MASKED TAIL   作:響く黒雲

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あの時のように

バトル・オブ・フェアリーテイルの翌日、マグノリアの街はお祭ムード一色だった

 

そしてフェアリーテイルでは…

 

「ポーリュシカさんのおかげで一命はとりとめたそうだ。」

 

「安心してくれ、マスターは無事だ。」

 

倒れてしまったマカロフが回復の兆しを見せていた

 

その事を聞いたギルドメンバーは今までの遅れを取り戻すかのように騒ぎ始めた

 

そして医務室にはマカロフ、ツバサ、そしてラクサスがいた

 

「騒がしい奴等だ。」

 

「みんなじいちゃんが無事なのが嬉しいのさ。」

 

「まったく… 大したことないっちゅうに…」

 

そうぼやくとマカロフは視線を反らしているラクサスに問う

 

「さてラクサス、お前は… 自分が何をしたかわかっているのか。」

 

しかしそれでもラクサスは視線を合わせない

 

「ワシの目を見ろ。」

 

そう言われようやく視線を合わせる

 

「ギルドというのはな、仲間の集まる場所であり、仕事の仲介所であり、身寄りのねえガキにとっては家でもある、お前のものではない。」

 

「ギルドは一人一人の信頼と義によって形となり、そしてそれはいかなるものより強固で堅固な絆となってきた。」

 

「お前は義に反し仲間の命を脅かした、これは決して許される事ではない。」

 

「わかってる、俺は… このギルドをもっと強く… しようと…」

 

「まったく… 不器用な奴じゃの… もう少し肩の力を抜かんかい、そうすれば今まで見えなかったものが見えてくる、聞こえなかった言葉が聞こえてくる、人生はもっと楽しいぞ。」

 

「ワシはな… ツバサとお前の成長を見るのが生き甲斐だった、力などいらん、賢くなくてもいい… 」

 

「なにより元気である、それだけで十分だった。」

 

部屋に沈黙が走る

 

しばらくしてマカロフが口を開く

 

「ラクサス、お前を破門とする。」

 

それはラクサスがフェアリーテイルを辞めてしまうと言うことだった

 

「ああ…… 世話になったな。」

 

ラクサスは特に反論せずに部屋を出る

そしてドアに手を掛け

 

「じーじ、体には気をつけてな。」

 

そう言って出ていった

 

「出ていけ…」

 

「たく… 泣くくらいなら破門しなきゃいいのに。」

 

「うるさいわい!! お前にも言いたい事は山ほどあるんじゃぞ!! ツバサ!!!!」

 

「うげ!! まじかよ~」

 

フェアリーテイルは今日も平和であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、マグノリアではフェアリーテイル主催のファンタジアのパレードが行われていた

 

山車に乗ってギルドメンバー達が続々とやって来る

 

「ミスフェアリーテイルに出てた女の子達だっ!!」

 

「いいぞー!!」

 

「まさに妖精だぁ!!」

 

その様子をラクサスは離れた物陰から見ていた

 

するとマカロフが派手な格好でやって来る

 

「マスターだ!! マスターが出てきたぞ!!」

 

「何か妙にファンシーだ。」

 

「似合ってねえ!!」

 

「そのコミカルな動きやめてくれ。」

 

それを見てラクサスは自身の初めてのファンタジアを思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じーじ!! 今回は参加しないの!? ファンタジア。」

 

「お前の晴れ舞台じゃ、ツバサと一緒に客席で見させてもらうよ。」

 

「がんばれ♪ ラクサス兄ちゃん!!」

 

「じーじ達のトコ見つけられるかなぁ。」

 

「ワシの事などどうでもよいわ。」

 

「じゃあさ俺… パレードの最中こうやるから!!!!」

 

そう言うとラクサスは親指と人指し指を立てる

 

「何じゃそりゃ。」

 

「メッセージ!! じーじ達のトコ見つけられなくても、俺はいつもじーじ達を見てるって証。」

 

「ラクサス…」

 

「見ててな、じーじ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな幼き日の記憶を思い出し、ラクサスはもう一度マカロフを見て去る

 

その時

 

ラクサスがもう一度振り向くとそこには…

 

フェアリーテイルのメンバー全員が幼いラクサスが考えたサインを出していた

 

その様子を見てラクサスは涙を流す

 

「じーじ…」

 

「(例え姿が見えなくとも、例え遠くに離れていようと、ワシはいつでもお前を見てる、お前をずっと……見守っている)」

 

「ああ、ありがとな。」

 

ついにラクサスは街を去り、ファンタジアは盛大なフィナーレを迎えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラクサスが街の門まで来るとそこには…

 

「よっ。」

 

ツバサがいた

 

「ツバサ…」

 

「別れも言わずに行っちまうのかと思ったよ。」

 

「お前達に会うと… 別れが辛くなる。」

 

「そーゆー事が言えるようになっただけまだましか… そこまで送るよ。」

 

「ああ…」

 

二人は並んで歩き出す、まるで幼き日に戻ったかのように

 

「なぁ… ツバサ、一つ聞かせてくれ。」

 

「なんだよ。」

 

「なんであの時止めを刺さなかった?」

 

「…………」

 

時はカルディア大聖堂まで遡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウオオォォォォォォォッ!!!!!!』

 

ツバサは方天戟をラクサスの心臓目掛けて降り下ろし……

 

当たる寸前で止めた

 

「何故止める? 俺は… お前達を…」

 

ツバサは方天戟を投げ捨て、変身を解きながら言う

 

「今ので… お前の心の悪は砕けた、ここにいるのは、俺の兄貴のラクサスだ。」

 

「ふざけるな…!! 俺は!!」

 

「それでもまだやるなら好きにすればいいさ… 何度だってやってやる。」

 

そう言うとツバサはカルディア大聖堂を去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言っただろ? お前の心の悪は砕けたって、あれ以上やる理由がなかった。」

 

「そうか…」

 

しばらく進み分かれ道が来る

 

「ここまででいい。」

 

「そっか… ほれ。」

 

ツバサはラクサスに何かが入った袋を渡す

 

「これは。」

 

中に入っていたのは弁当だった

 

「しばらく食えないからな、腹が減ったら食ってくれ。」

 

「そうか…」

 

それを荷物に仕舞いラクサスは歩み出す

自分の生き方を探す為に

 

ツバサは遠退いていくラクサスの背に叫んだ

 

「じゃあな!!!! 元気でやれよ!!!! “兄ちゃん”!!!!」

 

その言葉にラクサスは目を見開くが直ぐに笑いかけ手を振る

 

「達者でな… ツバサ。」

 

血は繋がっていなくとも魂が繋がっている

 

二人の義兄弟は互いに進む道は違えど、その絆は途切れる事は永遠に無いであろう


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