CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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どこまでも「跳」んでいく

 ドヴォール駅に降りるなり、ツバサはジュードに呼びかけた。

 

「さっきの壊しちゃった源霊匣(オリジン)、まだ持ってる?」

「え。ああ、うん」

 

 白衣のポケットから真っ二つに割れた源霊匣(オリジン)の残骸を取り出すと、ツバサはそれを取って、構内を見回した。

 

「あっちが人来なさそう。ちょっと来て」

 

 ツバサはジュードを引っ張って駅舎の隅まで移動し、その場に源霊匣(オリジン)の残骸を置き、片膝を立てて座った。

 姿勢は異なるが、ミラが四大精霊を再召喚しようとした時と雰囲気が似ていた。

 

封印解除(レリーズ)

 

 ツバサは星の長杖を地面と平行に持ち、目を伏せた。

 

「玉帝有勅 神硯四方 金木水火土 雷風 雷電神勅 軽磨霹靂 電光転 急々如律令」

 

 源霊匣(オリジン)の残骸を中心に、さくらカードを使用する時とは異なる魔法陣が展開した。

 

 ツバサはそれなりに長い時間、伏せていた目を開いた。鋭い、と感じた。

 

「――捕捉(みつけた)

 

 魔法陣が消えた。ツバサが立ち上がった。

 

「今のって」

「人捜しの魔法。お父様に教えてもらったの。本人の持ち物がないとできないんだけど、今回はこれがあったから」

 

 はい、とツバサは源霊匣(オリジン)の残骸をジュードに差し出した。ジュードは呆気に取られたままそれを受け取った。

 

「アルクノアはエラール街道にいるよ。縛られてる人も視えた。割とトリグラフ寄りのとこだった。ブラートが来ないのに焦れてるみたいだったよ」

「その縛られてた人たちが、ブラートの言ってたリーゼ・マクシア人かも。急がないとまずいよね」

「急ぐならショートカットしちゃおう!」

 

 またツバサのほうが先んじて駅舎を出た。ジュードはツバサを追った。

 ツバサはレッグホルダーから一枚のさくらカードを抜いた。

 

「『(ジャンプ)』」

 

 ツバサの両足の踵に羽根が生えた。

 

「しっかり掴まって」

 

 ツバサはジュードに肩を組ませるなり、大きく跳んだ。

 

「わ、ぁ……!」

 

 着地したのはビルの上。ツバサは、叫びかけたジュードにお構いなしに、再び跳んだ。

 

(これも、さくらカードの力? 精霊術も使わないでこの飛距離と滞空時間。しかも使ってるのはツバサ自身のマナだけ。何て技術だ)

 

 何度目かの跳躍で、ジュードたちはエラール街道へ抜ける門を越え、地面に着地した。

 それでもツバサはジュードを掴んで跳ぶのをやめない。

 

 街道をひたすら跳んで、ついに彼らは見つけた。

 

「いた――!」

 

 縛られて銃器を向けられている人々が3人。取り囲むのはアルクノアのコスチュームの連中だ。

 

 ジュードは空いたほうの手にマナを集め、頭上から技を放った。

 

 

 

 

 

「魔神拳!」

 

 ジュードの拳から放たれた闘気が、人質の近くのアルクノア兵を一人吹き飛ばした。

 着地するなりすぐジュードは次の構えに入った。

 

「ツバサ、リーゼ・マクシアの人たちを助けて! ここは僕が!」

「分かった!」

 

 ツバサは羽根が生えた踵で地面を蹴り、高く夜空へ跳び上がった。

 

 崖の上からアルクノア兵と並走する。頭上を取れば怖いものはない。

 ツバサはジャケットの内ポケットから李家に伝わる魔法符を出した。

 

「雷帝招来――雷撃!」

 

 極小の雷撃を進行方向に落とし、アルクノアと人質を足止めした。

 

「次は本気で当てます」

 

 二枚目の雷撃の符を、まずは先頭のアルクノア兵に向けて発動した。

 するとそのアルクノア兵が、人質の一人を引っ張り出し、場所を入れ替えた。

 結果、雷撃は人質に当たった。

 

(そんな……!)

 

「次に攻撃しても同じだ。攻撃をやめてもらおうか」

「くっ…」

 

 ツバサは歯噛みし、星の長杖をきつく握りしめた。

 

 アルクノア兵は、電撃でふらつく人質の首根っこを掴んで乱暴に立たせ、武器を向けて歩かせた。

 ツバサはそれを、起死回生の手も思いつかないまま追いかけるしかなかった。

 

 

 

 

 開けた窪地に出るなり、ツバサは崖から飛び降りた。

 

「その人たちを解放して!」

 

 星の長杖を槍のように構える。

 

(実戦向きのカードは『(ソード)』くらい。もっかい『(タイム)』使って人質だけ連れて逃げ――)

 

 アルクノア兵が人質の一人を撃った。人質は縛られたまま転げ回った。

 

「ぐぁああああっ!」

「何てこと……っ!」

増霊極(ブースター)も精霊の化石も失った以上、残った『素材』も処分しなくてはならない。だがこいつは処分が面倒でな。我々が手にかけたという証拠を残すわけにもいかん」

「素、材?」

 

 アルクノア兵が出したのは、ディールでブラートが使った暴発源霊匣(オリジン)。アルクノア兵はそれを無造作に岩の隙間に投げ込んだ。

 中で爆発が起き、次いで大地が隆起してひびが入り始めた。

 

「魔物に襲われ命を落としたという事実が必要なのだ」

 

 アルクノア兵は何の感慨もなく踵を返した。

 

「では君たちには、夢半ばに倒れた哀れな旅人となってもらおう。よい夢を」

 

 巨大な魔物が土の中から現れた。

 ツバサは知っていた。クエスト斡旋所で見たことがある。エラール街道に出現するギガントモンスター、チェリーズパイク。

 

 ツバサは呆然としていた自分を叱咤し、人質に駆け寄ってチェリーズパイクと彼らの間に立った。




 それなりに人目は気にして魔法を使うツバサでした。

 皆様、お忘れかもしれませんが、ツバサはさくらの子であると同時に小狼の子でもあるのですよ?^m^
 つまり小狼の魔法もツバサは使えるのです。

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