CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
弓の祭壇があった間からさらに奥へ進む。アリーシャの話を聞きながら。
――アリーシャはスレイの「従士」というものになることで、スレイと身的接触を必要とはするものの、天族の声が聴こえるようになった。
そして、湖の乙女・ライラの頼みで、レディレイクの加護天族の器にするために、この遺跡の清水を取りに来た。
「これじゃいつもと立場が逆だ」
「ふふ。私は楽しいよ。新鮮で。コタローはいつもこんな気分だったんだね」
反論しようとしたが、アリーシャが笑顔だったので、コタローには何も言えなかった。
「アリーシャ、コタロー」
険しく呼ばれた。戦いに臨む前の声。
コタローもアリーシャもとっさに武器を出して身構えた。
「どこ?」
「! 上だ!」
上から何か、大きなモノが降ってきたのが分かった。落下音からして、体重は人間2~3人分だろうか。それが3~6体。
「『
さくらカードの一枚を宙に放り、星の鈴を掲げた。「
「姿さえ視えれば!」
「アリーシャ、下がって!」
襲ってくる。気配で分かったコタローは回廊の端に飛びずさって避けた。アリーシャは、スレイが駆け寄り、床に押し倒したことで事なきを得た。
「コタロー、気をつけて! そのオオムカデには毒がある!」
まさに拳を突き出そうとして、慌てて止まった。最大の武器である拳法を封じられたのはコタローにとって痛手だった。
「アリーシャとコタローは離れてて! ――ライラ! 『フォエス=メイマ』!」
すると、スレイの頭から足先までを赤い魔法陣が潜り抜け、スレイの姿を変えた。
儀礼剣は聖剣に。髪は金のテールに。翻る衣は白と緋色に。
「おりゃあああ!!」
スレイが炎をまとった大剣を薙ぎ、払う。
しかし何度、気配がする空間を斬っても、気配に揺らぎがない。効いていないのだ。
「こいつら、神依の攻撃を……!」
「スレイ!」
アリーシャが槍を持ってスレイに加勢する。
そうなってはコタローも傍観しているなどできない。さらに「
「コタローっ! 何て無茶を」
「無茶しないと死ぬよこんなん!」
そこでちょうどスレイの神依(というのだとアリーシャに道中聞いた)が解けた。3人――天族のライラも含めれば、4人してまさに絶体絶命だ。
「ツインフロウ!」
冷たい風が顔の横を吹き抜けたと思ったら、目の前で水の激流が爆ぜた。
「ミクリオ!」
スレイが笑顔で後ろへ歩いて行き、ハイタッチでもするように手を挙げ――たが、できずに前にのけぞった。かと思えば、戻ってきて怒鳴り声を上げた。視えないコタローには訳がわからない。
その内、気配が復活する。
コタローは急いで蹴りの態勢に入ったが、そのコタローより速かった者がいた。アリーシャだ。
「スレイ! ミクリオ様に応えて!」
アリーシャは槍一本で、一人で、大きな敵に立ち向かおうとしている。見えている分、コタローよりずっと恐怖は強いだろうに。
「彼女を助けてやってくれ、『
星の鈴で「
蔓が透明な何かを縛り上げる様を見て、これだけの数と大きさなのかと、改めて背筋が冷えた。
だが、体表が尖っているのか、はたまた力が強いのか、敵は今にも蔓を千切りかねない。
反動が、星の鈴を通してコタローにも伝わる。
踏ん張るが、ぐ、ぐぐ、と圧力に負けて下がり、星の鈴を持つ腕が折れそうになる。
(っ、もう、保た、ない)
1匹のオオムカデがついに蔓を千切った。オオムカデがスレイのさらに後ろへ、コタローにとっては誰もいない空間に向かった――が、何も起きなかった。
「チャンスっ――『
先ほど手にしたばかりのさくらカードを宙に投げ、星の鈴を掲げた。
開放された「
矢が刺さったことで、コタローにもオオムカデの位置がわかるようになった。
「行くぞ、ミクリオ!」
スレイが儀礼剣を、誰かと背中を合わせるように構えた。
「『ルズローシヴ=レレイ』!」
先ほどと同じ現象が起きる。青い魔法陣がスレイの頭から足先まで潜り、姿を変えさせる。
髪が金のテールになり、衣が白くなる点は同じだが、その意匠は青をあしらったもので、手に持つ武器はあの祭壇にあった青い弓だ。
「これがオレたちの神依だ!!」
アリーシャがいるシーンは原作に沿っているので長いです。
そして思い知る「視界の違い」。視えない敵をどう表現するかに四苦八苦しました。いや本当に。
今から予告しておくと、コタローが天族を知覚することはありません。