CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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選択肢になかった展開

 桜吹雪の夢――「(ドリーム)」という異形の女が見せる予知夢は、今日、二つの点でルドガーの人生を大きく救った。

 

 一つは、痴漢の冤罪を免れたこと。

 もう一つは、莫大な借金を背負わずにすんだことだ。

 

 

 昼でも暗いドヴォールの街を意気揚々と歩く。エルとルル、ジュードと共に。ドヴォール駅に向かって。

 

「今でも信じられないな。あのDr.ジュード・マティスと一緒にテロリストと戦って、今もこうして一緒にいるって」

「大袈裟だなあ、ルドガーは。それより説明してよ。どうして列車の中で、『リドウって医者には絶対治療させるな』って言ったか。本当にリドウさんが拾いに来た時、僕、すごく驚いたんだからね」

「うーん、言っても頭がヘンな奴って思われそうなだけの気がするけど」

 

 ルドガーは足を止め、ジュードとエルに正面から向き合った。

 

霊力野(ゲート)がないエレンピオス人の間にも、超能力とか霊能力って概念があるのは知ってる?」

「まあ、一応は」

「その中で、俺は“予知夢”を頻繁に見る――って言ったら、信じてくれるか?」

「ルドガーってチョーノーリョクシャなの!?」

 

 エルが感嘆を浮かべてルドガーを見上げてくる。

 幼女のキラキラした目がちょっとだけ心苦しい。予知夢は「見ている」のではなく「見せられている」のだ。

 

「エル。今日列車に乗る時、誰かのことチカンだって駅員に言ったろ?」

「何で知ってるの!?」

「まさに俺が、エルにチカンの濡れ衣着せられる『夢』を見たから。――分かってるかもしれないけど、言うぞ」

 

 ルドガーはしゃがんで、エルと目線の高さを合わせた。

 

「お前がしたのは悪いことだ。痴漢ってレッテルは世間でもバッシングを受けやすいし、それがやってもいない人だったら心を病んだり、一家離散したりするくらいきついことだ。もう二度とするな。いいな?」

「……ごめんなさい」

 

 エルはリュックのショルダーを両手で握って俯いた。

 慰めるようにルルがエルの足に擦り寄った。

 

「リドウさんのことは? リドウさんが来るまでにみんなの怪我は僕が治せたからいいけど」

「あいつに医療黒匣(ジン)で治療されてたら、2000万ガルド、治療費として請求されてた」

「2000万!? いくら何でも高すぎる! それも『夢』に見たの?」

「ああ。俺が払わないならエルに体で払わせるとか言いやがった。あ、夢の中でな」

 

 ルドガーは立ち上がった。

 

「で、エルがこれからどうしたいかも知ってる。――エル、カナンの地に行きたいんだよな」

「そ、そう! なんでもお願いを叶えてくれるフシギなトコロだってパパ言ってたの。パパがそこに行きなさいって。ルドガー、カナンの地、どこにあるか知ってるの!?」

「そこまではさすがに知らない」

 

 するとエルは半眼でルドガーを見上げた。

 

 しようがないのだ、一度に見られる「夢」の量には限度がある。

 

(今夜にでも『(ドリーム)』の奴にその辺どうにかしろって言っとこ)

 

「あ、でも、あのメガネの怖いおじさん、カナンの地、知ってるっぽかった」

「ルドガー、お兄さんの『夢』も見たの?」

 

 すっかりルドガーの予知夢を信じる方向で話が進んでいる。

 

(エルはともかくジュードはそれで学者ってどうなんだ。変な壺とか買わされないよう俺が付いててやろう。うん)

 

「見た。夢の中じゃ、おかしくなった兄さんがあの同級生の子を殺してた」

「だからすぐトドメを刺したんだね……でもあれ、本当にユリウスさんだったのかな」

「ユリウスのはずない」

 

 これに関してはきっぱりと答えることができた。

 

「本当に本物のユリウスだったら、俺に分からないわけない」

「信じてるんだね、ユリウスさんのこと。――じゃあ家に帰ってみない? 連絡なりメッセージなりあるかもしれないよ」

「付いて来てくれるのか?」

「お節介かもしれないけど」

 

 ルドガーは首を振った。

 敵も味方も分からない状況で、純粋な善意を示してくれる存在が増えるのは有難かった。




 「夢」さん陰で大活躍。そしてルドガーは予知夢最大活用。

 前に書いたかもしれませんが、「鏡」は桃矢兄さん(と我が家のスレイ)に惹かれる描写が原作にあったので、他のカードでもやってみたくて「夢」をルドガーに絡ませました。

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