記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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十一話 白の憑依と紅の防具

「なぁ、涼。もう、止めとけ。」

「うるせぇよ!!早くその能力を解除しやがれっ!!!」

田中さんは血を吐くことすらしなくなった。

 

「このっ!」

紅月が作り出した壁はいったい、何を代償にしているんだろうか。自分を守りたいと言う思いを使っているのだろうか…………

 

ガツンっ!!

俺はさっきからずっと、壁を殴っている。

右肩がまた痛み出した。

やはり、さっき飲まされたのは効力の高い鎮痛剤。もう、その効果は切れきけている

 

「お前の力じゃ、この壁は壊れねぇよ。」

ガツンっ!ガッ!バンッ!

 

「俺の力で無理ならっ!!」

俺は大きく後ろへ後退してしゃがむ。

そこに落ちていたものを取るためだ。

 

「ふん。神無月がお前に渡した剣か……………そんなもの………」

 

シュッ……………パリィィンッ!!

 

「何っ!?」

「……………。」

この剣なら紅月の壁を壊せるんじゃないかと思っていた。なぜなら……………

 

「お前っ!さっきはあの子の攻撃をさばくことしか…………っ!!」

「あぁ、そうだ。田中さんの爪はな………」

 

綺麗に斬られたコンクリートを見る。

あれは、田中さんが爪で一刀両断したものだ。

それを受け止めるほどの力があると言うことだ。

それに俺は、あの剣を使うとき力をあまり入れていない。

つまり、この剣を力を入れて使えば紅月の防御壁は簡単に斬れる

 

「そうか。でもな………涼。」

「何だよ。お前を守る壁はもう……………っ!?」

紅月の腕輪が紅く点滅する。これが何を意味しているのかは容易に分かった。

ズガガガンッッ!!!

紅月と俺の間が物凄く分厚い壁で遮られる。

 

「おいっ!紅月!!!」

この壁は薄いものがいくつも重なって出来ている。

もう、声は届かない。

 

「これじゃあ、一枚一枚斬っていくしか……………」

「涼様。助けたいのであればお急ぎください。このかたは、もう………………」

 

いつの間にか、カグヅチは、田中さんを地面に寝かせていた。

「分かってる!!けど……………これじゃあどうすることも………」

 

『おい。小僧。』

「何だよレウロ……………」

「レウロ?何を言ってらっしゃるんですか?涼様?」

カグヅチが心配そうにこちらをみてくる。

 

「いや、カグヅチは気にしないでくれ。」

「そ、そうですか。なんにせよ、お急ぎくださいね。」

俺はカグヅチから目を離して紅い壁を見つめる。

 

紅月がこの中で再び田中さんに殺意を抱いてしまえば田中さんの命は………………

 

『また、あの小娘か。』

「あぁ、そうだ。」

俺は田中さんに目を向ける

今も、黒くて田中さんと判別は出来ていない。けど、あの水色の髪止めは田中さんのものだ。

 

『ふん。とにかく、この小娘を殺す以外の方法で助けたいんだな……………例えば、あの小娘から黒い本の侵食を切り離す………とかだろう?』

 

「あぁ、そうだ。」

 

『それで?こっちの赤髪の小僧はどうしたい?』

 

「紅月が田中さんを殺そうとしている………だから、止めたい」

 

『そうか。ならば………等価交換だな。』

「あぁ。分かってる。なにと交換だ?」

『まずは、私を何かに憑依させてくれ。』

「憑依?何かに乗り移らせろってことか?」

『あぁ。そうだ。それを終わらせたらすぐにあの小娘に着いている紅い物を消滅させてやる。』

 

俺はすぐに辺りを見渡した。近くにあるのは………剣、紅く分厚い壁、コンクリート、時計………………剣に憑依させてやるか。

 

「剣でいいか?」

『ふん。まぁ、この剣ならば良いだろう。交換だ。』

その瞬間に俺の体が白い閃光を放ち始めた。

この光は一点に集まり、剣に飛び込んでいった。

 

『これで。小僧の能力は消えたはずだ。』

 

俺はすぐに寝ている田中さんの方を見詰めた。

さっきよりは苦しんでいないようだ。

 

「レウロ。ありがとう。」

『礼を言うのはまだ早い。見てみろ。』

「えっ!?」

 

紅月の作り出していた壁が徐々に縮まっていく。

最後に壁は粉々に崩れて消えた。

そして、紅月がいた場所には紅い鎧を身に纏った青年がたっていた。

 

「お前………誰……だ?」

「何を言うかと思えば。俺はお前の親友だ。いや、親友だったのほうが正しいか。」

その青年は、声も姿も大きく変わっていた…………だけど俺にはわかった………

 

……………その青年は紅月だ。


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