CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
「嵐よ、その猛る風を我らが盾とせよ。『
ツバサと人質を中心に竜巻が生じた。
チェリーズパイクはハサミや尾でこちらを切ろうとするが、全て暴風に遮られている。
名付けて「台風の目作戦」、成功だ。この中にいる限り、チェリーズパイクの攻撃はツバサたちには届かない。
(あとはジュード君が来るまでわたしの魔力が保つかだけど)
「ジュード博士だ!」
人質の一人が喜声を上げた。
(よかった。何とかなったのね。ああ、でも、いっぱい汚しちゃって。あとで治してあげなきゃ。ふふ、そんなとこ、昔の虎太郎みたい)
改めて目の前に集中しようと顔を上げた時だった。
「ヴァリアブルフラッシュ!!」
横ざまにソニックブームが飛んできて、チェリーズパイクを横へ吹き飛ばした。
「毎度。世話焼きに来たぜ。ジュード。ツバサ」
最高のタイミングで登場したアルヴィンが、大剣を構えて不敵に笑んでいた。
アルヴィンが、ジュードが、ツバサたちとチェリーズパイクの間に入った。
「治療急げよ、ジュード! 足止めはそうもたねーぞ!」
「わかった! ツバサ、止めて!」
ツバサは「
アルヴィンが自動拳銃とピストルの弾込めをする間に、ツバサは2枚の魔法符を出した。
「火神、雷帝――招来!!」
チェリーズパイクを炎が炙り、落雷が貫く。
「おたくってひょっとしてキレると怖いタイプ?」
「ど、どうでしょう。――水龍、雷帝、招来!」
チェリーズパイクの炙られた体表に水を浴びせてもんどり返らせた上で、濡らして感電しやすくしておいたところを雷で追い打ちをかけた。
「もう大丈夫です、走って!」
「死ぬなよ、ジュード博士! そっちのあんたらも!」
アルヴィンの銃撃が再び始まる。その内、チェリーズパイクの尾を弾が掠った。
「やべ」
「ほえ?」
チェリーズパイクは尾を使って地面ごとツバサたちを抉り、吹き飛ばした。
「っ、風華招来!」
風がクッションとなってツバサ、そしてアルヴィンとジュードを受け止めた。
「サンキュな、ツバサ」
「魔物の敵意はすっかりこっちに向いてる。僕とアルヴィンで一気にケリをつける」
「分かった。何かあったらフォローは任せて」
ジュードが、アルヴィンが、同時にチェリーズパイクに向かって走り出した。
(大丈夫だよ、ジュード君。ちがう国同士だって分かり合える日は来る。お父様とお母様がそうだったみたいに。わたしとあなたたちがそうだったみたいに)
弟を見守る姉の気持ちで、ツバサはジュードの背中に声にはしないエールを送る。
(だから、がんばれ。だから、負けるな)
アルヴィンが放った銃撃を、ジュードが上から一回転蹴りでチェリーズパイクの頭に打ち落とした。
チェリーズパイクは劫火を上げてその場に倒れた。
すると、ジュードとアルヴィンも背中を預け合ってその場に座り込んだ。
「ジュード君! アルヴィンさん!」
怪我でもしたのか。ツバサは慌てて駆け寄った。
「誰かを信じてその手を借りる――って、すごいことだと思わない?」
ジュードが星空を見上げて呟いた。
「今日はとにかく色んなことがあって、再確認したというか。ミラと約束して僕が目指したもの、もう一度、シンプルに向き合えた気がして」
ジュードの笑顔は今まで見た中で一番晴れやかだった。
(何だ。心配要らなかったや)
ツバサは星の長杖をペンダントトップに戻し、ペンダントに装着し直した。
「……結局、ややこしくしてんのは自分なんだろうな」
「うん。そうだね。アルヴィンも?」
「聞くなって。今日だって自己嫌悪でいっぱいいっぱいだよ。――まあ、一人じゃねーってことだよな。よくも悪くも」
足音が聴こえた。人の足音だ。
ツバサはとっさに身構えたが、こちらに走ってくるのはルドガーとレイアだった。
「おー、いたいた。おつかれ~」
「おせーぞ、お前ら」
「そっちが一人でさっさと走って行くからじゃない!」
「とりあえずジュードが無事で何よりだ。あ、そういえばお疲れのとこ申し訳ないんだが」
ルドガーに付いて行って街道をトリグラフ方向へ進むと、そこには昏倒したところを縛り上げられているアルクノア。
これにはツバサも目を丸くするしかなかった。
「怪しかったんでとりあえずぶっ飛ばしたんだけど、もしかしてまずかった?」
「ううん、全然!」
「さすがルドガー、超有能エージェント!」
「わたしも頑張ったんですけど!?」
ツバサの前で皆がわいのわいのと騒ぐ中、ツバサは東の地平を見やった。夜明けだ。
ツバサは思った。
――これはジュードとアルヴィンを祝福する陽光であり、新たな戦いの始まりを告げる旭光だと。
アルクノアは捕え、人質も全員無事。
ルドガーは大きく伸びをし、トリグラフに帰るジュードらに続いて歩き出そうとした。
「ルドガーさん」
呼ばれたのでふり返った。ツバサだった。
「ミラさんのことでお話したいことがあります。この後、わたしの家に来てくれませんか」
その時に至ってようやく、ルドガーは気づいた。ツバサがミラの存在の不安定性を知っていることを。
「――、分かった」
ジュードたちは戦い抜いた。今度はルドガーの番だ。
タイトルは「双極のクロスロード」の最後の文から拝借させていただきました。
ここまででジュードが暫定パートナーでしたが、次回からはルドガーになりそうです。
ついに本格的に、カナンの地編に入ります。
まずはミラさんをこの二人がどうするかですね。