記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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涼!!ガンバッ!


六話 助けるから(前編)

俺たちは、職員室の前についた。

「行くぞ!」

 

ガラガラッ!

 

職員室の中はグジャグジャだった。辺り一面に本が散らばっていた。

窓ガラスから入ってきている月の光の中に何かがいた。

 

「…………田中さん?」

 

「…………。」

沈黙が続き、カグヅチが「まずいですね」と言う。

 

「まずいって、どういうことだ………っ!」

バゴォォンッッッ!!

 

体が宙を舞って天井に近づいたかと思えば離れていった

バンッ!

強い衝撃が全身に響く

 

「うっ!」

床に頭を強く打ってしまった

 

「涼!大丈夫か!?」

「うっ、だっ、大丈夫だ。今のはいったい…………」

一瞬のことだったので何が起こったのか分からなかった

すると、カグヅチが

「近付いてはいけませんよ。」といった。

 

「…………」

「見ていてください。」

カグヅチは、そう言って真っ黒な田中さんに近づいていった

 

すると、田中さんは手をカグヅチに向けた。

「…………」

手のひらから出た黒い塊がカグヅチに向かって飛んでいく。

しかし、カグヅチはそれをかわした。

 

「見えましたね?」

「あぁ。みえた。」

紅月が答える

「俺もだ」

今のは何だろう。

 

「涼様。あなたは、お強いですね。威力が弱かったとはいえ……………」

カグヅチがこちらを見ずに言った。

「えっ?何でだ?」

「普通の人はあれに当たれば立つことはおろか、意識すら失ってしまうでしょう。わたくしですら………………近付いた………だけで………」

ボンッ!

カグヅチの姿が煙に隠れたかと思えば、煙が消えた場所にその姿は消えていた

 

「カグヅチ!?どこにいったんだ!?」

「違う………。悪気に当てられ容姿を保てなくなった………。元の世界に戻った。」

神無月は言った。

床には紙が一枚落ちていた。そこには『守護』と書かれていた。

 

 

「どうする?このままじゃ近づけないぞ?」

「仕方ない。避けて近付くしかないか」

「バカなことを言うな!避けられなかったら次は… ………」

 

紅月はほんとに優しい。いつでも話を聞いてくれて、俺の気持ちを察してくれる。

今だって、俺を止めようとする言葉を飲み込んでくれたんだ。

 

「ありがとな。紅月」

「なっ!なんだよ!何で今、礼を言うんだ!?」

「ん?いや、何となくだ。気にすんな。」

 

 

さてと、どうするか。

まず田中さんをここから連れ出さないと。

窓の外を見るとそこには広くて何もない運動場があった。

 

「神無月。田中さんを拘束して、運動場まで連れていけるか?」

 

「……任せろ………………。」

神無月はまた、紙に何かを書き始めた。

 

そして、紙を田中さんに向かって投げた。

その紙には『籠』と書かれていた

 

ボンッ!

また煙が出た。

煙が消えると田中さんは、大きな籠の中に入っていた。

 

「…………これでいいか?」

神無月は人差し指を運動場側に振った。

 

バゴォォンッッッ!

田中さんを入れた籠は、職員室の壁を突き破って運動場の中心で止まった。

 

「神無月?この壁どうすんの?ってか田中さん今の大丈夫か!?」

俺がいいかけた言葉を紅月が先に言ってくれた。

神無月は首をかしげた。

 

「壁は……後で…直そう…。」

「誰が?」

俺が聞くと神無月は俺と紅月を交互に指で指した。

「やっぱりか。田中さんを助けた後でやろうぜ。なっ?紅月?」

 

「あぁ!もう!分かったよ!!」

紅月は呆れた表情で言った。

 

 

そして、俺たちは運動場向かって走った。

月と星の光によって辺りは随分と明るく感じた。

しかし、今は景色を眺めている暇はない。

一刻も早く、田中さんを助けよう

 

 

そして運動場にでた。

「……………」

田中さんが籠に手を重ねるのが見えた。

 

ズカァァァァン

籠は粉々に砕け散った。

そして煙が出た。

予想通り。拘束できるのは一瞬だったようだ。

田中さんとの距離約100m

 

「神無月。あとは、俺たちに任せろ。」

「いくぞ!涼!」

俺たちは運動場の乾いた土の上を走った。

恐らく、田中さんに近づけば先程のように何かしらの攻撃を放つだろう。

 

当たらないようにする方法は二つ。

 

「来るぞっ!」

紅月が叫ぶ。

田中さんは、手をこちらに向けた。

 

まず、一つ目の方法

 

ーー来るっ!

バキュゥゥゥンッッッ!

俺の方に黒い塊が飛んできた。

俺はそれを避けた。

 

「ふぅ!あっぶね!」

残り70m

「大丈夫か!?次来るぞ!!」

 

そして、もう一つは

 

田中さんは、紅月に手を向ける。

 

バキュゥゥゥンッッッ!

紅月に向かって飛んでいく。

紅月は、赤い腕輪を飛んでくる黒い塊に向ける

 

バゴォォン!

紅月が黒い煙に包まれた。

紅月は煙の中から表れた

 

「へへっ!守ってやったぜ!俺の体を!」

そう。紅月は自分の体を守りたいという気持ちを力にして自らを守る防御壁を一瞬で造り出した。

これで紅月は田中さんに近づくことができる。

 

残り50m

しかし、俺は何度も綺麗に避けることは不可能に近い。

 

走りながら俺は三つ目の選択肢を考えた。

 

あれに当たると言うことは、死を意味する

どうしたものか。

田中さんは、再び手のひらをこちらに向けた。

 

「涼!来るぞ!!」

「あぁ!分かってる!!」

 

どうする!?俺!!

本を使うにしても、何を代償にすればいい!?

 

感情?

ダメだ。今は、自分を守ることより田中さんを守る事で頭がいっぱいだ。

 

25m

 

 

「一か八かっ!!」

 

20m

 

ーーレウロッ!頼む!!

俺は、目を瞑った

 

『代償はなんだ?』

頭のなかで声がした。あの時と同じ声だ

 

「校舎の壁だっ!!」

『いいだろう。』

そう聞こえた瞬間、背後から無数のコンクリートの欠片が飛んでくる。そして、俺の目の前に身長よりすこし大きな壁が構築された。

 

ズカァァァァンッッッ!

その壁に黒い塊がぶち当たる。

しかし、コンクリートの壁は崩れなかった

「よし!!」

 

10mのところで俺は立ち止まった。

 

『……小僧。あの時はすまなかった』

レウロは謝ってきた。

 

「あぁ。いいよ。使い方を知らなかった俺が悪かったんだからな。」

 

『そうか。』

 

「次来るぞ!」

紅月が注意を呼び掛けてきた。

 

「仲田くん…………?」

「っ!」

田中さんはまた喋り始めた。

意識を取りもとしたのか!?

いや、黒い本を持っているのだからまだだめだ!!

 

「逃げ…………て」

「嫌だ。」

田中さんが向けた手に黒く大きな塊か現れる。

これに当たれば、コンクリートの壁でも崩れてしまう。

かといって避けられるような大きさでもない。

 

 

「田中さん!!」

「…………」

もう、聞こえてないかもしれない。

あるいはもう戻ってこないかもしれない

 

 

 

そんなことない。

 

 

 

俺は…………君を

「絶対……………助けるから」

拳を強く握った。

雫が頬を伝って地面に黒いシミを作っていた

 

『…………小僧。』

レウロは語りかける。

『あの子を救うと言うことは…………』

 

「ああ!分かってるさ!!でも!!」

言葉が続かない。

言いたいのに……………形にならない。

 

バキュゥゥゥンッッッ!

目の前から巨大な黒い塊が飛んできた

ゆっくり見えるのはなぜだろう。

涙か止まらないのはなぜだろう。

彼女を救えない俺はなんだろう。

 

バゴォォンッッッ!!!

「っ……………!!」

 

 

黒い塊は、俺に直撃した。

 

また、こうやって俺は彼女を救えない?

あれ?またって?

この前もこんなことあったような気がする。

いつだったかな?

あの時は確か………………ダメだ。思いだせない。

 

「涼!!しっかりしろ!!」

紅月の声が聞こえるがなにも見えない。

 

真っ暗だ。

 

 

 

 

頭のなかで何かの映像が流れ始める。

 

あっ、沼田だ。

そういえばあらは、かつらだったのかな?

 

あっ、神無月に紅月。

洸も居るな。

 

俺の記憶か?

違う。走馬灯だ。

 




どうなる。涼。紅月。神無月。
洸の出番少ねぇ!!

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