CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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たった一つの冴えたやり方? 3

 ニ・アケリア、マクスウェルの祠。

 今は礼拝に訪れる村人もまばらになったそこに、ルドガーとミラ、そしてツバサはいた。

 

 ミラは緊張を隠せない面持ちで祠の階段を登り、扉を開ける前にルドガーとツバサをふり返った。

 

「じゃあ……しばらくサヨナラ。精々頑張りなさいよ」

「はい」

「ああ。必ず。エルのことは任せとけ」

 

 エルの名を出せばミラはようやく微かに笑み、祠に入って行った。

 

 ツバサが星の長杖を封印解除(レリーズ)し、「(ロック)」のカードを宙に投げた。

ツバサは星の長錠を変幻自在に回しながら、詠唱する。

 

「錠よ、閉ざせ。今よりかの地はこの世であってこの世にあらず。『(ロック)』!」

 

 桜色のカードがほどけ、マクスウェルの祠全体に浸透していく。

 がきん、と南京錠が閉まる音に似た音を最後に、その儀式は終わったようだった。

 

 

「ツバサ。ありがとう」

「ほえ?」

「俺一人だったらミラのこと、どうしようもできなかった。夢に見た通りに、ミラを……死なせてた。でもツバサが魔法で何とかしてくれたから、ミラを犠牲にしなくてすんだ。だから、ありがとう。俺一人じゃ絶対できなかったことを叶えてくれて」

 

 ツバサは首を横に振った。

 

「わたしは、困ってるルドガーさんを独りで頑張らせたくなかっただけ。だから、これからも、一人じゃ無理だって思ったことは隠さず言ってください。わたし、力になれるよう、一生懸命がんばりますから」

 

 気合充分に両拳を握って主張するツバサ。本当にいい子だな、と思ったのが素直な気持ちだ。

 

「独りでがんばるのは、本当に辛いことだから――」

「え?」

「な、何でもないですっ……わ!」

 

 ツバサは慌てたように両手を振って下がり、その拍子に後ろに向けて躓いた。

 今度はルドガーが慌ててツバサの手を掴み、自分側に引っ張り寄せた。ツバサがぼふんとルドガーの胸板にぶつかった。

 

「すみませんっ」

「いや……」

 

 ツバサの向こう側の地面に、極彩色の光が幾重にも刻まれ、模様を描いていく。

 とっさにルドガーはツバサを引っ張ってその光から離れた。

 

(これ、魔法陣だ。ツバサのとは違う……どっちかというと、ジュードたちが精霊術を使う時に似てる。まさか)

 

 極彩色の魔法陣は中央に穴を開け、下から乱気流を噴き上げた。

 ルドガーはツバサが飛ばされないよう片腕に抱え、もう片方の腕で我が身を庇った。

 

 乱気流の中から、何か、が飛び出した。

 

 何か、は白と空色の(ころも)をまとった女だった。

 女は金蘭の髪束を振り乱し、天空色のマナの光滴を惜しげなく零しながら舞い下りた。

 

 ルドガーとツバサはぽかんとその女を見た。

 

「あんたが……正史世界のミラ、なのか?」

 

 マゼンタの瞳がルドガーとツバサをまっすぐ見据えた。

 

「そうだ。私がミラ=マクスウェルだ。呼び戻してくれたこと、礼を言う。ルドガー・ウィル・クルスニク。ツバサ・キノモト」

「わたしたちのこと知ってるんですか!?」

「ああ。君たちの後ろで眠る“ミラ”を通して。これからは彼女が私を通して君たちを、皆を見守ることになるのだろう」

 

 凛とした、頼もしい笑み。ルドガーたちの“ミラ”は絶対に浮かべない表情。

 こんなにも二人のミラは異なるのに、世界はミラたちを同一存在だと見なす。

 その事実に、ルドガーは言い様のない苛立ちを覚えた。

 

「と、とにかくっ。ええっと、ミラ、さん。ジュード君たちに会いに行きませんか? みんながミラさんを心配してましたよ」

「ありがとう。そうしよう」

「ルドガーさんも、行きましょう?」

「……ああ」

 

 ミラと並んで歩き出すツバサ。彼女たちの後ろに付いて、ルドガーも歩き出した。

 

 

(これから何が起きても、全部何とかしてみせる。だから安心して見てろ、ミラ)




 感想を下さった方の中で「ここでリドウが邪魔をしたら~」というような素晴らしいネタを下さった方がいらしたのですが、すでに書き終わっていてからその感想を読んだので頭をマジで抱えました。

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