3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第6話 3歳児は仕事を見つける

「レンジ。トレーナーズスクールに興味はないかい?」

 

「ん? ないよ。どうしたの、おばあちゃん。」

 

 

 トレーナズスクールといっても、ポケモンの生体や読み書き算術を教える程度の学校でしょ?

 そんなもん行ってる暇があったらお金を儲ける方法を考えるよ。

 

「そうかい………。将来のレンジの役に立つことばかり教えてくれるところよ。興味がないならいいわ」

 

「うん。読み書き算術とポケモンの知識ならカントーだけじゃなく国内ならジョウトとホウエン、シンオウ。それに外国だったらイッシュやカロスのポケモンまで伝説や幻のポケモンも含めてソラで言えるよ。とりあえず720匹。」

 

「そ、そんなにかい? それはたまげた………」

 

「コイキングがギャラドスに進化することも知ってるし、イーブイの進化形が3種類じゃないことも知ってる。だからトレーナーズスクールに通う必要なんて、ないんだよ。」

 

 

 メガシンカについてもある程度知っているけど、これはカロスの研究だ。

 俺が口出ししていい研究じゃない。

 

「そうかい………なら、逆にその知識を活かしてトレーナーズスクールの講師にはなれるんじゃないかい? ってその年齢じゃむりね。ごめんね」

 

 

 申し訳なさそうにあやまるおばあちゃん。

 三歳児が教師をねぇ。

 

 絶対に舐められる。

 

 だけど………

 

「それ、いいかもしれない………」

 

「へ?」

 

「ありがとうおばあちゃん! これでおばあちゃんに恩を返せる!!」

 

 

 やるなら知識を活かせ! 俺が得意なことはなんだ。ポケモンだろう。

 ならば知識を活かして金を稼ぎ、ポケモンを育てられるお金を確保し、旅に出る!

 コレだ!!

 

 

「どうしてこんなに優秀な子が捨て子だったのかしら………」

 

 それは俺にもわからない。

 

                   ☆

 

 

「というわけで、7番道路でポッポを捕まえました。」

 

「クルッポー!」

 

「それと………」

 

「カンビィ………ZZZ」

 

 

「16番道路の草原で寝込んでいたカビゴンを、そのままスーパーボールでつかまえました」

 

 

 ポケモンの笛で起こす必要なんかなかった。

 すでに状態異常:ねむる

 

 って感じだったからね。スーパーボールを投げたらすぐに捕まったよ。

 しかし残念ながらカビゴンは3匹もいた。

 

 そのうち一匹を捕まえたに過ぎない。

 ポッポを捕まえたモンスターボールは、おばあちゃんが俺にくれたものだ。

 

 しかしながら、カビゴンを養っていける財力は無いので、スマホの中にボールごと収納した。

 

 “レンジのパソコン”の中は仮想空間。

 ポケモンはおなかを空かせることなく、さらにストレスをため込むことなく生活することが可能らしい。

 マサキェ………あんた、本当にすごいお預かりシステム作ってたんだな………

 

 でもポケモンにとっては一種の牢獄かもしれないな。

 

 まぁ、今はそんなことはどうでもいい。食費が掛からなくてラッキーだと割り切ろう。

 “この木はなんだか切れそうだ”って木があったけど、3歳児の身体の小ささを活かして隙間を通り抜け―――

 

 

「へい、こんにちは!」

「あら、あなたは?」

 

 

 16番道路の秘密基地のような家に住んでいる女の子に会いに来た

 8歳くらいの女の子だ。

 

「僕はレンジ。迷い迷ってこんなところにやって来た、ただの3歳児だよっ!」

「そうなんだ。私がここにいるってことは誰にも言わないでもらっていい?」

「いいよっ!」

「ありがとう。お礼にこの“秘伝マシン”をあげるね」

 

 

 というわけで、“秘伝マシン・そらをとぶ”をゲットしました。

 

「秘伝マシン02は“そらをとぶ”。とても素晴らしい便利な技なの。大事に使ってね!」

 

 

 この女の子が誰なのかなんてどうでもいい。

 きっとここに来る途中にいたカップルの浮気相手の子かなんかだ。

 きっと男の方の連れ子だろう。

 

 ここに来る途中にイチャコラしていたカップルが

 

「こらカホ。僕ばっかり見ていたらだめだぞぉ」

「てへっ ごめんなさぁい。ジンがかっこいいんだもん」

 

 とか言っていた。

 

 きっと………いや、やめておこう。

 彼女の愛が重すぎたんだ。あとぶりっ子過ぎたんだ。俺でもそんな女はお断りだ。

 他の女に手を出してしまうのも仕方がないのかもしれない。

 

 

 さて、自転車もないからもう16番道路に用はない。

 

 

 次に向かうはクチバシティ

 

 クチバのジムバッジが必要だ。

 

 なぜならクチバのジムバッジがなければポケモンの“そらをとぶ”の許可が下りないからだ。

 秘伝わざを使うのに、許可が必要なのはなぜか。

 実力の足りないものが使用すると、危険があるからだ。

 

 空を飛んでも落っこちるかもしれない。

 怪力を使って人をひねりつぶしてしまうかもしれない。

 岩砕きで物を破壊してしまうかもしれない。

 

 そうしたトラブルを防ぐために、わざを使うことに許可が必要なのだ。

 

 

 とはいえ………勝手にやってもばれなきゃいいのだ。

 

 

「ポッポ。そらをとぶ、できる?」

 

「ポッポー………」

 

 ポッポの小さな身体では空を飛ぶを覚えても使用できないとは思わなかった。

 

「しかたがない。しばらくはお金を溜めながら7番道路でレベル上げに勤めるよ」

 

 

                   ☆

 

 

 というわけで、ポッポはピジョンに進化した。レベルは現在29である。

 

 戦い? そんなもん、1カ月かけて野生の奴らと戦っては回復。戦っては回復を繰り返して安全第一で戦ったさ。

 

 おかげで、ピッピのレベルは25にあがって覚えている技は“うたう”“めざましビンタ”“まるくなる” そして、“いやしのねがい”である

 

 お金を溜めたらわざマシンを買っていろいろな技を覚えさせたいところである

 

 

 イーブイはもうレベル33だ。

 

 しかし、進化はさせていない。

 お金がないから石を買えないのだ。

 

 ちまちまとスロットで貯めたコインを換金したり、わざマシンを購入したりして、今現在イーブイが覚えている技は“あまえる”“シャドーボール”“スピードスター”“でんこうせっか”

 進化したら、充分に強い技構成でもある

 

 

「おばあちゃん!」

「なんだいレンジ。」

 

 そんな僕は、今おばあちゃんにはじめてのワガママを申しつけようとして床に正座で座っている。

 

「シルフスコープが欲しいです!」

 

 そうして頭を下げると、見事なまでに土下座である。

 

「うーん、ごめんねぇ、さすがにいくらいい子のレンジでも、初めてのワガママでも………その我がままはきけないねぇ」

「んー、残念。じゃあ仕事に行ってくるね!」

「はい、いってらっしゃい。ごめんねレンジ」

 

 

 シルフスコープが欲しい理由? 一つしかないでしょそんなもの。

 ゴースを捕まえに行かないと。しかしながらシルフスコープは15万円するのだ。

 高すぎる。初めから買ってもらえるとは思っていないさ。

 

 とりあえず、今はおばあちゃんに俺のポケモン保険や衣食住を保証してもらっているが、今は自分で稼いでいるお金もある。

 仕事の合間を縫って、ポケモンを育てているのだ。

 

 今では7番道路にイーブイ達にかなう相手はいなくなった。

 

 いや、一匹だけ居るか。最初にイーブイに挑んできたガーディ。あいつはいつもイーブイに喧嘩を売ってくるので、イーブイもそれを買い、なんだかんだでイーブイが勝つ。

 

 そんなことを繰り返している内に、ガーディのレベルが26とこの草原の中では最強になっていたのだ。

 

 いまではガーディは7番道路のボスである。

 

 

 そのうちこのガーディを捕まえよう。

 モンスターボールを買えるようにならないと。

 

 ああそれと、スマホの中に収納したポケモンの食費については心配しなくていいらしく、安心した。

 とはいえ、イーブイやピッピをパソコンに預けるようなことはしたくない。

 なぜなら可愛いから。

 

 だからその分は食費がかかってしまう。

 それはしょうがない事だね。

 

 

「あ、おまえ!」

「きょうもじゅぎょうにでるのか!?」

「あんたがせんせいなんて、ズルいわよ!」

 

 おばあちゃんの家を出て数分。

 近所の子供たちが現れた。

 この子達は俺の生徒でもある。

 

 

 トレーナーズスクールのテナントはタマムシマンションの最上階にある。

 しかもそれは裏口からしか行くことは出来ない。

 

 マンションに住む人に迷惑を掛けさせないためのモノだろう。

 よくできたマンションだ。

 

「ごきげんようハヤト。マンションでは大声を出さないように。あと、『おまえ』じゃなくて『レンジ』です。ケントも、先生には敬語を使いましょう。サナエちゃんも。僕はズルくないです。僕が持つ知識をみんなに教えるために、先生になったんだよ。僕が苦労して得た知識をすぐに教えてもらえるキミ達の方がズルいんだからね」

 

 そう。俺はトレーナーズスクールの講師になった。

 教員資格などはいらない、ただの講師だから給料は安いけれど、それでも自分の力でお金を稼ぐことができるのだ。

 おかげで、この一か月でお小遣いが7万円という、3歳児が持つにしては大金を自分の力で得ている。

 あと三か月、この仕事を頑張れば、シルフスコープを買えるようになるはずだ。

 

 

                  ☆

 

「はい、サナエちゃん。5+4は?」

「えっと、えっと………8!」

 

 サナエちゃんは指折りで数えて元気よく答えた

 

「ぶぶー。惜しいね!もう一度考えてみようか」

「え? あ! 9! むつかしいもんだいをだすなんて、ズルいわよ!」

「はい、正解です。よくできました」

「む、うぅ」

 

 算術の授業です。

 言うても、ここの授業はタマムシマンションの屋上。青空教室だ。5~7歳の子が多いから、この程度の問題が多い。

 それでも、この子達は将来のトレーナーたちだ。

 10歳になったら旅に出るのに字や算術ができなければお買いものの時や地図や看板を見る時に苦労してしまう。

 だからこそ、知識を詰め込まないといけない。

 

 僕と一緒に授業をする講師のお姉さんは、正直言って、俺よりも頭が悪い。

 小学校高学年までの成績で充分先生をやって行ける力があるというのだ、この世界は。

 

 ポケモンの力に頼り過ぎなのではないだろうか。

 

 だからこそ、高校の数学までならおしえてやれる程度の学力がある三歳児の俺は異常なのだ。

 

 そんな俺だからこそ、こうして講師の職に就くことができたわけだし、そんな俺に利用価値を見出したトレーナーズスクールタマムシ支局は俺を講師にすることに異存はなかったらしい。

 

 まぁ、学力テストでさらっと満点を取ってポケモンテストでも満点を取って、本来の講師の先生と学力勝負をしてあっさりと打ち負かしたものだから今は俺が生徒たちに算術を教えているのだ。

 

 俺の授業は褒めて伸ばす授業である。

 おかげで生徒受けはいいのだが、やはり年下に教わるのは気分がいいものではないらしく、眼の仇にされることも多い。

 

「はい、算術の授業はここまで。つぎはポケモンの授業になります」

 

 それでも、俺はこの仕事にやりがいを感じていた。

 

「おいレンジ!」

「ん、なに、ハヤト。」

「おまえはポケモンつよいのか?」

 

 生徒のハヤトに呼ばれて振り返る。

 ポケモンか。ポケモン勝負ってことかな?

 

「うーん。トレーナーじゃないからわからないけど、まだ強くはないね。これからもっともっとつよくなって、いつかはチャンピオンのワタルさんも倒すよ」

 

「ワタルさんを!? すっげー!」

 

 最初は俺のことをナマイキだと言っていたハヤトくん。

 彼はなんだかんだでポケモントレーナーへの憧れが強く、俺が懇切丁寧にトレーナーとして何が大事か。彼らよりもいかに知識を持っているかを知らしめてやったら簡単に俺を認めてくれた

 

 なんというか、年が近いこともあって友達みたいな感じで扱われているが、悪い気はしない。

 

「ハヤトよりもあたしとお話ししようよ。ズルいわよ………。」

 

 最近、サナエちゃんがチラチラと俺を見ている気がするが、俺はロリコンじゃないし、エリカ様が大好きなので彼女のことはアウトオブガンチューである。

 

「ブイ………」

 

 だから足を踏まないで、イーブイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ、頑張ってますね、レンジさん」

 

「あ、エリカさんだ!」

「きれー!」

「なんでここにきてるんだろー?」

 

 

 俺が授業をしていると、時々ジムから抜けだして来たエリカ様が授業参観にやってくるので、そのせいで俺の授業が人気だということもあるのは、気のせいだと思いたい。

 

 

 

 


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