CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

91 / 180
Continue to Next Crossing

「嵐よ、その猛る風を我らが盾とせよ。『(ストーム)』!」

 

 ツバサと人質を中心に竜巻が生じた。

 チェリーズパイクはハサミや尾でこちらを切ろうとするが、全て暴風に遮られている。

 名付けて「台風の目作戦」、成功だ。この中にいる限り、チェリーズパイクの攻撃はツバサたちには届かない。

 

(あとはジュード君が来るまでわたしの魔力が保つかだけど)

 

「ジュード博士だ!」

 

 人質の一人が喜声を上げた。

 

(よかった。何とかなったのね。ああ、でも、いっぱい汚しちゃって。あとで治してあげなきゃ。ふふ、そんなとこ、昔の虎太郎みたい)

 

 改めて目の前に集中しようと顔を上げた時だった。

 

「ヴァリアブルフラッシュ!!」

 

 横ざまにソニックブームが飛んできて、チェリーズパイクを横へ吹き飛ばした。

 

「毎度。世話焼きに来たぜ。ジュード。ツバサ」

 

 最高のタイミングで登場したアルヴィンが、大剣を構えて不敵に笑んでいた。

 

 

 アルヴィンが、ジュードが、ツバサたちとチェリーズパイクの間に入った。

 

「治療急げよ、ジュード! 足止めはそうもたねーぞ!」

「わかった! ツバサ、止めて!」

 

 ツバサは「(ストーム)」を解除し、ジュードと入れ替わりにアルヴィンの横に立った。

 

 アルヴィンが自動拳銃とピストルの弾込めをする間に、ツバサは2枚の魔法符を出した。

 

「火神、雷帝――招来!!」

 

 チェリーズパイクを炎が炙り、落雷が貫く。

 

「おたくってひょっとしてキレると怖いタイプ?」

「ど、どうでしょう。――水龍、雷帝、招来!」

 

 チェリーズパイクの炙られた体表に水を浴びせてもんどり返らせた上で、濡らして感電しやすくしておいたところを雷で追い打ちをかけた。

 

「もう大丈夫です、走って!」

「死ぬなよ、ジュード博士! そっちのあんたらも!」

 

 アルヴィンの銃撃が再び始まる。その内、チェリーズパイクの尾を弾が掠った。

 

「やべ」

「ほえ?」

 

 チェリーズパイクは尾を使って地面ごとツバサたちを抉り、吹き飛ばした。

 

「っ、風華招来!」

 

 風がクッションとなってツバサ、そしてアルヴィンとジュードを受け止めた。

 

「サンキュな、ツバサ」

「魔物の敵意はすっかりこっちに向いてる。僕とアルヴィンで一気にケリをつける」

「分かった。何かあったらフォローは任せて」

 

 ジュードが、アルヴィンが、同時にチェリーズパイクに向かって走り出した。

 

(大丈夫だよ、ジュード君。ちがう国同士だって分かり合える日は来る。お父様とお母様がそうだったみたいに。わたしとあなたたちがそうだったみたいに)

 

 弟を見守る姉の気持ちで、ツバサはジュードの背中に声にはしないエールを送る。

 

(だから、がんばれ。だから、負けるな)

 

 アルヴィンが放った銃撃を、ジュードが上から一回転蹴りでチェリーズパイクの頭に打ち落とした。

 

 チェリーズパイクは劫火を上げてその場に倒れた。

 

 すると、ジュードとアルヴィンも背中を預け合ってその場に座り込んだ。

 

「ジュード君! アルヴィンさん!」

 

 怪我でもしたのか。ツバサは慌てて駆け寄った。

 

「誰かを信じてその手を借りる――って、すごいことだと思わない?」

 

 ジュードが星空を見上げて呟いた。

 

「今日はとにかく色んなことがあって、再確認したというか。ミラと約束して僕が目指したもの、もう一度、シンプルに向き合えた気がして」

 

 ジュードの笑顔は今まで見た中で一番晴れやかだった。

 

(何だ。心配要らなかったや)

 

 ツバサは星の長杖をペンダントトップに戻し、ペンダントに装着し直した。

 

「……結局、ややこしくしてんのは自分なんだろうな」

「うん。そうだね。アルヴィンも?」

「聞くなって。今日だって自己嫌悪でいっぱいいっぱいだよ。――まあ、一人じゃねーってことだよな。よくも悪くも」

 

 

 足音が聴こえた。人の足音だ。

 ツバサはとっさに身構えたが、こちらに走ってくるのはルドガーとレイアだった。

 

「おー、いたいた。おつかれ~」

「おせーぞ、お前ら」

「そっちが一人でさっさと走って行くからじゃない!」

「とりあえずジュードが無事で何よりだ。あ、そういえばお疲れのとこ申し訳ないんだが」

 

 ルドガーに付いて行って街道をトリグラフ方向へ進むと、そこには昏倒したところを縛り上げられているアルクノア。

 これにはツバサも目を丸くするしかなかった。

 

「怪しかったんでとりあえずぶっ飛ばしたんだけど、もしかしてまずかった?」

「ううん、全然!」

「さすがルドガー、超有能エージェント!」

「わたしも頑張ったんですけど!?」

 

 ツバサの前で皆がわいのわいのと騒ぐ中、ツバサは東の地平を見やった。夜明けだ。

 

 ツバサは思った。

 ――これはジュードとアルヴィンを祝福する陽光であり、新たな戦いの始まりを告げる旭光だと。

 

 

 

 

 

 アルクノアは捕え、人質も全員無事。

 ルドガーは大きく伸びをし、トリグラフに帰るジュードらに続いて歩き出そうとした。

 

「ルドガーさん」

 

 呼ばれたのでふり返った。ツバサだった。

 

「ミラさんのことでお話したいことがあります。この後、わたしの家に来てくれませんか」

 

 その時に至ってようやく、ルドガーは気づいた。ツバサがミラの存在の不安定性を知っていることを。

 

「――、分かった」

 

 ジュードたちは戦い抜いた。今度はルドガーの番だ。




 タイトルは「双極のクロスロード」の最後の文から拝借させていただきました。

 ここまででジュードが暫定パートナーでしたが、次回からはルドガーになりそうです。
 ついに本格的に、カナンの地編に入ります。
 まずはミラさんをこの二人がどうするかですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。