CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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たった一つの冴えたやり方?

「今一番の問題は、ミラをどうすべきかだと思う」

 

 ツバサの自宅である1LKのテーブルに着いたルドガーは、真っ先にそれを口にした。

 

 ジュードとアルヴィンを手伝ってアルクノアを捕縛した後、トリグラフに帰って、ルドガーは自宅ではなくツバサの部屋を訪ねた。

 

 家主のツバサはというと、小さな冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出して、ルドガーに差し出した。有難く受け取って、一口飲んだ。

 

「ディールでの任務で、同じ存在は正史世界じゃ同時に存在できないって分かってから、ミラの調子もおかしい。ミラがリドウの罠で消される前に、何か対策を打たないと」

 

 ルドガーは「(ドリーム)」が見せる予知夢で、ミラがこれからどうなるか知っていた。

 その内容はツバサにも説明した。調印式の日の船上、リドウの策略、生贄式マクスウェル召喚法、そして、ミラの自己犠牲――

 

 

 ツバサは外してあったレッグホルダーを持ち上げ、中のカードをテーブルに全て並べた。

 「(ジャンプ)」、「(フライ)」、「(タイム)」、「(ライブラ)」、「(ループ)」、「(ウェイブ)」、「(ソード)」、「(ロック)」、「(ムーブ)」、「(ストーム)」――

 

「残るは『(フリーズ)』と、ルドガーさんの中の『(ドリーム)』。……これでどうやってミラさんを消さずに正史世界のミラさんを呼び戻すか、ですね」

「ミラを分史世界に帰す……だめだ。あいつの世界は俺が壊したんだ。似た環境の分史世界があったって、結局壊さないと帰れないし」

「――似たような案なら、ないわけでもない、です」

 

 目を瞠ったルドガーの前で、ツバサは星の長杖を封印解除(レリーズ)した。

 

「この杖の赤い宝石。これはブースターなんです。さくらカードを集め終わったわたしが、元いた次元に帰るための。弟たちと妹も、何らかの形でこういう品を持ってます。この宝石の魔力――マナを解放すれば、ミラさん一人くらいなら異次元に飛ばして、もう一人のミラさんが出て来られるようにできると思います」

「帰るためって……それがなくなったら、ツバサは」

「……一生、エレンピオスから出られませんね」

 

 ツバサは泣きそうになりながら何とか笑顔を取り繕おうとしているように見えた。

 

「ダメだ」

「ルドガーさん」

「ツバサは家族のこと大好きだろ? もう一度会いに帰りたいだろ? だったらそれは使っちゃいけない。却下だ。別のやり方を考えるぞ。でも異次元ってのはいいアプローチだったと思う。異次元、異世界、別世界……うーん……」

 

 ツバサは長杖をペンダントトップに戻し、ペンダントに装着し直した。

 

 並べたさくらカードを眺める。「ミラ=マクスウェルが二人いない」と世界を騙せるほどのさくらカードがこの中にあれば――

 

「――『(ロック)』」

「ツバサ?」

 

 ツバサは、羽根の生えた錠前の図柄のカードを取り上げ、ルドガーにカード効果を説明した。

 異次元に逃がすよりずっと不安材料があるやり方だが、今彼らの持てる力においてこれ以上の最善策はなかった。

 

 

 

 

 

 早朝にGHSの連絡でルドガーに呼び出されたミラは、不機嫌を隠さず団地内の公園のブランコに乗っていた。

 

 やがてお目当てが帰って来た。

 午前様の上に朝帰りの保護者失格野郎と、それに付き合ってこれまた外泊した親泣かせ娘。

 

「ちょっと、ルドガー、ツバサ! 今何時だと思ってんの! それと話があるなら家に戻って来なさいよ! 歩いてすぐでしょうが。何でわざわざ外に呼び出すの」

「――ミラさん」

 

 ツバサが進み出てミラの前に立った。背の高いミラからすれば、抱けば折れてしまいそうな細身。

 

「正史世界のミラさんがどうして出て来ないのか、ミラさんはご存じですよね」

 

 さー、と血の気が引いた。

 知っている。ディールの遺跡から帰って2匹のルルの内、1匹が消えてしまった光景を見てから。

 

「わたしもルドガーさんも、考えて、うんと考えて、こんなちゃちなやり方ですけど、思いつきました。それをどうにか解決する方法」

 

 翡翠色の両目がまっすぐミラを射抜いた。

 

 

「ミラさんに……この世から、消えて、ほしいんです」




 なんちゅうこと言い出すんだこの子おおおおおお!!!! 作者もびっくりだよ!
 まさかさくら似の女の子から「この世から消えろ」なんて……作者だったら即放浪の旅に出ちゃいますね。
 果たしてツバサとルドガーの真意は? そして「錠」はどう使うのか!
 こうご期待!

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