黄巾党本隊との交戦を前に、劉備達と最終的な作戦会議をすることとなった。劉備達との初顔合わせでは俺達が彼女達の陣を訪れた。そして、今回は劉備達がこちらを訪れる予定だ。もう少しすれば到着するだろう。
こちらの会議に参加するメンバーは楽進達三人を除く主要な面子で、もう全員揃っている。楽進達には周辺の警戒をしてもらっている。
俺と荀彧、劉備側は諸葛亮達の軍師同士でお互いの戦力や装備については既に確認が済んでいるし、大まかな案も幾つか出し合っている。後はそれらを踏まえて華琳達、トップによる最終判断がこれから為される。これはとても大事な作戦会議である。しかし、俺のテンションは地を這うようだった。
そんな俺とは対照的に冬蘭はニコニコしている。
「ふふっ、華琳様聞いてくださいよ~」
「随分ご機嫌ね。何か良い事でもあったのかしら?」
「良い事ではないですが、面白い事があったんですよ」
俺を見ながら冬蘭が華琳の耳元に、ここだけの話ですよ、と内緒話をするように話し始める。但し声量の方は内緒話とは言えない大きさで。
「あちらにちょっとした贈り物をしたんですけど、その時に向こうの軍師が八幡さんに怯えて震えていたんですよ」
「……今から共に戦おうという時に何をしているのよ?」
華琳は一瞬唖然とし、その後呆れながら聞いて来た。ここで俺が黙っていても冬蘭がバラしてしまうだろうし、隠しても仕方がない。仕方のない事だが、進んで言いたいことでもないので自然と沈んだ口調になる。
「お近づきの印にと心ばかりの贈り物を劉備達に持って行ったんだが」
「それは桂花から聞いているわ。貴方に限って単なる善意というわけではないのでしょう?」
「まあ、な」
華琳の口振りから察する。荀彧は俺の策、劉備達への友好アピールとあちらの兵への影響力アップなどを狙う意図までは説明しなかったらしい。荀彧に視線を移すと、彼女は小さく頷く。俺の行動が華琳の命令に反しない限り、荀彧はこの件で俺を邪魔しない。この前の説明で理解は得られている。
「一応無償で渡したが、俺達にとって利のある行動だ」
「そう、劉備達との折衝は貴方に任せているのだから好きにしなさい。で、何があったの?」
「糧食をあちらに運び込んだ時、何故か諸葛亮が俺をずっと見ていたんだよ」
ええー自意識過剰だろ、みたいな空気に場が包まれる。いや本当、めっちゃ見られてたって。ボッチは他人の視線に敏感なんだぞ。分かるから、プロだから。
「実際に諸葛亮が貴方を見ていたとして、何故怯えるのよ?」
「どうすりゃ良いのか分からなくて、引きつりながらだがなんとか笑顔を作ったんだよ」
「そうしたら諸葛亮が震えながら目を反らしたそうです。しかも私が見た時は
冬蘭が割り込んで最後まで言ってしまった。テンションだだ下がりの俺と、何が楽しいのかニコニコしている冬蘭以外は全員微妙な表情になってしまう。
「通りで……事前の打ち合わせの時、変な空気になるわけね」
「今からする作戦会議では気をつけなさい」
荀彧が呆れ、華琳は一つ溜息を吐いた後、それだけ言った。代わりに秋蘭と春蘭が口を開く。
「慣れていない者からすると八幡、お前は分かり辛いからな」
「いやあ、舐められるよりは良い。義勇兵如き、こちらを畏怖する位で丁度良いぞ」
秋蘭のフォローと能天気な春蘭に若干気が軽くなる。
「ここはさっさと気持ちを切り替えていこう。よし、作戦会議では極力何もせず、大人しくしているから後は任せたぞ」
俺の決意にその場の全員が何とも言えない顔をする。
「切り替えると言う割に後ろ向きね。貴方らしいと言えば貴方らしいけれど」
華琳が呆れていると劉備達がやって来たと伝令が走り込んできた。
さて、あまり悪い印象を持たれていなきゃ良いんだがな。
◇◇◇
劉備達の陣では二人の軍師が頭を抱えていた。
私は先程から自分の不明を恥じていた。軍師として有力者の情報は敵味方関係なく把握しておかなければならない。自分は広い視野を持っているつもりだったが、とんでもない見落としがあった。曹操さんの情報は少なからず持っていた。若く才能に恵まれ、向上心もある人物で今まさにその名を中華全土へと広めんとしているという認識だ。しかし、認識を改めなければならない。凄いのは曹操さんだけではない。その配下である黒き御遣い、比企谷さんは下手をすれば曹操さん以上に注意しなければならない相手かもしれない。
比企谷さんの危険性に気付いた私は、同僚の雛里ちゃんと共に彼の情報を慌てて集めることにした。と言っても現状で出来る事は、曹操さんの所の兵から得られる噂話の収集くらいのものだった。それでも無いよりはマシだ。
曰く、曹操さんが何処からともなく連れて来てた。
曰く、曹操さんと夏侯惇さんと夏侯淵さんの三人相手に戦って勝ったことがあるらしい。
曰く、曹操さんの縁戚である曹仁さん、曹純さんが直属の部下である。
曰く、拷問好きで熱した鉄を押し付けるのが最近のお気に入り。
曰く、あの人の尋問で吐かなかった者はいない。
曰く、魂を抜き取る術が使えるらしい。
曰く、
曰く、兵を率いれば部下を一人も死なせず第一功を挙げる。
曰く、天からの遣いと言っているが、本当は地獄からの使者。
集めた情報は玉石混交で、にわかには信じがたいものも多かった。しかしその中で共通しているものがある。それはこの噂を語る曹操さんの兵達の、彼を恐れつつもまるで自慢話をするような口調だ。内容は話半分に聞いておいた方が良いが、末端の兵達にこのように言わせるだけの何かがあるのは確かだろう。
「雛里ちゃん、集めた噂のどこまでが本当だと思う?」
「全て嘘であれば嬉しいのですが」
「逆に全てが事実であれば完全にお手上げです」
私の質問に対する雛里ちゃんの答えは、何の根拠も無い単なる希望だけど私も同じ意見だ。とりあえず魂を抜き取るとか地獄からの使者というのは置いておいて、それ以外の内容も驚異的である。知力だけでなく、戦いにも高い適正を持っているというのか。それに曹純さんが彼の補佐に付いているのは、私もこの目で見ている。彼が曹操さんの陣営で非常に重要な立場なのは確かだ。
問題は彼の優秀さだけではない。こちらが取れる手が少ないのも辛い。
「とにかく今はご主人様達に、あちらとの接近を慎むように言うくらいしか出来ないでしょう」
「下手な事をして敵愾心を持たれると大変です」
「現状での勝算は限りなく低い、むしろ無いと言った方が正しいからね」
雛里ちゃんの言った事態は、最も避けなければならない。今のところ比企谷さんは懐柔策をとっているので、何か無い限り突然強硬策に出るとは思えない。つまりあちらを刺激しないよう、但し確実に距離をとっていけば良い。
さあ、これから黄巾党本隊襲撃の作戦会議の時間です。あまり出しゃばらず、それでいて無茶な役割を押し付けられないよう細心の注意を払わなければ。
〇〇〇
劉備側の会議への参加者は、劉備、北郷、関羽、張飛、諸葛亮、龐統の六人がやって来た。
軍師同士で事前の打ち合わせは終わっているので、幾つかの案から最終決定を選ぶだけなのだが、どうにも話が進まない。打ち合わせで決まった内容を軍師陣の中の誰かが説明して、華琳や劉備にどの案を選ぶか話し合って貰うだけなのだが、軍師陣の誰も率先して話そうとしない。
俺はこの会議では目立たないようにしておこうと決めていたので、最初から口を閉ざしていた。そうしたら何故か荀彧や諸葛亮達も何も言わない。
まあ、黙っていれば三人のうちの誰かが仕切るだろう。軍師って生き物は何でも仕切りたがるものだ。完全に偏見である。
しかし、誰も口を開かない。どうして誰も口火を切ろうとしないのか、首を捻りつつ三人の顔色を窺う。原因不明のお見合い状態で妙な空気が漂う。
(荀彧、おい荀彧!)
(何よ)
(向こうは仕切るつもりが無いみたいだから、お前が仕切ってくれ)
(気安くお前って言わないで! それにあちらとの共同作戦に関しては貴方が担当でしょ?)
(さっきも言っただろ。目立ちたくないんだよ。頼む、一生のお願いだから)
俺の人生で何度目かも分からない一生のお願い。しかし、一回死んだから一生のお願いもリセットもされているはず。小声で拝み倒すと荀彧は嫌々ながらも受け入れた。
「……では黄巾党本隊討伐における作戦会議を始めましょう。事前に軍師陣でいくつかの案を出しているので、それを紹介します」
話し始めてしまえば荀彧は淀みなく説明を進める。
軍師同士での話し合いで出た案は大きく分けて三種類。誘き出して罠にかける、夜襲、火攻めである。
誘き出してというのは俺の案だ。前にも使った策でワンパターンと思われそうだが、今回は少し違う。黄巾党本隊は二十万人にも達するらしい。まあ、その中にはまともに戦える状態ではない者達もいるらしいが、それを差し引いてもこちらより人数が多いのは確かだ。そんな大軍を破るには、過去の偉人の手法を真似でもしなければ難しい。そこで参考にしたのが戦闘民族島津の誇る釣り野伏せだ。
内容は先ず正面から一度当たり、敗走に見せかけて後退する。追って来た敵軍を伏兵により左右から挟撃、後退中の部隊も反転して攻撃、これにより敵軍を半包囲状態にする。少数の兵で多数の相手を殲滅するには、非常に有効な作戦らしい。今までも似たような作戦を使っているが、誘き出した相手を攻撃する際に二方向から攻撃することはあっても、三方向からというのは初めてだ。
そして、火攻めは荀彧、夜襲は諸葛亮達が提案した。まともに戦うのは避けたいという認識で共通している。
三種類の案を聞いて最初に華琳が反応を示す。
「私はこの一戦で黄巾党の基幹を壊滅させ、この騒乱の大勢を決するつもりよ。つまり今回の目的は相手戦力を消耗させることでも撃退することでもなく、殲滅することにあるわ」
一切の反論を許さない断言。この場の力関係的に最も有力である華琳がここまで言うと、それはそのまま決定事項となる。そして、すぐに華琳至上主義者の荀彧が追従する。
「それでは夜襲は少し主目的から外れますね。
「そ、それを言うなら火攻めも同じではないでしゅ、すか」
諸葛亮が慌てた様子で反論する。数十万にも及ぶ大軍に深刻なダメージを負わせる程の火攻めなら、炎と煙でこちらも多かれ少なかれ全体の状況を把握しづらいのは確かだろう。
三つの案のうち二つが議論に上ると、次は残った一つに目が向けられる。というか残った一つを提案した俺へ軍師連中の視線が集まる。自分の案の優位性を説明をするなり、他の案の問題点を挙げるなりしろといったところか。
だが断る。積極的に議論へ参加して目立つつもりはない。今の俺は例えるなら学芸会などの演劇における木の役である。ただただ黙して立っているだけ、メインキャストの方々のお邪魔は致しません。それに戦術眼は華琳や諸葛亮達の方が上だろう。現代人として彼女達には無い視点からアイデアを出すのは有効だと思うが、この規模の作戦全体を采配するのはまだ荷が重い。
口を開く気配の無い俺を見て、荀彧が面倒そうに俺の案についても分析しだす。
「誘き出したところを三方向から攻撃する、考えとしては理解出来るけれど実際可能なの? 寡兵で大軍相手を包囲するというのは、包囲網が薄くなるんじゃないの?」
「そうです。数の差がここまでなければ何とかなるかもしれませんが」
「少し難しいと思います」
荀彧の指摘に諸葛亮達も同調する。俺の案に彼女達が問題ありと思うなら、特に反論するつもりは無い。上手く実行すれば有効らしい、俺自身その程度の認識だ。なにせ聞きかじった程度の知識なので、自信満々に勧めるのは気が引ける。俺がガチのミリオタだったり、もっと軍師として指揮した経験が豊富であれば話は別かもしれないが。
そんなこんなで俺の案は却下かな、と黙って聞いていると意外なところから待ったがかかる。
北郷が首を捻りつつ俺に聞いてくる。
「もしかして、この案って比企谷が考えたんじゃないか?」
「ああ」
「それじゃあ、これって島津の釣り野伏せ?」
こいつ戦国マニアか? いや、マニアでなくても今時戦国時代をモチーフにした漫画やゲームなんかが溢れているのだから、知っていてもおかしくないか。ともかくここで無視するのは流石に感じが悪すぎるので肯定しておく。
「まあな」
「そっか。それなら効くんだろうなぁ」
北郷がうんうんと頷き、納得した顔をする。それを見て劉備陣営の連中がざわざわし始める。北郷をご主人様なんて呼んでいるくらいだ、影響力は大きいのだろう。
「あ、あのご主人様。シマヅノツリ、何て言いました? それって凄いんですか?」
劉備が初めて聞く言葉に困惑している。他の劉備陣営の連中も北郷を見詰めている。ちなみに俺にもこちらの陣営の連中の視線が集まっており、非常に居心地が悪い。しかし、どうせ北郷が今から説明するのだから俺が言う必要は無い。
「釣り野伏せは、俺達の国の歴史上の偉人が使った戦術だよ。その人は戦上手の島津義弘という武人で、この戦術を使って大軍を破っているんだ」
思いの外に熱く語る北郷。やはり戦国時代マニアという奴か。絡むと面倒臭そうだな。そっち系の話題はなるべく振らないようにしよう。
引き気味の俺とは違い、他の連中は北郷の話に興味を持った。特に劉備陣営の連中には好感触のようだ。最初難色を示していた諸葛亮と龐統も北郷に色々質問している。
「島津という人はそんなに有名な武人なのですか?」
「実際に使われた時の状況を詳しく教えてもらえますか」
「俺のじいちゃんの地元の偉人だから俺は良く知っているけど、そこまで有名でもないかな」
地元ね。鹿児島辺りか? それなら詳しくてもおかしくないな。北郷が諸葛亮達に色々説明している。この分だと俺の案が採用されそうだ。その流れは誰の目にも明らかで、春蘭ですら察したようだ。面倒臭い事に。
「どうやら八幡の案が選ばれそうだな。フッ、華琳様の一の軍師なのだから当然と言えば当然か」
春蘭が日頃折り合いの悪い荀彧を見ながら余計な事を言いやがった。普段弁が立つ方ではないくせに、煽りだけは一人前である。春蘭の煽りにこめかみを痙攣させる荀彧。どっちかと言うと煽る側であることの多い荀彧が、逆にやられている姿は新鮮である。
止める気も起こらない。引き合いに出されているのが俺でなければ。いやほんと止めろ。いや止めてください。俺まで恨まれるから。元から荀彧は男嫌いなのだが、俺には特に当たりが強い。これ以上悪化しては堪らない。それに今は劉備さんの所の孔明さん達もいるんですよ。あちらにも煽りが効いちゃったらどうするんだ。なんか既に空気が重くなってきた気がするし。
どこぞの強化外骨格をまとった人が昔、集団をまとめるのに一番有効なのは敵を作る事って言っていたけど、今回は俺が恨まれるのはマズイ。
必死過ぎてふいに昔の思い出がフラッシュバックする。ある合同クリスマスイベントの助っ人に駆り出された時に出会った他校の生徒会長、彼が覚えたてのビジネス用語をこねくり回してお茶を濁していた姿を。
「ひ、一つの案に固執し過ぎない方が良いと俺は思うぞ……ほら、あれだ、どれか一つを選ぶんじゃなくて、組み合わせて、シナジー、そう相乗効果を狙うってのはどうだ?」
苦しい、苦しいながらもそれっぽく言い募る。乗り切れるか? まさか、あの意識高い系(笑)の言動がこんな形で役に立つとは。いや、まだ役に立ったかどうかは分からないが。
噛み噛みなうえ、適当な俺の提案に華琳がいち早く反応する。
「しなじ? は分からないけれど、それぞれの案は相反するものではないから同時に使えなくもないわね」
「そ、そういうことだ」
華琳が都合よく解釈してくれたお陰で何とかなりそうだ。華琳は一、二秒目を瞑るとすぐに考えがまとまったようだ。
「先ず別働部隊が夜のうちに接近して情報収集。敵の指導者と燃えやすい場所などを把握、出来るなら油を撒いたり仕込みをする。夜明け直前に火を放ち襲撃。この際、一方向を除く敵陣全周に火が回るようにする。これならすぐに日が昇るから闇夜に紛れて逃げられることもないわ」
華琳が一度話をきって他の者達の反応を見る。口を挟む者は誰もいない。
「夜明け前の火攻めによって混乱する敵を火をつけなかった方向からこちらの本隊が攻撃を開始。それと同時に火をつけた別働隊は敵のふりをして大声で火の無い方向を叫んで敵を誘導する。本隊は陣から打って出て来た敵に一当てした後、敗走するふりをしながら後退。追って来る敵を伏兵で左右から挟撃する。そして本隊も反転し攻撃。これで問題無いでしょう。後はそれぞれの役割を誰がするか、ね」
「は、はいっ! 別働部隊はぜひこちらで」
華琳の話が役割分担へと移った瞬間、突然諸葛亮が手を挙げた。
「即席の連携では不安が残ります。私達は最初から別働部隊として動いた方が良いかと」
「そうね。それで良いと思うわ。他に意見のある者は?」
諸葛亮の意見を華琳はすぐに受け入れた。他に意見のある者はおらず、スムーズに役割が振られていった。
伏兵の右部隊が春蘭、秋蘭。左部隊が夏蘭、荀彧。本隊に華琳を中心に俺、冬蘭、それから季衣と楽進達で固められた。
伏兵部隊の割り振りは、その意図が分かり易い。秋蘭が春蘭の、荀彧が夏蘭の面倒を見るといったところだろう。伏兵部隊は攻撃開始のタイミングを間違えるわけにはいかない。完全な同時攻撃が必要なわけではないが、春蘭達だけだと先走る可能性が無きにしも非ずという判断なのだろう。
うちが誇る二大脳筋の脳みそに本来の働きを思い出させるにはどうしたら良いのだろうか、そんな事を考えていると困惑した様子の楽進が会議の場に現れた。
「重要な会議中失礼します。想定外の事態で華琳様の指示を仰ぎたく、参りました。周辺を警戒中、黄巾党らしき者数人を発見、攻撃しようとしたところ保護を求めてきました。交戦の意志も無く、武器も捨てたので見張りを付けて留めているのですがいかがいたしましょう?」
「「保護?」」
その場全員が怪訝な顔をした。
降伏でも命乞いでもなく保護? 全く意味が分からん。
おまけ
桃香「朱里ちゃん、なんで慌てて別働部隊を受け持つなんて言ったの?」
朱里「桃香さま、うちにはもうご飯を買うお金も無いのです」
桃香「えっ、でも比企谷さんと曹純さんが分けてくれたよね?」
朱里「全然足りません」
桃香「でもそれがなんで別働部隊の話に繋がるの?」
朱里「食べ物が無いなら、ある所から貰えば良いのです」
桃香「別働部隊で頑張って、曹操さんから追加の食料を貰うんだね?」
朱里「いえ、火に巻かれて混乱している黄巾党から頂きます」
桃香「それって火事場ど」
朱里「違います。いいですか? 不幸にも黄巾党のクズ共に捕らわれた食料達」
朱里「彼らがクズ共とともに地獄の業火に焼かれるなど不憫でならないでしょう」
朱里「私達には食料達をそこから救い出すという使命があるんです」
読んでいただきありがとうございます。