CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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まだ来ない「嵐」

 ――カン・バルクに来て王としての俺を見ろ。

 

 などと、ガイアスが言ったので、即日中にもリーゼ・マクシアに渡るものとツバサは思ったのだが、ガイアスはまだエレンピオスに滞在するつもりらしかった。

 それをローエンから聞いたツバサは、自分の早とちりに顔を真っ赤にした。

 

 そして今日。ルドガーの兄ユリウスの捜索のため、ツバサらはイラート海停に集まった。

 

 

 人数バランスを考えて、ツバサは海路を探す組に入った。つまり、ガイアスと同じ組に。

 

「じゃあ2組に分かれて、イラート海停とサマンガン海停の両方を見張る。イバル君とツバサ君はサマンガン海停側ね」

「了解であります、室長!」

「はい、分かりました」

「ユリウスは生かして捕えろよ。借りは返さなきゃならないからな」

 

 リドウの指示の下、ツバサはイバルと共にサマンガン海停に向かう船に乗った。

 

 

 

 

「いつ見ても不思議な空の色。朝焼けと星空が混ざってるなんて」

「そういうものか?」

「イバル君はこの世界で生まれ育ったから疑問に思わないだけだよ。わたしみたいな“外”の人は、きっと誰だってびっくりするよ」

 

 ご機嫌で船べりに頬杖を突いたツバサは、ふと、海に小さな渦巻きが生じているのに気づいた。

 

「ね、ね、イバル君。この辺ってうずしおも名物なの?」

「渦潮? そんなものあるわけ……」

 

 話していたツバサらの前で、渦潮は大きく上へと伸びた。やがて渦は竜巻となり、船へ向けて侵攻を開始した。

 

 乗客の悲鳴が溢れ、甲板に走り回る音が反響する。

 

「さくらカード!」

 

 竜巻はますます強くなり、船に迫ってくる。このまま竜巻と船がぶつかれば大事故になり、大勢の犠牲者が出る。

 

 ツバサはペンダントトップを外した。

 

「星の力を秘めし鍵よ。真の姿を我の前に示せ。契約の下、つばさが命じる。封印解除(レリーズ)!」

 

 星の長杖を出し、「(ジャンプ)」のカードを突いた。

 

「『(ジャンプ)』!」

 

 船べりを蹴って宙に飛び上がり、「(ストーム)」にどうにか近づいていく。だが。

 

「わっ、きゃあああああ!」

 

 竜巻の勢いが強すぎた。ツバサは暴風に体を攫われ、船へと落ちて行った。

 甲板に体を叩きつけられる。背中に走った痛みに咳き込んだ。それでも体を返し、両腕の力で起き上がった。

 

「おい、大丈夫か!」

 

 イバルが来てツバサの横に座り込んだ。

 

「だいじょぶ。ちょっと背中ぶっちゃっただけ」

 

 するとイバルが背後に回り、両の手の平をかざした。

 手の平と背中の間に白光が生まれ、痛みが引いていくのが分かった。

 

「ありがとう」

「このくらい何でもない。それよりお前、あれが何か知ってるのか」

「そっか。イバル君にはさくらカードの話、してなかったね。あんな感じで天気を変えたりもできちゃう、簡単に言うと精霊術でいう触媒みたいな物。あれを封じるのがわたしの役目なの」

 

 ツバサはレッグホルダーからさくらカードを取り出して、イバルに見せた。

 

(とはいえ、どうしよ。手持ちのカードじゃ『(ストーム)』を止められない。竜巻の真上まで行ければ、昔のお父様がやったみたいに竜巻の中の『(ストーム)』本体を弱らせて封印できるけど。竜巻に飛び移れるくらいの距離じゃ、この船、きっと壊れちゃう)

 

 ツバサはさくらカードの束にある「(フライ)」を見た。

 空を飛ぶためのさくらカード。これを使えば楽々と竜巻の真上に行ける。

 

(でも、でもでもでも! いやだよ。()()()よ。だって『(フライ)』は封印が解けた時、わたしを……)

 

 

「スピードが上がった! まずいぞ。このままだと船が逃げ切れない」

 

 船。そう、船だ。今、ツバサたちがいるのは船の上。船がいるのは()()()だ。

 

 ツバサはカードの束から「(ウェイブ)」のカードを取り出し、投げた。

 

「波よ。足場となり、我を高き空へ運べ。『(ウェイブ)』!」

 

 この「(ウェイブ)」には波を操る効果がある。

 ツバサの狙い通り、竜巻の半分ほどの高さの波が立ち、高度を保って止まった。

 

 ツバサは再び「(ジャンプ)」で船から跳んだ。

 

 推力が落ちたところには、ちょうど波の足場を用意した。ツバサは波を蹴って2度目の「(ジャンプ)」で、ついに竜巻より高い位置に辿り着いた。

 

「雷帝招来――雷撃!」

 

 一筋の落雷が竜巻の中に落ちた。

 竜巻の勢いが弱まっていく。同時にツバサも海へと落ちていく。

 

「汝のあるべき姿に戻れ!」

 

 竜巻が消えかけていることで、中にいた「(ストーム)」がツバサにも見えた。

 ツバサは星の長杖を「(ストーム)」に向けた。

 

「さくら、カード!!」

 

 「(ストーム)」が魔力へとほどけ、札の形を成していく。

 完全にさくらカードに戻ったそれを手にした直後、ツバサは海へダイブした。




 タイトルは内容より、ツバサを取り巻く人間関係を表しています。
 カン・バルク行きはちょっと先送りにしました。

 次回から再び「双極のクロスロード」ネタが挟まります。

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