CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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「移」ろいの書 1

「行ってらっしゃい。ルドガーさん。ジュード君たちも、気をつけて」

「ありがとう、ツバサ」

「行ってくるよ」

 

 ルドガーがGHSを操作すると、その場にいた大勢の人間が一気に消えた。

 それを見届け、ガイアスは陰になっていた建物から出て、ツバサに歩み寄った。

 

「よかったのか」

 

 ツバサは、ルドガーの分史世界破壊任務に同行しなかった。

 

「はい。アーストさんとミュゼさんがいますから」

 

 残されたのは、ガイアスとツバサ。それに、今は姿を消しているが、ミュゼもいる。

 

 ――「色々あった」で片付けられない過程を経て、ルドガーはクランスピア社の分史対策エージェントとなった。

 

 分史世界の成り立ちや正史世界と分史世界との関係などは、ローエンから聞いた。

 

 それらを総合した上で、ガイアスは、正史世界に残ると言ったツバサに付き添うことを決めた。

 

「それで。これから何を調べるんだ」

 

 ツバサはびっくりした顔でガイアスをまじまじと見上げた。

 

「分かるんですか? わたしが調べ物のために残ったって」

「ああ」

「やっぱりアーストさんはすごいですっ」

「ですって。よかったわね、ガイアス」

 

 シャルトリューズの色をした立体球形陣が結ばれ、中からミュゼが現れた。

 

「でもちょっと妬けるわ。去年は私を直接使役してくれたのに、もう新しい子に乗り換えるのね。寂しいわ」

「え、あのあの! わたしとアーストさんは別にそんな特別な仲じゃっ」

「ふーん、どうかしら。貴女、可愛いから。そうだわ、今度は貴女に使役してもらおうかしら」

 

 ミュゼは指でくいっ、とツバサの顎を持ち上げて笑った。

 

「よく見たらとても潤沢なマナの持ち主のようだし。初めての女の子だし、ジュードやガイアスとは違った感じを味わえるかも」

「ミュ、ミュゼさんみたいな綺麗なヒトを、し、使役なんてできませんよ~!」

「大丈夫。お姉さんが手取り足取り教えてあげるわ」

「――そこまでにしておけ、ミュゼ。ツバサの目がうずまきになっている」

「あら、残念」

 

 パッ。ミュゼがツバサから手を離した。

 ツバサは胸を押さえて長い息をついた。

 

「えっとですね、キーワードはいくつか『(ドリーム)』が伝えてくれました。“カナンの地”、“クルスニク”、“オリジンの審判”。これを手がかりにしようと思います。――ルドガーさんから聞いた分だけじゃない。多分、もっと隠れた悪意がある。そんな気がしてしょうがないんです」

 

 ツバサはいつになく厳しい面持ちで言い切った。

 

 常にほえほえしているツバサをここまで焦らせる何か。

 その「何か」が世界の存続に関わっている場合、ガイアスも静観できない。そう考えたからガイアスも残ったのだ。

 

「どこから手を着ける?」

「図書館に行こうかなって。イル・ファンってとこにある古文書の副本が最近入ったんです。それに“オリジンの審判”らしいことを書いてるって、イバル君が教えてくれたんです」

 

 きっとイバルは得意満面に話したのだろう。そして、ツバサは目を輝かせて聞いていたのだろう。

 

「そうと決まっているなら図書館に向かうぞ」

「私も行きましょう。何だか楽しそうだし」

「二人とも……ありがとうございます!」




 いつのまにかイバルとも接触していたツバサでした。
 イメージではイバルがハンマー届けに来た時に会った感じです。

 C7の裏側でツバサのがんばり物語スタートです。

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