戦車これくしょん~欠陥品の少女達~   作:トクサン

2 / 51
 本編とは何ら関係ありません、「ヤンデレなんて興味ないぜ!」なんて人は世界に居ないと思いますが、もし該当する方がおられましたら読み飛ばして頂いても大丈夫です。


番外編
番外編 ケッコン(仮)


 

「ケッコン‥‥カッコカリ?」

 

 中央から送られてきた書類の中に一際厚い封筒、それを開くと「ケッコン(仮)」と言う一枚の婚約届が入っていた。

私は訝し気にそれを眺めながら首を傾げる、これは一体何なのだろうか?

裏表を念入りにチェックし、その欄も隅々まで観察する。

どこからどう見ても普通の婚姻届け、だがその隣にはカッコに括られた仮の文字が書いてある。

 

「少佐、どうしましたか?」

 

 共に書類仕事を進めていたトクが手を止め、こちらを伺う。

彼女の事務能力の高さには毎度お世話になっているが、今回もそうだった。

市街地戦後、何事も無く仕事に復帰した私の前に立ちはだかったのは書類の山だった。

今日で処理作業は三日目。

正直、トクには何かしら餞別をやらなければならない気がしている。

その書類の山の少なさから、幾分か私より作業は進んでいるらしい。

どうにも手を止める事に罪悪感を覚える私は、「あぁ、いや」と言葉を濁した。

 

「何でも無い、ただ一枚用途不明な書類が混じっていてな‥‥」

 

「用途不明の書類ですか‥‥?」

 

 どうも、思い当たる限りでそう言った書類は無かったらしい。

或は本部のミスと言う考えも出来る。

大方、本部の婚姻を控えている奴の書類が間違って混入してしまったとか、そういう事だろう。

(仮)と言う部分に引っかかるが、一際異彩を放つ書類を前にすればそう考えても自然な筈だ。

しかし、もう数枚同封されていたA4用紙を見る限りその可能性は低そうだった。

私はぴらぴらと婚姻届を振りながら、「いやな、ケッコンカッコカリとか言う書類なんだが‥‥」と口にした。

 

 瞬間、トクから途轍もなく強い殺気を感じた。

思わず、背筋が伸びる。

そして次の瞬間には、手にあった書類が掠め取られていた。

見れば、デスクの上にトクが身を乗り出していた。

勢いで書類の山が雪崩を起こすが、彼女の威圧の前ではそんな事は些細な事。

 

「少佐、ご結婚なさるので? おめでとうございます、それで、お相手は軍の方でしょうか? 所属はどちらで?」

 

 手元の書類を一瞬で読み終え、握り潰しながら私に迫るトク。

椅子の背凭れに追い詰められ、トクの両目が直ぐ傍で私を射抜いた。

まるで感じた事の無い重圧感、意図せず額に冷汗が流れた。

 

「待てトク、お前は何か決定的な誤解をしている」

 

「少佐、私は言った筈です、貴方が居なければ生きていけません、裏切るのですか? 私達を置いて行くのですか?」

 

 ギシリと椅子が音を立て、トクが私を壁際まで追いやった。

ドン、と退路を塞ぐように壁に突き立ったトクの腕。

か弱い女性の様に白く、細い腕ではあるが私の何百倍と言う怪力を生む戦車の腕だ。

瞳はどす黒く、まるで人形の様に感情を見せない。

だがその口元は歯を食いしばり、激情を堪えているのが分かる。

僅かに唇から血が垂れ、私の膝に滴り落ちる。

 

「トク、いいか、話を、そう、話を聞いてくれ、私は結婚しないし、する予定も無い」

 

「予定も無い? 冗談ですよね少佐、予定はここにある筈です」

 

「お前は何を言っているんだ」

 

 自分と私を交互に指差すトク、それ程錯乱していると言う事だろうか。

その肩をやんわりと押し返しながら、私は息を吐き出す。

それから言い聞かせる様に言った。

 

「これは中央から送られてきた書類の片方で‥‥あぁ、あった、詳細はこっちに書いてあるぞ」

 

 そう言ってデスクの上に散らばった書類、その中の一枚をトクに見せる。

通常、申請書や何らかの詳細な記入が必要な書類には付随して何らかの説明が入っている事がある。

そしてコレが入っていると言う事は、本部の手違いでも何でも無いと言う事だ。

どこか疑わしそうに書類を手に取ったトクは、暫く無言で書類を読み進めた。

 

「どうも海軍時代にあった『ケッコン(仮)』というシステムとやらの復元に成功したらしい、何でも特殊な指輪を艦娘に装着させ、婚姻する事で対象の戦闘能力が飛躍的に上昇するとの事だ」

 

 どうにもテストケースとして、幾つかの基地に指輪が送付されたらしい。

恐らくこれを送られた基地で将軍は困惑しているだろう。

この際、何で指輪を付けて結婚すれば戦闘能力が上がるのなどと、そんな事は問うまい。

そんな事を言い出せば、戦車も艦娘も、陸上孅車、深海凄艦も全てファンタジーな存在だ。

 

「‥‥‥成程、戦力増強の為‥‥ですか」

 

「あぁ、対象は人間の女性では無く艦娘、この場合はお前達戦車が該当する、つまりは‥‥そうだな」

 

 そう言葉を選び、口にしようとした所で

 

「将臣さん、お疲れ様です、少し息抜きにお茶でも‥‥」

 

 

 

「お前達戦車の誰かと結婚する、と言う事だな。」

 

 

 

 部屋に何かが割れる音が木霊する。

部屋の入り口を見れば、ホリが丁度扉を開けた所で、お盆ごと茶を床にまき散らしていた。

木製のお盆がコン、と音を立てる。

 

「け‥‥っこん?」

 

 ホリが呆然とした表情で呟く。

私に詰め寄っていたトクを見れば、しまったとばかりに顔を顰めていた。

私と言えば、何ともタイミングの悪い入室に弁解するタイミングを失ってしまう。

あの一部分だけを聞けばホリも誤解してしまうだろう。

しかし、何とも部屋に沈黙が満ちてしまい口を開くに開けない。

しばらく気まずい雰囲気が流れるが、それを破ったのはホリ。

先程までの呆然とした表情ではなく、どこか険しい顔つきで私に詰め寄る。

 

「将臣さん、戦車と結婚と言うのは、一体どういう‥‥」

 

「あぁ、その、だな」

 

 何と説明したものかと考える。

目の見えない彼女には資料を渡しても意味は無い。

何とか頭に整理をつけ、言葉を選びながら口にする。

 

 中央から「ケッコン(仮)」に関する書類が届いた事。

それは海軍時代のシステムであり、中央が復元に成功しこの基地をテストケースとして選んだ事。

そして、戦車の中から一人選び、結婚を行わなければならないこと。

 

 それを全て聞いたホリは、険しい表情のまま「この事は、私とトクだけが?」と問うてきた。

 

「えぇ、先程少佐と見つけたばかりの書類なの、チハとハクはまだ知らないわ」

 

 トクが答えると、「そうですか」と言ったまま黙ってしまう。

何か考えているのか、その雰囲気はどこか鬼迫迫るモノがあった。

それから一分ほどか、背中に嫌な汗を掻いてきた来た頃、ホリは覚悟を決めた表情で問うてきた。

 

「それで‥‥将臣さんは、誰と結婚するのですか?」

 

 その一言で、ピンと部屋の空気が張り詰めた。

正確に言うと、ホリとトクの二人の雰囲気が刺々しくなったと言うべきか。

その重い空気が背中にずしりと圧し掛かり、口の中が渇いてくる。

 

「いや‥‥まだ、何も考えて居ないと言うか、決めかねると言うか‥‥」

 

 私がしもどろになって曖昧な返事をすると、ホリは僅かに表情を強張らせて私の手を取り、強く握った。

 

「将臣さん‥‥っ!」

 

 その握力は決して力任せに握ったと言う感じでは無く、何か懇願する様な、そんな意思が感じ取れる。

私がその行動に戸惑っていると、トクが「ちょっと」と口にしてホリの腕を取った。

しかしホリの手が私を離す気配は無い。

 

「ホリ、一体どうし‥‥」

 

 私がそう口にする前に、彼女の包帯に包まれた目から視線を感じた。

彼女の目は見えない。

だが、何か体に巻き付くねっとりとした何か。

じっと見て居れば、少しずつ体が溶かされていく様な。

そんな錯覚に陥る。

知らず知らずの内に、ホリをじっと見つめる様な体勢になってしまう。

段々と、自分の意思が薄らいで行き。

 

「少佐!」

 

 トクに揺すられ、その瞳の束縛から逃れる。

ホリの気配に呑まれそうになっていた事に気付く。

それから少し頭を振って、自分に言い聞かせる様に言葉を吐いた。

 

「‥‥今の所、誰かと結婚するとかは、考えて居ないんだ」

 

 それは、この戦時下に於いては司令官失格だろう。

だが、戦力増強の為に望まぬ婚姻を結ぶなど、倫理的、人道的に自分は許容出来なかった。

少なくとも彼女達を兵器として見れなかった私には。

 

「戦力増強の為とは言え、望まぬ婚姻を強いるなどと‥‥戦時下だからこそ私達は自分達の尊厳を失ってはならない、そう思っている」

 

 どの口がそんな綺麗ごとを口にするか。

生きるか死ぬかという状況で、一体何を言っているんだ。

そんな事を自分でも思う、尊厳だとか人権だとかは平和な世界だからこそ意味を成すのだ、死んでは尊厳もクソも無い。

だがこればかりは性分の問題なのだ、私個人の、一人の人間としての矜持と言うべきか。

嘗て神風で大日本帝国が敗れた様に、海で勇敢なる艦娘が沈んでいった様に、命や尊厳を軽んじればそれは自分に返って来る。

これは私と言う男が退けぬ一線、そのボーダーラインだった。

 

「少佐」

 

 私が自身の情けなさに唇を噛んでいると、トクの声が耳に入った。

顔を向ければ、何とも言えない表情、怒っている様な悲しんでいる様な、そんな顔をしたトクが視界に映った。

「もし‥もし、ですが」と口にしてから、トクはゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「私達が‥‥戦力増強の為に婚姻を結びたがっていると思っているのなら、それは大きな間違いです」

 

 最初、その意味を理解出来なかった。

いや、まさかと思った。

 

「‥‥それは、一体どういう」

 

 私が問う寸前、トクとホリはまるで示し合わせた様に私の前に乗り出し、その勢いに思わず言葉が途切れた。

その表情は先程の憂いなど消し飛んだように、清々しい笑顔。

だが何故だろう、その笑みの裏側に何か黒いモノが見える気がする。

 

「で、私とトク、どちらと結婚するのでしょうか?」

 

「いや待て」

 

 話が飛んだとかそういうレベルではない。

話題が月まで行ってしまった。

 

「話を聞いていたのか、私は結婚は」

 

「戦力増強の為の結婚はなさらないのですよね? 勿論、そんな事はさせません、ですから相思相愛同士結ばれようと言っているんです」

 

「お前は何を言っている」

 

 相思相愛とは何のことだトク。

自信満々に胸を張るトクを他所に、ホリはどこか焦燥した様子で私の手を握りしめた。

 

「将臣さん、どうか私を選んでくださいっ! 私はっ‥私は貴方無しでは‥ッ」

 

「落ち着け、落ち着くんだホリ、頼むから少し整理する時間をくれ、選ぶとかそう言う以前に結婚する気は無いと言って」

 

「ま、まさか‥‥将臣さん、ハクや‥チハが‥‥?」

 

「ちょっと待て」

 

 駄目だコイツ等の中では既に私は結婚する事前提になっているらしい。

それに何だか意味不明な言葉もちらほらと聞こえてきた。

 

 何故そんなにも結婚したがるのか。

アレか、軍部のお偉いさんと結婚すれば何か良い事でもあると思っているのか?

しかし戦車は仮にケッコンしても戦場には出さねばならないし、懇意の相手だからと言って贔屓しては不満も出よう。

心苦しいが、もし誤解をしているのならその旨を伝えて‥‥‥。

 

「なぁ、もし誤解しているのなら言っておくが、私と結婚しても何のメリットも‥‥」

 

「メリット? 少佐、私達がそんな理由で少佐と結婚を望んでいると?」

 

「将臣さんっ、私は貴方以外は何も要りません!」

 

 駄目だ通じない。

 

「少佐、男らしく決めて下さい、さぁどっちを取るのですか!?」

 

「将臣さん‥‥っ」

 

 戦車とは言え、女二人に迫られる構図。

嬉しく無いと言えばウソになるが、事情が事情なだけに素直に喜べない。

私とて男だ、結婚願望位はあるが‥‥。

 

 私が二人を前にどうするべきか視線を泳がせていると、執務室のドアが二度ノックされた後開かれた。

 

「少佐、すみません、技術開発班から使用資材の相談が‥‥」

 

 入ってきたのは工房の技術員の一人で、ツナギを着たまま部屋に一歩踏み入った。

 

「‥‥‥」

 

 そして訪れるのは静寂。

何とも言えない部屋の惨状に口を噤んだ後、恐る恐ると言った風に「すみません‥‥出直した方が?」と額に汗を滲ませながら一歩後ずさった。

 

「い、いや、大丈夫、すぐ行こう」

 

 私はこれ幸いと席を立って二人の間を抜け、技術員の背中を押す。

背後から何やら物言いたげな視線を感じたが、「すまない、仕事だ」と言って早々に部屋を後にした。

扉を閉めると、心から安堵の吐息が漏れる。

 

「すみません少佐、お取込み中に‥‥」

 

「いや‥‥寧ろ助かった、と言っておこう」

 

「はい‥?」

 

 疑問符を浮かべる技術員に「何でも無い」と言い放った後、二人で工房の方へと向かった。

出来れば長時間拘束して貰いたい、是非。

今日は執務室に戻りたくなかった。

 

 

 

 

 工房での使用資材についての相談自体はものの十分程度で片付いてしまった。

技術開発班の方からは急ぎの確認はそれだけだと言われたが、何かと理由を付けて二時間程居座り続け、申し訳無さそうな技術開発班に「これ以上、少佐を拘束する訳には」と言われ工房を後にした。

お蔭で今週分の開発指示、使用資材の詳細等の分は終わり大分楽が出来る。

だがしかし、これで執務室に戻らない理由は無くなってしまった。

仕事もしないでふらふら基地内を歩いていては、将軍としての沽券にかかわる。

しかし、正直な所戻りたくないと言うのが本音であった。

 

 どうする、書類仕事が早く終わったとか何とか言って射撃訓練場にでも顔を出すか‥‥?

自分でもダメな方向に思考が進んでいるなと分かっているが、何となしに逃げの策を弄する事を止められない。

 

 そんなこんなで廊下を歩ていると、向こう側からチハが歩いてくるのが見えた。

一瞬、足を止めて心臓が強く鼓動を打つ、向こうはまだ気づいていない様だが「逃げる」と言う選択肢が頭に浮かんだ。

しかし、少し考えてチハが結婚に関する書類を見ていない事に気付き、「あぁ、じゃあ大丈夫か」と安堵。

そのまま笑みを浮かべてチハに接近し、気付いた向こうも小走りで私の元へとやって来た。

 

「やあ、チハ」と声を掛けた所で。

 

「アンタ、誰と結婚するの?」

 

 

 私は全力で逆走した。

 

 

 だが所詮は人間の脚力、戦車と比べればミジンコにも等しい。

「逃がさない」と呟いたチハにものの数秒で追い付かれ、そのまま地面に引き倒された。

力でも敵わない私に、逃れる術など無い。

廊下の真ん中で這い蹲る私と、背中に体重を掛け拘束するチハ。

 

「‥‥逃げるって言うのはそういう事? まさか、本当なの‥‥?」

 

 徐々に怪訝な顔になるチハに、「まて、落ち着け、話し合おう」と叫ぶが通じる様子は無い。

心なしか、いつもと比べて口調は淀みなく、口数も多い気がする。

そのまま、少しの間何かを考えていたチハは、徐に私の襟元を掴むとズルズルと引き摺り出した。

 

「‥‥‥来て、このまま外に居るのは危険、私の部屋に行く」

 

「えっ、ちょ、待っ」

 

 戦車の力で引き摺られ、抵抗する間もなく移動させられる。

このままでは制服が汚れると立ち上がると、襟元から腕を取られ引っ張られた。

流石に、あんな恰好を基地の人間には見せられない。

私の腕を掴むチハの力に、どことなく不機嫌そうな雰囲気を感じとった私は「これは、下手に刺激しない方が良い」と思い、大人しくチハの後に続いた。

 

 戦車の宿舎は工房からある程度近い位置にある。

幸いと言うべきか何と言うか、基地の人間にも戦車にも見られずに移動して来た私達は、そのままチハの部屋へとやって来た。

私から手を離し鍵を取り出すチハ、その間にも視線は鋭く私を射抜いている。

別に逃げる気は無いので、両手を軽く上げて意思を示した。

 

「‥‥入って」

 

 チハの部屋の扉を潜り、中を見渡す。

何と言うか、これと言って特徴が無い事が特徴か。

机に積んである数冊の本と手のひらサイズの観葉植物、それとトランプの様なカードだけが唯一の私物だった。

それ以外は最初から備え付けてある家具だけだ。

 

「それで」

 

 いつの間にか私の背後に立っていたチハが、いつもより一オクターブ低い声で問う。

振り向くと同時、彼女の僅かに怒気の孕んだ表情が視界に入った。

 

「説明」

 

 今更ながら逃げ出したくなる感情を覚え、さて何と言えば良いのだろうかと頭を悩ませる。

彼女の怒りを鎮められ、尚且つ何のゴタゴタも無く部屋を後にし、結婚の件をうやむやに出来る説明。

自分で考えておきながら、そんなのあるのかよと思ってしまった。

 

「あー‥‥というか、何故その件を」

 

「‥‥執務室に用があった、中からトクの声が聞こえて来て、アンタの結婚がどうとか」

 

 何と言うバッドタイミング。

私が顔を青くしていると、一歩詰め寄ったチハが私を下から覗き込んだ。

 

「‥‥ねぇ、どういう事、結婚って、誰と、いつ、何処で、何で?」

 

 暗く、ねっとりとした視線を放つ瞳。

それを真正面に捉えながら、固唾を呑み込んだ。

これは、受け答えを間違えれば‥‥。

そう予感できる程度には、何か感じ取るモノがある。

 

「‥‥実は、司令部から」

 

 そうして口火を切った内容は、ホリに説明した時と同じもの。

艦娘の時代にあったケッコン(仮)というシステムを復元したと言う事。

ケッコンすると戦車の性能が上がるという事

テストケースとしてこの相楽基地が選ばれたという事

 

 全てを話し終えた時、チハは俯いていた顔を上げ、珍しく。

本当に珍しく満面の笑みを浮かべ、言った。

 

「なら、簡単な話」

 

 そう言って、私に背を向ける。

 

「チハ?」

 

 私が疑問符を飛ばすと、何やらデスクの引き出しから取り出し、ゆっくりと振り向いて、私の腕を取った。

そして、『ガチャリ』と。

 

 

「私と結婚すれば、万事解決」

 

 

 手には手錠が嵌められていた。

 

 

「えっ‥‥?」

 





 ヤンデレ成分枯渇に耐えられなかった‥‥。
許してつかわさい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。