記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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※今回は紅月視点です。


八話 予想

「さて、どうする?」

「……………。」

「あの黒い本は、ほぼ完全に田中さんの体を侵食しているはずだ。」

「………助けられないのか?」

「それは、俺にも分からない。」

 

神無月は涼が入っていった崩れた校舎を見つめている。

「うぐっ!!」

「先生!大丈夫ですか!?やっぱり救急車を!」

一度救急車を呼ぼうとしたのだが、先生はそれを拒んだ。

 

「大丈夫だ。それより二人は…………」

「涼は田中さんの所へ行きました。」

「そうか…………。」

「紅月。これを…………」

いつの間にか神無月は手に粉薬を持っていた。

「俺は水を持ってないぞ?」

「腕輪使って…………。」

 

は?腕輪?これは守るためのもので、液体にはできないはずなんだが。

 

「どうやって?」

「…………粉薬を包んで。」

あぁ、そうか。

粉薬をを腕輪の能力で包んで先生に飲んでもらって、胃まで届いたら能力を解くってことか。

 

俺は神無月が紙の上にのせている薬に能力を使った。

粉薬を俺の作った赤いカプセル状のもので包んだ。

 

神無月は先生にそれを飲んでもらった。

「………ゴクッ。」

「5,4,3,2,1。紅月、もう良いよ。」

「え、あ。分かった。」

俺は能力を解いた。

そこそこ能力を使うのにも馴れたな。

 

「すまんな。あの子を救えなくて、さらにはこんなにズタボロなんて。情けない。」

「いえ!それは違います!先生は僕たちが来るまでずっと耐え抜いてくれました!」

「そうか……………。」

 

ズガンッッ!!!

校舎の恐らく教室と思われる部分から煙が上がった。

田中さんが暴れているのだろうか。

 

「何とかしないとな。そうだ。神無月、お前の式紙で涼を援護できないか?」

「…………出来る。」

そう言うと、神無月は紙を取り出してペンで『神』と書いた。

ボフッ!と煙が上がり、見たことのあるヤツが現れた。

 

「あ!お前!」

「おやおや、神無月様。また、私を召喚するとは、余程重要なことなんでしょうね。」

「……………あたりまえ。」

「先月のようにお風呂掃除などはもうしませんからね?」

「カグヅチ………涼を守ってこい。」

神無月は式紙を使って炊事をやらせていたのか。

 

俺にも一人欲しいな。

いや、俺にもメイドやら、執事やらがいるんだがな。

 

「承知しました。それでは行って参ります。」

カグヅチは俺が瞬きをした瞬間にどこかへ消えていた。

恐らく、校舎へ向かったのだろう。

 

「…………あの子をどうやって救う?」

「そうだな………それが問題だな」

前は、涼を白い本を黒い本に投げて消滅させたが。

今回は本がない。

黒い本は田中さんに侵食して同化しているし。

侵食か………

 

 

「っ!!」

「…………どうかした?」

「神無月。思い出してくれ。」

「…………何を?」

「黒い本は田中さんに侵食した。」

「…………うん。」

「じゃあ、白い本は?」

俺がそこまで言うと、神無月は「………そうか。」と言った。俺の言いたいことがわかったのだろう。

 

「そうだ。つまり、白い本は涼にも侵食しようとしたはずだ。その時に、涼の体にも少しでも、侵食したなら………?」

「…………………………………成長をして体を侵食しているはず。」

「当たり。」

神無月は何をすれば良いかわかったようで、俺よりも先に立ち上がった。

「待ってくれ。神無月はここで先生を見ていてくれ。」

「うん………分かった。」

神無月は式紙を使ってこちらの様子を見ることが出来るし、遠くからでも、援護できるはずだ。なら、神無月の役目は先生を見ながら、こちらの援護をすることだ。

 

「待て、蓮。」

俺が崩れた校舎に向かおうとした時、先生に呼び止められた。

「何ですか?」

「死ぬなよ………生徒が死んじまったら、俺は保護者に会わせる顔がない。それに、お前は…………」

「分かってます。大丈夫ですよ。すぐに、涼と田中さんをここにつれてきますから。」

先生。頼むから俺に死亡フラグを立てないでくれ。

フラグ回収したら、シャレにならん。

 

俺は半泣きになりながら崩れた校舎へ向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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