記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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新キャラ考え中


七話 助けるから(後編)

走馬灯って確か…………死ぬ前に見るんだよな。

俺は死ぬのか?

誰の役にもたてないで?

 

んっ?光?

…………眩しくて温かい。

太陽?

違うな。これは………

 

『小僧。このままでいいのか?』

レウロ?

『あの子をお前の手で救うのだろう?』

でも…………もう、無理だ。

『いや。無理ではない。』

なんにも知らないのによくそんなこと言えるな。

 

『……………ふん、バカにするな。私は知識の本の主だぞ?この世にわからぬことなぞ有るものか。』

……じゃあ……どうやったら彼女を救える?

『…………それはお前が見いだせ。』

分からないんじゃないか。

 

『行け。小僧。』

 

 

 

「涼!!しっかりしろ!!目を覚ますんだ!!」

朦朧とする意識のなか。紅月の声だけが響く。

 

視界が開けるとそこには、紅月と夜空に舞う火花が目に写った。

どうやら、紅月の腕輪で田中さんの攻撃を防いでいるようだ。

しかし、腕輪の力の方が劣っているためか少しずつヒビが入り始めている。

 

「紅…………月?」

「良かった!神無月!!式紙を出して援護を頼む!!」

 

「………了解した。」

紅月が叫ぶと、視界の端で神無月が紙に名にかを書いて投げた。

 

ボンッ!!

 

紙は俺たちと田中さんの間に落ちて煙を放った。

そして大きな壁が俺たちと田中さんを遮った。

 

「ふぅ。流石に疲れたぜ。涼。大丈夫か?」

「あっ、ああ。」

 

俺は左手に持った本を見つめる。

「どうする?もう攻撃の心配は要らないが………これじゃあ」

紅月が言葉を切った。

 

「あぁ。そうだな。田中さんに近付けないままだよな。」

頭のなかで作戦を考え始めた

 

例えば作戦その一

 

この壁の向こうに呼び掛ける。

何度か俺が近付いたとき彼女の意識は戻った。

なら、田中さんの意識が戻ったときに本を離すように言えば…………

でもダメだ、こんな厚い壁じゃあ声なんて届かない。

壁を消したらその瞬間に彼女は、俺が声を掛ける前に攻撃を仕掛けてくるだろう。

と言うわけでこの作戦はボツ。

 

 

作戦その二

 

レウロに頼んで何かを等価交換する。

よし!これなら行けるか。

 

「レウロ!等価交換がしたい。」

呼び掛けに応じてくれるだろうか…………

 

『…………いいだろう。何が望みだ?』

「田中さんを助けるためには何を交換すればいい?」

『………………。』

「どうした?なんでもいいぞ。彼女を救えるなら。」

『右腕だ。』

やはりそう来たか。何となく分かっていたが確認しておきたかった。

 

本に向かって静かに「俺の右腕で足りるか?」といった。

「バカなことを言うなっ!」

紅月が息を荒くしていい放つ。

 

「そうだ…………腕をそんな簡単に……………」

神無月も近付いてきた。

 

「でも。これ以外方法が…………」

「涼…………バカ。」

そうだ。俺はどうしようもない………………バカだ。

 

『いいのか…………腕は戻せんぞ?』

「あぁ。田中さんと右腕の交換で田中さんが救えるならそれでいい。」

『小僧……………。』

これでいいんだ。

小さい頃から誰かの役に立てればいいと思っている。

だってそれが……俺の……………

 

ガッンガガガ

壁をヒビがは入り始める

 

「もう時間がない!レウロ!やってくれっ!」

『まて、小僧。まだもうひとつ方法があるぞ。』

レウロは、意味ありげに言った。

「何だ?俺は腕で………」

『私は、あの黒い本をなんの代償も私と交換して消すことができる。しかし、もうひとつ………』

なにかを隠すようにレウロは話さなくなった

「何だ?」

 

『いや。何でもない。さぁ、交換しようか。あの黒い本を消すために…………』

少々、怪しいとは思ったがこの際迷っている暇はない。

 

「……涼……壁が……限界…。」

「涼!どうするんだ!?」

「壁か崩されたらお前らは田中さんの側面に回ってくれ。後は、俺が何とかする。」

 

壁の限界がすでに迫っている。

レウロを信じてもいいのか?

腕と交換した方が確実だ。

しかし、レウロは自分を犠牲にしようとしている。それに、あの声に嘘偽りはないと思う。

 

 

ーーーレウロを、信じよう。

 

『小僧。私をあの黒い本に向かって投げろ。できるな。』

「当たり前だ。」

 

 

グカンッッッ!!ガダガタッ!

壁か崩された。田中さんの意識は完全に乗っ取られてしまっているようだ。

 

「涼!!頼んだッ!」

紅月が右へ走っていく。

 

「………頑張れ。」

神無月が左へ走っていく。

 

「任せろっ!」

俺は真っ直ぐ田中さんに向かって走った。

 

「レウロ!行くぞ!」

左手を後ろに下げて強く前に向かって投げた。

 

『小僧。去らばだ。』

最後に響いた声は、どこか悲しげだった。

黒い本の手前まで飛んだレウロはとたんに止まって強い光を放った。

「うっ!」

続いて黒い本もそれに共鳴するように赤黒く光始める。

 

ビリビリッ!

電撃のようなものが辺りに散る。

 

バギュッ!

そのうちのひとつが俺のところに飛んできた。

そして体に吸い込まれるようにゆっくりと入っていった。

 

おかしな感覚に頭が朦朧とし始めた。

今意識を失ったら、どうなったかわからなくなる。

しかし俺は、自分の体から力が抜けて、目の前が真っ白になるのを待つことしかできなかった。

 

直前に見えたのは、倒れる田中さんと支えにいった神無月の姿だった。

体か妙な浮遊感に包まれ、聞こえたその声は紅月のものだった。

これで終わったのか?

俺はどうなったんだろう。

まぁ、田中さんが助かったなら、何でもいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




よかったね!!

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