記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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タイトルが可笑しいね。(泣)


三話 ごめん

「にゃー!にゃー!!」

視界が開けると目の前には、灰色の猫がいた。

しかし、意識はあるが体が動かない。

コト………コト

突然足音がしたので回りにだれがいるのか誰がいるのか確認しようとしたが、顔が動くはずもなく、すこし目が動いただけだった。

「にゃー!!」

猫は、怯えた表情でドアの方を見ていた。俺には何が起こっているのか全くわからなかった。

その時

バシンッ!

猫を誰かの足が蹴り飛ばし、猫は壁にぶつかって動かなくなった。

そして、ガラガラとドアを開けて出ていった。

 

 

「にゃ……。」

それでも猫は、何かを伝えようとしていた。

たが、それは人間に分かることではない。そう。俺に分かることじゃないんだ。

 

 

ごめんな………ごめんな……。

それでも体は………

 

『立てよ……。小僧……』

自分の意識とは別に違う誰かの声が頭の中で響いた。

 

『もう、何かが消えるのを見たくないだろう?立て』

 

駄目なんだ………だって、動かないんだよ。

 

『俺の力を貸そう。』

その瞬間、右手から体に暖かい何かが流れ込んできた。

誰がこの力をくれたのかすぐに分かった。

 

 

「んっ………。」

『…………。』

 

 

俺の体は動き始めた。

「たっ、立てた!」

『あとは………。』

 

レウロの書の声はしなくなった。

 

俺は、すぐに猫の所に駆け寄った。

「大丈夫か!?」

「にゃ、にゃあん。」

猫は、小さく鳴いた

「よかった生きてる。田中さんは………いない。」

 

その時だった。

ガラガラ

ドアが開かれた。

そして、入ってきたのは……

 

「んっ、涼?何してんだ?」

「紅月か。いいとこにきた!この猫を何とかしてやれないか?」

赤い眼鏡をかけて、ポケットに手を突っ込み職員室に堂々と入ってきた紅月 蓮(あかつき れん)だった。

 

「あっ?猫?なんとかって、何だよ!」

「頼んだぞ!こいつの命はお前に掛かってるからな!」

「おっ、おう!なんかしんねぇけど、まかせろ!」

紅月は、猫を抱き抱えて保健室へつれていった。

 

「俺には、まだすることがあるからな………。」

俺は、屋上に向かった。何となくここに田中さんがいる気がした。

 

最後の階段を上がってドアを開くとフェンスの向こうには、青く澄み渡る空が広がっていた。そしてフェンスの手前に両手が黒くなった田中さんが立っていた。侵食が進んでいるのか

「………田中さん。」

呼びかれると彼女は振り向いた。が、彼女の目は真っ赤になっていて、まるで悪魔のようだった。

 

「誰だ。田中さんじゃないな。」

「………フッ!」

田中さんは…………俺を見て嘲笑した。

風が頬を伝いどこかへ消えていく。

 

「バカだよな………俺。」

俺が俯き言うと田中さんは、本を開いた。

その時だった。

「涼!!伏せろ!!」

開け放たれていたドアから紅月が現れた。

言われるがままに俺はコンクリートの地面に伏せた。

 

その時頭上で赤い閃光が放たれた。

バーァァァァン

「うっ!」

頭を上げると、田中さんの方角から放たれたであろう黒い槍がが厚く透明な壁に遮られていた。

 

「涼。大丈夫か?もう大丈夫だぞ。」

「大丈夫って………お前は……いったいなんなんだよ!」

紅月の右手には赤く煌めく腕輪が付けられていた。

 

「………選ばれた。」

選ばれた?何にだ?もう、何も分からない。考えたくない。考えても分からないんだから…………

 

「あの猫が、お前を助けろってさ。これをつけてな。」

そう言って、紅月のは腕を天に向けた。

「猫が………やっぱり、普通の猫じゃなかったのか。ってかしゃべったんだな。」

 

「そうだ。でも、驚いたぞ。これがこんな力を持ってるなんてな。」

「知らずに来たのか!?」

「ん?いや、なんかあの猫なお前を助けたいって強く思えっていってきてな。屋上にきて、あの女の子にお前がにらまれてるのを見て、ついな。」

 

あの猫は、いったい何者だ?田中さんがああなることを知っていたのか?だから逃げろと?

 

「…………逃げるわけねぇだろ。」

「ん?何か言ったか?」

「いや。」

パリィィィン

ガラスが割れたような音が辺りに響き渡る。それは、紅月の力の終わりを示していた。

 

「ヤバイな。逃げるぞ!涼!」

紅月は俺の手を引いた

「………。」

嫌だ……いま、逃げたらダメなんだ………

俺は紅月が掴んできた手を振り払う

 

「おっ、おい!何やってんだよ!逃げないと死ぬぞ!」

何で?俺が田中さんに殺されると思う?まだ田中さんは、もとに戻せるかもしれないのに。

疑問ばかりが頭の中で回り出す。

 

「紅月………ありがとうな。でも………」

俺は紅月を開いていたドアの方へ押し飛ばしてドアを閉じて鍵を掛けた。

 

ドンドンッ!

ドアの向こうから「おい!涼!」と言ってドアを叩く紅月の声が聞こえる。

 

「ごめん。これは、紅月には関係ない。」

そう言って俺はドアから離れた。

 

「………。」

田中さんは、今も赤く恐ろしい目付きでこちらを睨み付けていた。

 

「田中さん………。」

俺が何かをしてあげられるのだろうか。レウロの書を強く握って願う。

しかし、願いも届かない間に思いもよらない出来事が起こった。

 

「仲田く………ん?」

「………っ!!」

田中さんが今確かに俺の名前を呼んだ。

そして、一歩。また、一歩と近付いてくる。

 

「田中さん?」

しかし、名前を呼ぶと田中さんは、右目を押さえてうずくまってしまった。

「……仲田くんっ!逃げてっ!っ!!」

「…………。」

田中さんも逃げてって言うんだ………。もう、良いだろ?じゅうぶん頑張った。そう心のなかで思いたかった。

しかし、俺は、田中さんになにもしていない。してあげられない。

 

「もう…………逃げたくないんだ。」

俺は、自分でも何をいっているのか分からなくなっていた。まるで何かに呑み込まれるように………




さぁ、どうなるでしょうか?

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