CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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間章

 ルドガーは夢を見ている。

 桜吹雪の夢ではない。満月の夜の、夢。

 

 トリグラフ市街地のように高いビルが乱立する都市。その中でも一際目立つ赤い尖塔に立つ、獣の目をした白銀の者。

 

 そして、杖を握ってそれを見つめるのは、亜麻色の髪に翡翠色の目をした少女。

 

 

(ツバサ……? にしては幼いし、髪も短い。それにあのリボンとかマントとか、ファンシーな格好。むしろアグレッシブな感じの服がいつもののツバサのイメージに合わない)

 

 

 “どうなってるの!? カード全部集まったよね!? そしたら災いは起こらないんじゃなかったの!? 最後の審判って何!?”

 

 

 痛々しいほど懸命な声は、幼く高いが、ツバサと同じものだと分かった。

 

 

 “『選定者・ケルベロス』に選ばれし少女、名を、さくら。少女が真に我らの主にふさわしいか。我、『審判者・(ユエ)』、最後の『審判』を行う”

 

 

 少女は幾度となく攻撃を受け、赤い尖塔の柱に叩きつけられる。それでも少女は反撃しない、できない。

 そんな少女を助けようと、緑の装束の少年が駆け出そうとし、羽根の生えた獅子が少年を止めた。

 

 

 “誰かが助けたら、その時点で、さくらの負けんなってまう!”

 

 

 木々に戒められた少女は、告げられる。

 「この世の災い」とは何か。少女が負けた時、何が起きるか。

 

 

(う、そ、だろ。そんなこと、精霊にだってできっこない! まさかツバサがエレンピオスに来てさくらカードを封印して回ってるのって、そういうこと、だったのか――?)

 

 

 ふいに夢の光景は消え、真の暗闇が訪れた。

 何も見えない。誰もいない。代わりに体の自由は利く。

 

「『(ドリーム)』。これもお前が見せてるのか? 今の夢はツバサに起きる未来なのか?」

 

 ふわ、と「(ドリーム)」が現れた。「(ドリーム)」は首を振った。

 

「未来の夢じゃ、ない? じゃあ、あれは、あの子は一体…………っ、まさか」

 

 

 “汝のあるべき姿に戻れ! ()()()カード!”

 

 

「ツバサがいずれ受けなきゃならない試練で、ツバサの母さんが過去に体験した戦い。母親と同じ道を辿って、過去をなぞるから、厳密には未来であって未来じゃない。いわば、宿命そのもの。俺がユリウスと戦う夢を見たのと同じ。そういうことか?」

 

 起きている時なら羞恥心で出て来ない言葉が、夢の中だからか、するすると出て来た。

 

 「(ドリーム)」は今度、こくりと肯いた。

 そして、ルドガーの前まで舞い下りると、ルドガーの唇に人差し指を当て、離した。

 

「言うなってことか。誰にも。ツバサ本人にも」

 

 こくん。

 

「いずれお前の主人になる子を、俺は、助けてやれないんだな」

 

 こくん。

 

「俺には、何もできないんだな」

 

 「(ドリーム)」はふわりと浮かび、現れた時と同じように音もなく消えた。




 ルドガーがツバサの真実とさくらの過去の断片を知る話でした。
 ルドガー君、地味に凹んでおります。ここからどう巻き返すのでしょう?

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