CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
とある日。ツバサはルドガーたちと共にディールという街の広場にいた。
それというのも、ルドガーがノヴァに「借金取り立ての相手が怖いから取り立て手伝って」とヘルプコールを入れて来た上に、ヴェルからディールが進入点である分史破壊任務が重なったからである。
ルドガーの体は一つしかないわけで、こうしてツバサたちが頼りにされたというわけだ。
「それじゃあ行ってくる。そっちも気をつけろよ」
「ルドガーも。無事に帰ってきてね」
ルドガー+女子組、ツバサ+男性陣+ノヴァで別れ、彼らはそれぞれの仕事へと歩き出した。
ディールの路地裏をノヴァの案内で歩くことしばし。ツバサたちは債務者がいるという建物に着いた。
「失礼しまーす。ヴェランド銀行の者ですが……」
「だからもう少し待てって言ってんだろうが!」
「ひっ」
ノヴァが近くにいたアルヴィンにしがみついた。
ノヴァ曰く「水が5秒でお湯になりそうな勢い」の債務者の顔に、ツバサは覚えがあった。ジュードもアルヴィンも同じらしく。
「「「あの時の」」」
「「偽アルクノア!」」
「パレンジ売り!?」
「ほえ~」
人の
ツバサは、すすすす、と男に近寄った。
男はツバサが歳若い女子だからか横柄な態度を崩さない。
「あの~」
「あァ!?」
「お金を借りて、何をしたかったんですか?」
これには当人である男も、後ろにいたジュードたちでさえポカンとしたのだが、ツバサは気づかない。
「そんなん、借金でもしねえと商売の元手が足りなかったからに決まってんだろうが」
「商売?」
「クランスピア社がGHSの基地局をリーゼ・マクシに作るって噂があってな。GHSだけじゃねえ。リーゼ・マクシアは生活用
ジュードがツバサの横に来て、男に詰め寄った。
「あなたが扱ってたのって、精霊の化石なんですか!?」
「あ、ああ」
ジュードは愕然としたような表情をした。
「商売をして、どうしたかったんですか?」
「決まってんだろ。一山当てて金を儲けようとしたんだよ」
「お金をたくさん持って、それで? それから後は何をしたいんですか?」
そこで男は言葉に詰まった。
「ツバサ。さすがにそこまで聞くのは野暮ってもんだぜ。人間、金は多く持ってたい。楽して持てる金なら特にな」
「そういうものですか?」
「そう言えるのはおたくが本気で貧乏になって食うに困ったことがないからだよ。想像してみ。おたくの大事な家族が、金がないせいでろくに食えず、病気になっても薬も買えなくなったら。金、欲しくならね?」
アルヴィンの言葉を頭の中で詳細に描いてみる。
親が、きょうだいが、アルヴィンの言うような境遇になったら、木之本つばさは何を思うか――
ぽろ。
「……そんなの、いや、です」
落ちた涙を拭うツバサの頭を、アルヴィンは苦笑してぽんぽんと叩いた。
「無神経な質問して、ごめんなさい」
ツバサは男に頭を下げてから、自分がこの場では何の役にも立てないことを自覚し、事務所のドア近くまで下がった。
その後は、ジュードとアルヴィンとローエンがあの手この手で男に借りた金を返すことを了承させた。……その時の彼らの行為を、ツバサは生涯誰にも話すまいと密かに決めた。
「よしっ、手続き終わりっ。皆さん、本当にお手伝いありがとうございました」
事務所を出たところで、ノヴァは、男から返金された現金の入ったアタッシュケースを持って、ぺこんとツバサたちに頭を下げた。
「それではノヴァさん、銀行にお帰りになるまでお供いたしますよ」
「現金持って移動なんて危ないしね」
「わ、紳士♪ ありがとうございまーす」
歩き出そうとしたところで、ぽふ、と大きな掌がツバサの頭を後ろから包んだ。
「アルヴィンさん」
「おたく、親御さん元気?」
「え。あ、はい。父も母も元気ですよ」
「親父さんとお袋さんのこと、好きか?」
「大好きですっ」
「そっか。大事に胸にしまっとけよ、その気持ち」
アルヴィンはツバサの頭から手を離し、先を行くジュードたちに向かって歩いて行った。
(しまっとけって、隠せってことかな。いけないのかな。お父様とお母様が好きってキモチ)
パン! パン!
「……え?」
ツバサだけでなく、全員がふり返った。
ふと思ったのですが、ツバサの容姿の説明って自分ちゃんとしましたっけ?
自分は髪の長いさくらのつもりで書いているのですが。長女ちゃんは満遍なくさくら似という方針です。