

 

「僕は…… もうすぐ死んじゃうよ?」

 

「うん、わかってる…」

 

「僕は…… 君をずっと守ってあげられないよ?」

 

「うん…」

 

「こんな欠点だらけの僕でもいいの?」

 

「うん、それでもいいわ、だってこんなにも貴方の事を愛してるんだもの!!!!」

 

その言葉を聞いただけでもツバサは救われた気がした

そして…

 

「ありがとう、 僕も君の事を愛してます、こんな僕で良かったら、ずっと一緒に居てください。」

 

「うん、ずっと一緒よ♪ もう絶対離さないんだから!!!!」

ミラもツバサもお互いを強く抱き締めた

 

「ホント、どうしてこんな簡単な事が直ぐに言えなかったんだろう… もっと早く気づくべきだった、そうすれば… こんなに苦しまずに済んだのに…」

 

ツバサは涙を流した

自分は遅すぎたと悔やみながら

 

「大丈夫、まだ遅くはないわ、これから残りの時間を精一杯楽しめばいいんだから。」

 

そんなツバサをミラは慰めた

大丈夫、まだ遅くないと言って

 

腕を緩めて二人は見つめ合う

 

そして二人は自然と近づいていき…

 

二つの影は… 重なった




ツバサは死の恐怖で一時的に昔の口調に戻っています。
なのでしばらくは一人称が僕になりますのでよろしくお願いいたします。

そして!! ついに!! バトル・オブ・フェアリーテイル編終了じゃあ~!!!!

次回は番外編を書くかもしれません。

それでは!! 今後もMASKED TAILをよろしくお願いします!!!!

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