記憶を崩した者達~メモリーブレイカーズ~   作:如月ルイ

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今回はあの人が…………


四話 逆襲

目が覚めるとリビングのソファーの上だった。

既に部屋には明かりが差し込んでいる。

机の上のデジタル時計に目をやると7:45だった。

 

「はぁ…………。」

ため息をついて辺りを見渡す。

ヤミは既にここにはいなかった。

 

しかし、おかしな話だ。本を使って、人を救って、しゃべる猫に出会って…………誰かにこんな話をすれば、即精神科行きだろう。

 

そう言えば、キャラクター作成は終わっただろうか………。

起き上がって階段を上がる。

自分の部屋に入って携帯を手に取る。

「…………………まじか。」

キャラクター作成はとっくに終わっていた。

それよりも驚いたのは、受信したメールの数…………3。

メールなんてあんまりしないので、一日に三枚も来ていることの方が驚きだ。

一枚だけメールを開く。

蒼月からのもののようだ。

 

涼このメールを見たら、すぐにそこから出ろ!

恐らくヤツらがそっちに向かってる!

携帯もおいていけ!

電波をキャッチされたら不味い。

外に出たらすぐに神無月の家に行け!

 

 

「……………ヤツら?」

いったいなんのことだろう。

このメールが届いたのは…………1時間前。

 

しかし、いまいち信じられないので、次のメールを見る。

 

次も蒼月からのメール。

 

何をしてるんだ!?急げ!!

もうそこに着いてしまうぞ!!

死にたくないなら逃げろ!!

 

意味がわからない。

蒼月の嫌がらせだろうか。

もしくは、紅月の………

 

取りあえず最後のメールを見てから外に出てみよう。

 

涼………生き残れよ……?

 

 

「…………は?」

何だよ。生き残れって………

急に怖くなってきた。

その時だった。

 

ピンポーン

チャイムが鳴り響く。

 

続いてドアを叩く音。

 

ハゴンッ!

ドアが…………壊された………

「っ…………!」

空気がピリピリとしてくる。

……コトン……コトン……コトン……コトン……

階段を上がってきている。

 

俺は、すぐにクローゼットの中に隠れた。

 

ガチャ

俺の部屋のドアが開いて何かが部屋に入ってきた。

 

…………静寂

なにも聞こえない。

しかし、確かにそこにいるのだ。

頭によぎる恐怖は、ただただ俺に祈らせた。

『生きたい』と…………

 

その時だった。階段から何人かの人が上がってくる。

パリィンッ!!

それに反応したヤツは窓ガラスをわってどこかへと消えていったようだ。

 

「涼!!」

「どこ………!」

紅月と神無月の声。

俺はすぐにクローゼットを出る。

 

「涼!!無事だったか!」

「あぁ………紅月………今のはいったい………何なんだ?」

俺はすぐにヤツのことを聞いた。

 

紅月は、すこしだけ下を向いて静かに言った。

 

「田中さんだ。」

「なにを…………言ってるんだ?」

神無月もいつもとは違う真剣な顔つきで「侵食……………」と呟いた。

 

「は?何言ってんだよ。田中さんに取り付いてた黒い本は白い本で消したはずだろ?」

 

「残ってたんだ。心臓に…………」

紅月は自分の左胸に手を当てて静かに言った。

 

「なんで……………俺の家に来たんだ?」

「逆襲…………………」

逆襲…………?何でなんだ?

俺を…………殺すために来たのか?

 

「………………。」

「涼。お前は田中さんを助けられてなかったんだ。」

その言葉を聞いた瞬間に俺はその場に崩れた。

 

床に涙が落ちる。

一つ…………また一つ………

 

田中さんを救う=田中さんを殺す

俺の頭にはこの言葉だけが頭をよぎっていた。

 

「紅月…………」

「………なんだ?」

俺は立ち上がった。

「田中さんを………………助けにいく。手伝ってくれるか………?」

「……………当たり前だろ。そのため来たんだ。」

俺が紅月を見ると紅月は少し笑った。

 

「…………俺も…………行こうか?」

神無月は、俺たちにに向かって静かに言った。

 

「頼む………。」

俺はそう言って、部屋の外に出た。

階段を降りる途中、赤い血が階段に飛び散っているのが見えた。

 

「…………。」

「田中さんは、侵食が進みすぎて体が持たないみたいなんだ。」

紅月が説明してくれた。

 

「だから…………あの子は、力のあるものを捕食しようとしてる。涼は、最後に殺すつもりみたいだ。」

あとをついてきた神無月は紙とペンを用意しながら呟いた。

 

 

「力の強いもの…………」

俺が始めに思い付いたのは、エルさんと一色先生とヤミだった。

 

「…………急ごう」

俺たちは、走ってエルさんの家に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




田中さん………いったいどうなるんだ。
田中さんを救う=田中さんを殺す
こんな悲劇が…………
こんな理不尽なことが………

涼はいったい、どんな答えを導き出すのか………。
田中さんは死んでしまうのか……。
次回もよろしくです。

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