ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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このままディオドラ編までやろうと思います。
そうなるとイッセーの出番が………。


彼は異世界の彼と出会う その11

 平行世界の兵藤 一誠の来訪と共に驚愕に包まれたリアス達であったが、それでも時間は進む。

現在は……二学期である。

彼こと一誠達が来たのが丁度夏休みの最終の頃。そのためなのか、現在兵藤家は一誠と久遠以外いない。皆学園に登校しているのだ。

 

「あぁ~~~~……暇だ」

「そうだな~」

 

そんな誰もいない兵藤家でその家の主達にばれないように隠れながら過ごす一誠と久遠はそんな言葉を溜息と共に洩らす。

それは仕方ない事。彼等はこの世界の住人ではないのだから、下手に外に出て干渉する訳にはいかない……との建前。実際はすることがなくて暇なのだ。

 

『若い男二人が暇だと嘆くな。まぁ、確かにすることはないが…』

 

そんな二人を軽く言うドライグだが、彼もまた一誠達と同意見であった。

今までだったら学校に行ったり仕事をしたりして過ごしていたので、そんな暇ということはなかった。しかし、ここでは仕事はないし学校に行くことも無い。久遠も同じく、情報を集めても使い道がないので暇のようだ。

そんな男二人が項垂れているわけだが、一誠はここで少し思い立ったらしく身体を起こした。

 

「なぁ、ちょっと出歩いてみねぇか?」

 

その言葉に久遠とドライグは反応する。

 

「おいおい、あまり出歩くなって言われただろ?」

『そうだぞ相棒。あまり此方の世界に迷惑を掛けるなと……既に掛けすぎているか……』

 

そんな二人? に一誠はニヤリと笑いながら返す。

 

「別によぉ……『あまり出歩くな』なんだから、少しは出歩いてみても良いだろ」

「そりゃ、そうだよなぁ……」

『ただのトンチか揚げ足だろう、それは』

 

少し呆れた様子のドライグ。久遠は寧ろ一誠の話に乗り始めた。

 

「それに、俺が出歩いた所で精々この世界の俺に何かしら来るだけだろ。俺には問題ねぇ」

『うぉ、思いっきり自己中心的な判断だな。あまり此方の世界の相棒を虐めてやるなよ』

「まぁまぁ、お二人さん。だったら此方のイッセーに迷惑が掛からないような所に行けば良いだろ」

 

そして話し合う二人と一体。

その結果、此方の兵藤 一誠が居ても違和感がない場所ということになり、どういう訳か駒王学園に行くことになった。

当然それに文句を言う一誠。

 

「何でこっちに来てまで学校なんだよ?」

「別に良いだろ。この時間帯なら部活とかしたり下校したりしてるから、それらに混じったって違和感はねぇんだしよ」

『それに少しは世界の違いを感じてみる良い機会ではないか。特に此方の相棒と相棒のもっともな共通点と言えば俺と学校なのだからな』

 

そんな一誠に苦笑しつつ説得する久遠とドライグ。

結局、文句はあれど暇よりはマシだと思い、一誠は立ち上がった。

 

「まぁ、ここでウダウダしてるより百倍マシだ。行こうぜ!」

「そうだな」

『これで少しは大人しくなれば御の字だな』

 

以上、兵藤家でウダウダしている一誠達の会話。

そして彼等は外へと、兵藤家から出た。

 

 

 

「へぇ~、ここが此方の世界の駒王学園ねぇ~」

「まったく同じじゃねぇか」

 

そして只今、学園の敷地内を一誠と久遠の二人は歩いていた。

彼等が元の世界で使っていたように通学路を通り、周りの生徒達や住民から不審がられる様子もなく普通に学園に着いた。彼等の目の前にあるのは、立派な校舎である。

しかし、彼等にとっても見知った学園であることに文句を洩らす一誠とそんな一誠を見て苦笑する久遠。ドライグは人前に出るわけにはいかないと黙っている。

そんなわけで学園内をぶらつく一誠と久遠。

正直目的などないので、散歩のような状態だ。それでも室内で腐っているよりかは幾分マシだとは思える。

 

「それで、この後はどうする?」

 

一誠は久遠を見ながらそう問いかける。元から目的などないのだから、行く先もない。

そんな一誠に対し、久遠は少し考えた後にニヤリと笑う。

 

「だったらオカルト研究部の所にでも顔出すか。それで連中の驚いた顔でも見ようぜ」

「まぁ、それも少しは面白そうか。今更ここでお勉強とかってのはありえねぇからなぁ」

 

まさに悪ノリをする不良のような感じに歩く二人。そんな二人にドライグは溜息を内心で吐くが、まぁマシだろうと判断する。その程度で済むのならそれに越したことはない。

そんなわけでオカルト研究部があるであろう旧校舎へと向かう二人だが、そんな二人の前方が妙に騒がしかった。

その騒がしい原因は二人の男子生徒。何かに追われているのか、必死な形相で一誠達の方向へと駈けてくる。

 

「あ、おいイッセー、助けてくれよ!」

「頼む、逃げるのに協力してくれ! 秘蔵のDVD貸すからさ!」

 

二人はどうやら此方の世界の兵藤 一誠の知り合いらしく、一誠に助けを求めているようだ。

そしてそんな彼等の背後から怒濤の勢いで女子の集団が走ってきた。

 

「待ちなさい、この変態共!」

「待て~~~~~! 直ぐにお縄につけ~~~~~!!」

「この、また覗きなんかして! もう、絶対に許さないんだから!」

「またボコボコにされたいらしいわね!」

 

彼女達の言っていることからその二人が何かしらした事が窺える。そして一誠の姿を見て更に怒りを増した。

 

「あ、変態兵藤! あんたもやっぱりグルなのね!」

「そこで大人しく捕まりなさい! 一思いにやってやるから!」

 

どういう訳か濡れ衣を着させられた一誠。そんな彼は自分に助けを求める元凶二人が近づいてくるのを見て、実に不機嫌そうな顔をした。

そして………。

 

駆け寄ってきた二人の顔面を彼にとって軽く殴り飛ばした。

 

「ゴハッ!?」

「グペッ!?」

 

まさか殴られるとは思っていなかったのであろう、二人の男子は短い悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。

そして起き上がることはなく、地面で白目を剝いて倒れている。

いきなり目の前で起こったことに驚きを隠せない女子達はその足を止め、一誠に注目した。

そんな戸惑いの視線の中、一誠が思った事は何てことはない。

 

(面倒臭そうだ)

 

この一言に尽きる。

そして一誠は地面で伸びてる二人の胸ぐらを掴んで引き摺ると、女子達の方へと引き摺り始めた。

 

「何で追いかけてるのかなんて知らねぇけど、これでいいだろ」

 

そう言って女子達の前にその二人を投げ込んだ。

 

「あ、うん…………」

 

そんな一誠の行動に拍子抜けしてしまう女子達。

何せこの学園でも有数の有名人(マイナスの意味で)である一誠がこうもドライな感じなのは皆見た事が無かったから。

そんな彼女達に一誠は軽く問いかける。

 

「んで、こいつ等何しでかしたんだ?」

 

本当に分からないといった感じの一誠に、近くにいた女子が答えた。

 

「その、いつものように着替えている所を覗かれて……兵藤君はその……してないの……」

 

いつもと違う様子だからなのか、少し自信なさげに問いかける女子。

そんな女子に一誠はやっと二人が追いかけられている理由を知り、呆れ返った目をした。

 

「何だ、こいつ等覗きなんてしてやがったのか。まったく……馬鹿らしくて呆れ返っちまう。殴っといて正解だったぜ。お前等、存分にボコっとけよ。そんな下らねぇ真似する奴は折檻した方がいいからよ」

 

そう答えると、一誠はこれで終わりだと言わんばかりに背を向けて歩き始める。

そして皆に見えるように後ろに向かって手を軽く振りながらその場を去っていった。

そんな様子を見た女子達はもの凄く困惑した。

あの、あれだけスケベだった一誠に何があったのかと。

そしてその中には………。

 

「今の兵藤君……少しワルな感じがして格好良かった………」

 

頬を赤らめる者も多数いた。

平行世界に干渉しない方が良いと分かっているはずなのに、一誠早速やらかしていたが、その事に本人はまったく気付いていなかった。

 そんな彼は旧校舎に向かって歩いて行くが、隣にいる久遠をジト目で見ていた。

 

「テメェ、幻術でも使ってるだろ」

「正解」

 

一誠にそう問いかけられた久遠はニヤリと笑う。

 

「どうやらこの世界の俺は見当たらないようだし、下手に見られても困ったことになりかねないからな。だから幻術で一般人には見えないようにしてたんだよ。まぁ、お前みたいな異常者や悪魔とかには見えるけどさ」

「ケッ、面倒押しつけやがって」

 

そんな久遠に毒づく一誠。

しかし、久遠は尚笑う。

 

「でもまぁ、暇じゃなかったろ」

「あれじゃ暇潰しにもならねぇだろうが、アホ」

 

そう言って互いに笑い合いながら彼等は旧校舎へと向かった。

 

 

 尚、その後オカルト研究部が騒ぎになったことは言うまでも無く、この世界の一誠を見て頬を赤らめる女子が増えたとか。

ただし、それは同時に彼の親しい友人達から『裏切り者』のレッテルを貼られることになったとか。

本人には何のことかまったく分からず、その原因足る一誠もまったく気付いていなかった。


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