MASKED TAIL   作:響く黒雲

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三人目の仮面

アカネビーチ近海… 晴れた星空の下でエルザは目覚めた

 

「ここは…!?」

 

「エルザーーーーーー!!!!」

 

すると浜から仲間達が走ってくる

 

「よかったぁ!!!! 無事だった!!!!」

 

「どんだけ心配したと思ってんだよ!!!!」

 

「姉さーーーーーーん!!!!」

 

「ど…… どうなってるんだ?生きているのか? 私は……」

 

いまいち状況が掴めないエルザ

それもそのはずである、なにせエルザは自分がエーテリオンと共に消滅したと思っていたからだ

 

ふとエルザは見上げてみる

するとそこには自分を運んでいるナツの姿が映っていた

 

「ナツ… お前が私を…? でも…… どうやっ………」

 

そこで力尽きたのかナツは膝から崩れ落ちる

 

「同じだ…」

 

「え?」

 

「俺達だって同じなんだ……」

 

「二度とこんな事するな…… グス… ズズ…」

 

「ナツ…」

 

「するな!!!!」

 

「うん。」

 

「ナツ… ありがとう。」

 

そしてエルザの右目からは失われた筈の涙が流れていた

 

ふとここでシモンが気づく

 

「? おい、ツバサとコウマはどうしたナツ?」

 

「そう言えば… ツバサさんとコウマ君、何処に行ったんでしょう?」

 

「おいナツ、何か知らねえのか?」

 

「…………」

 

しかしナツは黙りこくったまましゃべらない

 

「ねえ… なんとか言ってよ……」

 

「ナツぅ~……」

 

そこでようやくナツはしゃべった

 

「…… あいつらは…エーテリオンを制御して爆発させた後…そのまま…」

 

「そんな……」

 

「コウマ君は簡単には死にません!!!! 今までだって危険な依頼を切り抜けて来たんですから!!!!」

 

「そうよ!!!! ツバサだって強いし大丈夫… よ…」

 

しかし姿を現さない以上確証を持ってルーシィは言えなかった

 

「私のせいで…… ツバサァァァァァァァァ!!!!!!」

 

エルザの悲痛な叫びがビーチに響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハァッ…… ハァッ…… ハァッ……』

 

ビーチから少し離れた場所…… ここではプロトホッパーがボロボロになりながら逃げていた

 

そう…… ツバサ達の攻撃を受けても改造魔導士であるため耐えきる事が出来たのだ

 

『クソッ!!!! あのガキ共、次は必ず殺してやる!!!!』

 

「残念だけど、それは無理だね。」

 

すると背後から声を掛けられる

そこにいたのはツバサと瓜二つな容姿を持った黒髪の少年だった

 

『なんだお前は… あのガキにそっくりだな、家族か?ならちょうどいいてめえを見せしめにして……』

 

「憐れだね… 今自分が処刑対象になっているとも知らずに…」

 

『何だと!?』

 

「言葉のままだよ、あんたは不要って言う事だ。」

 

『ふざけるなァァァァ!!!! 俺は改造魔導士!!!! 選ばれた存在だぞ!? その俺が処刑等とでたらめを言うなァァァァ!!!!』

 

「何を言っても無駄か…… まっ、どのみち処刑するから理解していようとしていまいと関係ないんだけどね。」

 

そう言うと黒髪の少年は懐から銀を基調とした紫の拳銃、ブレイクガンナーを取り出し銃口に手を押し当てる

するとブレイクガンナーからヘヴィな待機音が流れ少年はブレイクガンナーを上に掲げトリガーを引く

 

「変身…」

 

 

《BREAK UP……!!》

 

 

すると少年の周囲にエネルギーで出来たタイヤが現れそれが鎧を少年に纏わせる

 

そしてすべてのパーツが少年に纏われた時そこに現れたのは死神…『魔進チェイサー』 だった

 

『な、何だその姿は!!!!』

 

『よく覚えておくといい…… これがあんたを殺す死神の姿だ!!』

 

 

《BREAK》

 

 

少年はブレイクガンナーをブレイクモードにするとプロトホッパーを殴り付けた

 

『フンッ!!!! ハァッ!!!! ダァァァァア!!!!』

 

『ガッ!! ギャッ!! ガハァァ!!』

 

『こんなもんか…… 成功例といっても所詮プロトタイプ… 量産型ホッパーや他の改造魔導士…… ましてやアイツから見れば圧倒的な差がある… 相手になる筈が無いか…』

 

『な、何を言って…』

 

『ああ… あんた選ばれた存在だって言ってたけどあんた以外にも改造魔導士は居るんだよ?代わりはいくらでもいる… だから安心して処刑されてくれ。』

 

『ウソだ… ウソだウソだウソだウソだウソだウウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだァァァァァァァァ!!!!!!!!』

 

衝撃的な事実を聞かされたプロトホッパーは狂ったかの様に魔力弾をばら蒔いた

 

『ハァ…… 無駄なのに…』

 

 

《GUN》

 

 

少年はブレイクガンナーをガンモードに変え自分に向かってくる魔力弾だけを正確に撃ち落とした

 

『なっ!! そんな…』

 

プロトホッパーの思考は底知れぬ恐怖に支配されもうなにも考える事は出来なかった

 

そんな彼の事を意に介さず少年はゆっくりとプロトホッパーに近づいていく

 

『ヒッ!!ヒィィィィィィ!!!!』

 

『もう飽きたから終わりにするよ。』

 

少年はブレイクガンナーに蜘蛛の意匠を持ったミニカー、スパイダーバイラルコアを装填する

 

 

《TUNE!! CHASER SPIDER!!》

 

 

そして右腕に蜘蛛の形をした武器が現れ装備され再びブレイクガンナーの銃口に手を押し当てる

 

 

《EXECUTION!!!! FULLBREAK!!!! SPIDER!!!!》

 

 

そして右腕の蜘蛛の鉤爪にエネルギーが収束していきその状態で“エクゼキューションスパイダー”を発動させプロトホッパーを切り裂いた

 

『ハァァァァァァァアア!!!!』

 

『ウギャアァァァァッ!!!!!! そんな…この俺が… 選ばれた存在の筈のこの俺が… グオォォォォォォォッ!!!!!!』

 

最後まで信じられないと言いながら断末魔の悲鳴を上げてプロトホッパーは爆発した

 

『フゥ……』

 

少年は一息着くと自身が乗ってきたバイク、ライドチェイサーに向かい変身を解く

そして通信用の魔水晶を取り出し何処かに通信を繋げた

 

『……… はい、こちらメルディ。』

 

「やぁメルディ、早速なんだけどマスターハデスかウルティアは居る?」

 

『マスターは今就寝中、ウルティアは今お風呂に……あっ! 出てきた、今替わるね。』

 

「うん、お願い。」

 

『…… 替わったわ、どうしたの?“ツルギ”』

 

「任務が終わったから結果報告。」

 

『そう…… それで?』

 

「プロトホッパーは始末したけどジェラールは見つからなかったよ… 多分爆発に巻き込まれて死んだんじゃないかな、例え生きていたとしてもあれだけエーテルナノ濃度の濃い爆発に巻き込まれたんだ、再起不能は必至だと思うよ。」

 

『そう…分かったわ、マスターには私から伝えておくわ、任務お疲れ様ツルギ。』

 

「うん、ありがとねウルティア。」

 

『ツルギ、早く帰ってきてね。』

 

「分かったよメルディ、なるべく早く帰るよ。」

 

そう言って通信を切った

 

「………」

 

そして黒髪の少年…… ツルギはライドチェイサーの後部を見る

するとそこには傷も深くグッタリしているが確実に生きているツバサとコウマがいた

 

「……まだ二人には死んで貰っちゃ困るよ……特に貴方は僕が倒すんだから…… ねえ?―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――“ツバサ兄さん”」

 

そう呟くとツルギはツバサとコウマを乗せたままライドチェイサーに乗り走り去った…

 

道中メルディに買うお土産の内容を考えながら…

 

 


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