なにも書いてないことの方が多いですね………あはは。
ドガッ!!
「くっ…………!」
「先生!!」
遅かった………。
俺達が学校に着いたときには、校舎はほぼ大破していた。
そして、一色先生も傷だらけになっている。
吹き飛ばされた先生は、よろよろと立ち上がる。
「大丈夫ですか!?」
紅月が先生に駆けよって肩を貸した。
「あれは、いったい………」
先生がそう呟いた瞬間に崩れた校舎の中から黒い何かが現れた。
「…………。」
黒いあれは…………田中さんだろう………
赤い目に、黒い体。鋭い爪。
しかし、田中さんと判断できる部分が一つだけあった。
「………田中さん」
頭部に………水色の髪止めがあったんだ。
「っ!?涼!何て言ったんだ!?」
一色先生は、俺に驚いた表情で問い掛けてきた。
「あれは………田中さんです。」
無理もないだろう…………だって先生は自分の学校の生徒と死闘を繰り広げていたんだから
正直、今の田中さんの姿は侵食から助けたと思っていた時よりも酷い。遠くてよく見えないが、爪が鋭すぎる。まるで刀のようだ。
「あの爪で斬られると不味いな。」
紅月は、一色先生を座らせたあとで腕輪をつけ直した。
「紅月。お前はここで一色先生を守ってくれ。」
「え!?あ、わ、分かった!任せろ!!」
紅月は、すこし戸惑ったようだったが、先生を守るという大事な役割だと理解したようだ。
「神無月も、紅月と一緒にいてくれ。それと、俺の事を援護してくれる式紙がいたら出してくれないか。」
「いいけど………今の涼はなにもできないんじゃないか?」
「……………。」
確かにそうだ。
俺にはなにもできないな。
何を考えてたんだ………俺は………。
俺は………あの本がないと………援護がないと、なにもできない役立たずじゃないか。
「やっぱり…………何も考えてなかったのか。」
「すまない………」
俺が言い終わらないうちに、神無月はポケットから紙を取り出した。
そして、ペンで『刀』と書いた。
ボンッ!!
紙が白い煙に包まれる。
そして現れたのは刀だった。
「これ…………使いなよ。」
その剣を俺に渡してくれた。
結構重い………
「あ、ありがとうな。」
「でも………それは攻撃用じゃなくて………防御用だからな………涼が時間を稼いでる間に、こっちでどうするか考える………それまで……耐えろ……」
何て無茶な作戦なんだよ。
でも、俺は田中さんを助けないといけない。
だから_____
「_______全部俺に任せとけ!」
俺は親指を立てて笑顔でそういった。
そして、みんなに背を向けて田中さんのいる崩れた校舎へ向かった。
☆
「田中さん…………」
「…………。」
田中さんの意識は完全に飛んでしまっているようだ。
あのときとは違って、問いかけても返事が返って来るはずがないか…………
「………………涼?」
え?今、俺の名前を呼んだのか!?
それに!目から赤い色素が抜けかけている。
田中さんにまだ意識はある!!
しかし、それは限りなくゼロに近いようだ。
「ぐっ………ワカラナイ……アタマイタイ…………」
突如頭を押さえてなにかを呟いている。
「田中さん!俺だ!仲田 涼だ!!」
「ワカラナイノハイヤダ……………ワカラナイモノハ………」
『コワセ…………』
辺りにあきらかに田中さんの声ではないなにかの声が響いた。
「そうか。この声は……………」
「ぐっ………………コワス?コワス………………」
不味い!田中さんの目に、赤い色が戻ってきた。
「コワスッッッ!!!!!」
ダッ!と地面を蹴って俺に飛びかかろうとして来る。
「くっ!」
瞬時に俺は左に避けた。
グシャッ!トピュッ!!
しかし、手が付いてこれなかったために腕を田中さんの爪が掠めてしまった。
あと、コンマ一秒でも遅れてたら…………
そう考えただけで気分が悪くなった。
『ククク。』
………こいつ、どこから俺達を見てるんだ?
『壊せなかったら、死ぬことになるぞ?いいのか?』
「シヌ………イヤダ……ダカラ……………コワスッ!!」
再び、俺に向かって来た。
咄嗟に俺は、刀を抜いて爪を弾き返した。
カキィンッッ!!
コンクリートの壁に反射した金属音が耳に伝わってくる。
「ここは、ひとまず!!」
俺は田中さんに背を向けて階段を駆け上った。
「マ…テ…………!」
そして、案の定田中さんは俺を追いかけてきた。
よし。このままついてきてくれよ?
五階についた。
教室はほとんど大破していて、青い空が丸見えだった。
「ドコダッ………!!」
「くっ、もう追い付かれたか。」
俺は咄嗟に、トイレに逃げ込んだ。
ズガッ!ズガッ!
田中さんは俺を探して教室へ入ったようだ。中のものをひたすら壊しているのだろう…………
「さて………どうするか………。」
田中さんを助ける方法…………殺したくない
『矛盾したことを言ってるな………』
「っ!!」
また響く声。この声は人の声ではない。
恐らく…………
「黒い本か………?」
『ククク。さぁな。』
この声………どこから聞こえるんだ?
「おい!お前はなんで田中さんを侵食したんだ!!」
『ククク………俺は所詮ただの本にすぎない…………つまり、俺を受け入れられるぐらいの器が必要なんだ…………ククク』
「器……?」
『そうだ。あの小娘は非常に良い器だ………だから侵食したのさ……どうだ?お前の小さな脳は理解したか?』
「………………。」
こいつ…………………絶対に…………
「おい………黒い本………」
『何だ?命乞いしてあの小娘にお前を見つけ出すのをやめさせてもらいた…………』
「お前をっ!!殺しにいくから待ってろ!!!」
俺はトイレから廊下へ出た。
『何をバカなことをいっているんだ?俺を殺せば、あの小娘も死ぬんだぞ?』
「……………………。」
ズガンッッ!!!
「ドコニイル………………!!!!」
田中さんはまだ教室を壊しているのか…………
「田中さんっ!!!俺は、ここだっ!!」
俺が廊下で叫ぶ。
田中さんに聞こえただろうか……………
「……………。」
バゴンッッ!!
突如、教室から煙が上がり、その煙の中から田中さんが現れた。
「イタ……………コワス…………」
「……………。」
ダッ!!
田中さんは俺に突っ込んでくる。
俺は左手を田中さんへ向ける。
ガギンッッッ!!!
田中さんの爪は俺に届かなかった。
何故なら、俺の左腕についている紅い腕輪はエルさんから貰ったもの………………さらにそれはエルさんの血でできているものだ。
つまり……………
ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!
「ナンデ……………ッ?」
神の血で作られたこの腕輪は、田中さんにも………誰にも触れることさえできない。俺以外にはな。
「これで、時間を稼げるっ!!」
俺は、田中さんに手を向けながら、そう確信したのだった。
さて!涼くんの時間稼ぎか始まりました!!!
時間稼ぎと言えば、僕も小学五年生の時に悪さをして、大人の足止めに使われましたね~。いやぁ、良い思い出ですね。
まぁ、結局のところ全員捕まって叱られました。
先生に怒られ、親に怒られ、友達にバカにされ…………なんとも言えない状況でした。
それでは!次もよろしくです!