記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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九話 咲き乱れ

「コワスッ!」

 

「っ!や、止めるんだ!」

スガンッ!

 

俺は田中さんの攻撃を避けた。

コンクリートの壁が田中さんの爪で一刀両断された。

 

「ヨケルナッ!!」

いや!避けるなと言われても!!

 

シュッ!シュッ!シュッ!

とうとう田中さんは乱れ斬りを仕掛けてきた。

 

「おっと!」

最後の一発に当たりそうになったが、間一髪のところで避けられた。しかし、足がもつれて無惨にも倒れてしまった。

 

「オワリダッ!!」

「ッ!!」

 

シュッ!

カキィィンッ!!

田中さんが左手で攻撃してくる、しかし、神無月からもらった剣で受け止める。

 

「ウケトメルナッ!!」

シャッ!!

田中さんは、右手で攻撃してきた。

ピカンッ!!

しかし、それも腕輪の力で受け止められる。

しかし、それでも田中さんは爪を突き立て、全力で押してくる。

ジジジジッッッ!

と、光のようなもので出来た壁のようなものは、次第に破れ始める。もう!限界だ!

 

 

パリィィンッッッ!!!!

壁のようなものは、甲高い音を放ちながら粉々に消えてしまった。エルさんのくれた腕輪の効果が消えてしまったのだろう。

 

「ぐあっ!!」

右肩に田名さんの鋭い爪が深々と突き刺さった。

服に自分の血が染み渡っていく。

 

「…………フッ」

っ!?田中さん!いったい何をする気なんだ!!

 

グシャッッ!!!!

田中さんは、手を上へスライドさせていく。

「うわぁぁっっ!」

 

右肩が少しずつ引き裂かれていく。血が吹き出して、上へ飛んだが重力で自分の体へ落ちてきた。

これ以上やられたら右肩が…………

 

バギィッ!!バシュンッ!!!

 

「うわぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

田中さんの爪は俺の肩を骨ごと引き裂いた。

激痛。

俺は床を転げ回る。

 

「うわぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」

 

田中さんは一度後ろへと後退した。

俺はこのままでは、田中さんに殺されてしまう。

俺は…………死ぬのか?

 

何回死にかけになるんだよ。俺は………

いや、今回は本当に死んじゃうな。

出血も酷い。大体、俺はただの人間だぞ?能力なんて持ってないのに、こんな姿の……………黒い本に操られた田中さんに勝てるわけがない。

いや、もとから勝てる何て思ってなかった。そうだ。俺の役目は、時間稼ぎだ。

 

「役目………果たしたぞ…………」

『ククク。よくやったな小娘。さぁ!止めを刺して、そいつの血を飲むんだ!!』

フロワに響く黒い本の声。

………俺の血なんて、飲んでも意味がないのに…………

ゆっくりと、田中さんが近付いてくる。

コト………コト………コト………コト………コト………コト

足音が廊下に響き渡る。

 

『ククク。残念だったな小僧。ジ・エンドだ。』

「待てっ!」

誰だろうか………この声は…………紅月?

 

「マタ………フエタ………」

「おい!涼!無事か!?」

この状況をみても分からないのかアイツは…………

 

「ぐっっ!」

肩とてつもなく痛む。俺が右肩を押さえて苦しんでいると、田中さんは再び歩みを進める。

これはダメなやつだ。死んじまう。

 

「コワスッ!!!!」

田中さんは大きく右手を振り上げる。

俺は強く目を瞑った。

カキィィンッッ!!!

 

………………?

目を開くと紅月が俺を田中さんから守ってくれていた。

 

「涼をっ!!殺させないっ!!」

紅月の腕輪は、今までみたこともないほど紅く煌めいている。

 

「ナンデッ………カンツウシナイッ!?」

『おやおや、また妙なヤツが来たな。まぁ、所詮塵が集まってもただの塵だ。弱いことに代わりはないだろう。』

「お前はっ!そんな俺たちに負けるっ!単細胞だっ!」

『ふん。精々、わめいているがいい。』

「紅…月……作戦は…ある……のか…?ゴポッ……」

まだ話したいことがあったが、口から血を吐いてしまい話すことができなかった。

 

「ある!取って置きのやつを考えてきた!!」

紅月がそう言い放った瞬間に田中さんの背後に何かが現れた。あの影は……………

 

「この戦法は好ましくないんですがね。」

「グッ!?」

カグヅチが田中さんを背後から羽交い締めにした。

 

「っ!!暴れないでくださいよっ!」

カグヅチは、暴れる田中さんを必死に押さえつけていた。

 

「ハナセッ!ハナセェッ!!」

「ダメです!さぁ!紅月様、始めてください!」

「おう!まかせろ!」

いったい何が始まるんだろうか……………どちらにせよ俺は動くことは愚か、立つことも______

 

「さぁ、涼。立つんだ。」

鬼か。

「いや…………無…理だっ……て。」

「あぁ、そうか。肩がめちゃくちゃだもんな。オーイ!神無月!!」

紅月は神無月の名前を叫んだが、いっこうに現れない。

 

「ハナセッ!」

「ダメですっ!」

『こいつら………いったい何がしたいんだ………』

その時だった。

パリンッ!!

窓ガラスが割れて何かが紅月に飛んできた。

視界から外れているのであまりよく見えないが、紅月はそれをキャッチしたようだ。

 

「さて。涼、これを飲め。」

紅月は俺に赤いカプセルのようなものを差し出してきた。

俺は訳のわからぬまま口を開くと、紅月はそれを俺の口のなかに投げ入れた。

 

「ゴクッ……………」

「どうだ?」

……………飲んですぐに聞かれてもな。

「すぐに効果が出る分けねぇだろ。っ!あれ!?」

喋れる!滑舌もすごくいい!

「すごいなこれ!」

「神無月からのだからな。あとで礼を言っとけ。」

「分かってるって。っ!!!いてててっ!!」

肩はまだすごく痛い。

当たり前か、骨が丸見えになってるし、折れた骨が色々なところに突き刺さってる。

こんなに血が出てるのに、よく死ななかったな。

床を見ると辺り一面が真っ赤に濡れていた。

 

「急いでください!この人ものすごい力です!」

「ググググッ!!」

「そうだな。涼、これからお前にしてもらうことがある。」

「え?」

俺は立ち上がりながら紅月の作戦を聞かされることになった。


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