記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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希望がある!


五話 本の秘密

「あの子は………。田中さんは………まだ。死んでない。」

 

「…………。」

俺は、ベットから下りて立ち上がった。

まだ死んでないなら。希望はある!

時計に目を向ける。

 

 

「速くいこう」

「何が起きても俺は、助けねぇぞ!また、閉め出されたら…………」

紅月は目線を下に向ける。

「………分かってる。俺は、一人で行く。助けは要らない」

そうだ。紅月には関係が無いことなんだ。これは、俺の問題だ。

もう、誰の助けも借りない。

歩き出そうとするが、貫くような痛みが頭がに走る。「うっ!」

「おっ、おい!大丈夫かよ?」

「………あぁ。大丈夫だ。」

「ニャオーン。」

猫が目でこちらを見つめていた。

まるで、「待て」と言うように。

 

 

「なんだよ。」

「にゃ。」

 

「お前。喋れるんだろ?何が言いたいんだ?」

と俺は言った。すると猫は

「あの本で救えるにゃ。でも代償は、大きいにゃ。」

代償?

………そうか。あの時は代償が彼女になったんだ。だから殺してしまいそうになった。でも彼女は、まだ生きている………。

もしかすると、彼女は体を完全に乗っ取られる代わりに命を保つことを選んだのかもしれない。

田中さんにメリットは無い。黒い本は、等価交換なんかしてないんだ。

 

「なにかを支払えば、なにかを得られるってことか?」

「そうなるにゃ。でも…………」

猫は顔を下に向けた。

 

「でも?」

「あの子の体を乗っ取っているあいつが厄介にゃ。」

「………あの本か。」

あの黒い本。田中さんを助ける=田中さんを殺す

ということになってしまうんだ。

 

その時、チャイムが鳴り響いた

時計の針は、すでに7時をさしていた

 

「どうするんだ?涼」

紅月が問いかけてきた

どうするかなんて聞かれても………。

でもひとつだけ助ける方法がある。

 

「紅月。神無月。やっぱり手伝ってくれ。頼む」

俺は、頭を下げた。

 

「……分かった…………」

神無月は、すぐに答えてくれた。

 

「あぁ!もう!分かったよ!!行けばいいんだろ!?」

荒く紅月は言った。

 

「そうか。いくんにゃか。黒い本は今、職員室にいるにゃ。我輩もあとでいくにゃ。」

猫はうずくまって目を閉じた。

猫のからだをよく見ると傷がいくつかあった。蹴られたときに何処かで切ったのだろう。

 

「やっぱり、本を使うのか?」

「あぁ。一度屋上に取りに行こう。」

 

 

 

ガラガラ

ドアを開いて廊下を走り、階段を上がる。

7時ということもあり辺りは暗くなっていて学校のなかには誰もいないようだ

 

ギイィィィ

屋上のドアを開くとフェンスの向こうは、すっかり夜になっていた。とても大きな月が輝いていた。

そして、その輝きに照らされて白い本が置いてある。

 

「………。」

本を手に取ると夜の冷気のせいか、それとも人の命を奪いそうになったからか、すこし冷たかった。

 

「…………涼………行こう。」

神無月に言われて急がないといけないことを思い出す。

 

「あぁ。そうだな。」

「それにしても、涼。お前は、あの子をどうやって…………何を代償にして助けるつもりだ?」

俺の頭のなかには一つの仮説が姿を露にしていた。

 

「お前が腕輪を使うとき何を代償に…………いや、何を力にした?」

 

「…………あのときは、お前を助けたいって………っ、まさか!」

紅月も気付いたようだ。

そう、紅月の腕輪も白い本と黒い本と同様のものだ。

つまり、代償は無限にあるものからも使うことができる。

答えは

「感情だ。」

あの猫はこれを知っていて紅月に俺を助けたいと思えと言ったんだろう。

 

なら俺も、田中さんを助けたいと思えば…………

 

「…私は……何をすればいい……」

俺と紅月の話についてこれていない神無月が問いかけてきた

 

「カンナは、親が陰陽師だったよな。」

そう。紅月の言う通り神無月の親は陰陽師だ。

ならば何かしら持ってきているはず。

 

「何か持ってきてないか?」

俺が言うと神無月は、ポケットを探り始めた。

 

「………これ…くらい…」

神無月は、スマホとイヤホンと何枚かの紙とペンを取り出した。

 

「以外と現代のものばっかだな…………。」

「涼。これ使えるのか?」

「う~ん。」

スマホとイヤホンと紙とペンか。

…………思いつかん

 

「……これ……使えるぞ…」

そう言って神無月は、ペンで紙に何かを書いて夜空に向かって投げた

 

「……我に………遣えよ…」

ボンッ!

 

「うっ!何だ!?」

紙が落ちてくるはずの場所には一人の男がたっていた

容姿は昔の陰陽師といったところだ

 

「式紙か!?」

これは、凄いぞ!神無月恐るべし

「式紙ではありませぬ。私は神無月様に遣える身であります。カグヅチと申します。以後、お見知りおきを 」

カグヅチは、言い終わると頭を下げた。

 

 

「……どうだ?…使える?……」

こいつ…………侮れない。

 

「この人は、使えるな!」

紅月もすこし驚いて口を開いた。

 

「神無月様に遣えているのは私だけではありません」

「……他にも……出そうか?……」

「いや。他のは人は田中さんの所で危なくなったらにしてくれ。」

 

「………了解した…」

「さてと、涼。」

「あぁ。行くか。」

俺たちは、屋上をあとにした。

 

 

 




さぁ!決戦のときだ!!

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