俺たちは光の辺り始めた道路を走っていた。
「なぁ、紅月………聞きたいことがある」
「なんだ?」
さっきからずっと考えていた。
あのメール…………
「俺の携帯に蒼月からメールが来てたんだけどな。」
「あぁ、それがどうかしたか?あのメールは俺が送らせたんだ。」
紅月が蒼月に送らせた?
「いや、あのメールにな、早く逃げろ。ヤツらがそっちに向かってるって書いてたんだ…………。」
電柱のある分かれ道を左に曲がる。
「それがどうかしたか?」
「おかしくないか………?だって、俺の家に来たのは………」
俺がそこまで言うと紅月も俺の言いたいことが分かったらしく、「確かにおかしいな………」と呟いた。
「だろ?ヤツらってことは、他にも誰かが家に来てたってことだ。」
少なくとも、田中さんと一緒にいたのだろう。
もしくは、別行動をしているなにかが俺のことを狙ってると言うことだ。
「俺は、蒼月に病室で看護婦を殺して逃走した田中さんが恐らく涼のことを殺しにいっただろう、と思ったからメールで送ってくれと頼んだんだ。なのにどうして…………」
紅月もよくは分からないようだ。
あの精密な蒼月がこんなことを間違うわけがない。
しかし、どうして蒼月が田中さん以外の存在に気づけたのだろうか………。
赤い屋根の倉庫を右に曲がった。
「…………あ、そうだ。お前にはまだ話してなかったな。」
紅月はなにかを思い出したかのように話始めた。
「蒼月は、基本は俺の携帯かゲームの中にいるけどな………」
「あぁ、それは知ってる。それで?」
「あのな、蒼月はいろんな機械やソフトに入ることもできるんだ。」
紅月は「どうだ?驚いただろ?」という表情をしながら言った。
「あ!そう言うことか!」
走っている途中に見掛けた監視カメラのことを思い出して、ようやくどういうことか分かった。
「そうだ。蒼月なら、この町全体の監視カメラに入り込んで外を監視できるんだ。なら、田中さんのことを発見して、その時を田中さんと一緒にいたなにかに気づいて『ヤツら』と言ったんじゃないか?」
「あぁ、俺も同じことを考えてた。」
今、走っていて気付いたのだが俺の横には紅月がいるのだが、神無月の姿が見当たらない。
古ぼけた公園のなかを通って先へ進む。
最近思い出したことなんだが、この公園で小さい頃、友達とよく遊んでいたのだ。
確か、名前が……………
「……………誰だっけな」
「ん?どうかしたか?」
「あ、いや。何でもない。それより、神無月はどこにいるんだ?」
辺りを見渡すがどこにもその姿は見当たらない。
「そう言えば、そうだな。さっきまでは、俺たちの後ろを走ってたんだが。」
紅月も走りながら回りをキョロキョロと見渡し始めた。
公園を抜けて信号を渡る。
「あ……………涼。あそこ………」
紅月が呆れたような表情をして上空を指差す。
そこには、白く大きな鳥のようなものが飛んでいた。
そして、よく見るとその上に神無月が乗っている。
「あ…………式紙使うってセコくないか?」
俺の声が聞こえていないのか神無月は前方を見て飛行している。
「あぁ、涼。今あいつにはなんも聞こえねぇと思うぞ。」
「どうしてだ?」
上空をを二人で見上げた。
「アレ見てみろよ。耳のとこ………。」
「……………あ。」
耳にはイヤホンがはめられていた。
神無月はあのイヤホンを着けると地震が来ても気づかないくらいに集中力が高まってしまう。
「こんなときにいったいどんな曲を聞いてんだよ。」
「俺さ、この間神無月に呼ばれたときにあのイヤホン着けさされたんだけどな…………あのイヤホンな、なんの音もしねぇんだよ。」
音がしないイヤホンって………意味無くね?
大きなビルの裏手に向かう。そろそろ、エルさんの家だ。
神無月はイヤホンをはずしてこっちを見てきた。
そして、だんだんと俺たちのところまで降りてくると、白い鳥のようなものはボンッと音を立てて消えた。
神無月は地面に着地してすぐに走り始めた。
「20m圏内のどこかにあの子がいる……………」
「やっぱり。エルさんを補食しに来てるのか。」
「俺は、その人のことはよく知らないが、とにかく守らないといけねぇんだな。」
紅月はポケットから紅い腕輪を取り出して右腕にはめた。
守りは紅月に任せよう。
攻撃は神無月の式紙が何とかしてくれるだろう。
俺はとにかくエルさんに事情を話さないとな。
目の前に黒い家が見えた。
「あそこだ。」
俺が呟くと、紅月と神無月は、真剣な顔つきになった。
家についたので、呼び鈴を鳴らしたのだった……………
神無月の式紙っていったいいくつぐらいがいいのでしょうね。
今回は白い鳥のようなものが出てきましたね。
そういえば最近、僕の家の前に白いハトがいました。
結構ビックリしました。
だって、僕の家の前ってすぐ道路があるし、長居してたら轢かれちゃいますしね。
次回もよろしくお願いします!