CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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This bridge rarly do "Bridge"? 2

 TVから流れる緊急速報を観ながら、ルドガーは呆然と立ち尽くしていた。

 

『――当局は対応を急いでいます。ただいまお送りしているのは視聴者からの提供映像です。目撃者によればアルクノアが出現したとの情報、リーゼ・マクシア国民とエレンピオス国民の間で小競り合いが発生した等の情報が錯綜して――』

 

(夢で見たまんまだ。マクスバードのエレンピオス側の爆発。アルクノアも小競り合いも。早めに買い物切り上げてなかったら俺も巻き込まれてたかもしれない)

 

 共にニュース画面を観ていたユリウスが席を立った。

 

「俺も緊急招集がかかるかもしれん。準備をしてくるよ」

 

 いつもの白いコートを着ながら私室へ戻る兄の背中。これも夢で見た光景。

 

 リビングルームに一人になり、ルドガーは斜め上を見上げた。

 

「こういうことだったのか?」

 

 浮かび漂う、ルドガーにしか視えない「(ドリーム)」は、言葉を返すことはなかった。

 

 

 

 

 シャウルーザ越溝橋、その左右両端にある整備用歩道で、アルヴィンは何の因果か、パートナーのユルゲンスと、久々にジュードと連れの少女、さらには見知らぬオッサンと共に隠れていた。

 

 表のストリートではリーゼ・マクシア人とエレンピオス人が相手国を罵る大声を上げ、手近な資材などを武器に傷つけ合っている。

 

 ジュードはこれをアルクノアのしわざだと見抜いた。

 アルクノアの名が出ては、放っておけないものを抱えているのがアルヴィンである。

 

「はー、このパレンジ籠、けっこー力作で気に入ってたんだけどな」

 

 アルヴィンはパレンジ籠を足で壊し、中から隠しておいた愛用の大剣と銃を取り出した。

 

「ところでジュードのお連れさん」

 

 ジュードの横にいた、亜麻色のセミロングヘアに翡翠色の目をした少女が顔を上げる。

 

「おたく、戦いの心得はある?」

「一応……父から、軽くだけど、剣術と拳法を教えてもらってます。実践したことはない、ですけど」

「アルヴィン、ツバサにも戦わせるつもり!?」

「俺ら二人じゃ手に負えねえかもだろ。そういうジュードこそ準備してたみたいじゃん」

「バランさんに自己責任だよって脅かされたからだよ。――ツバサ、無理しないで……」

「――ここ、違う国の人同士が『なかよし』になるために作ってる場所なんだよね。本当に『なかよし』になれてた人たちもいたよね。そんな場所を争いに利用するなんて、絶対、よくないことだよ」

 

 驚いた。

 幼い見てくれと声に反して、このツバサという少女は、事態の本質を見つめていた。

 

 ツバサはペンダントトップをチェーンから外して立ち上がった。

 

「星の力を秘めし鍵よ。真の姿を我の前に示せ。契約の下、つばさが命じる。封印解除(レリーズ)

 

 星の飾りが宙に浮かび、台座に星と赤い宝石を備えた長杖を形成した。

 ツバサは長杖を掴み、まっすぐにアルヴィンを見返した。

 

「わたし、ツバサ・キノモトです。あなたは?」

 

 芯の通った甘い声に、杖のことも忘れてつい苦笑していた。

 

「アルフレド・ヴィント・スヴェント。アルヴィンって呼んでくれ」

「はい、アルヴィンさん」

 

 アルヴィンはユルゲンスに、騒ぎの元になったオッサンを捕まえておくよう頼み、ジュードとツバサと共に表通りに駆け出した。

 

 

 

 

 アルクノアを追いかける。追いかける。追いかける。

 

 すると、逃げていた戦闘員の一人が、こちらを向きもせず銃器をデタラメに打った。

 

(やべ! 後ろの一般人に当た……)

 

「『(タイム)』!」

 

 ツバサが叫ぶなり、空気が止まった。比喩ではなく本当に、アルヴィンとジュード、そして桜色の札に杖をかざすツバサだけが、この空間で動く者だった。

 

「『(ソード)』!」

 

 星の長杖がほどけ、杖よりは短い細剣に変化した。ツバサが細剣を無造作に揮うと、静止していた弾丸が全て二つに割れ、地面に転がり落ちた。

 

 停まっていた時間が動き出す。わっ、と音が溢れ返った。

 

「すい、ませ……これ、あんまり長く、使えなくて……アルクノアは?」

 

 杖に縋って苦しげに立つツバサの目から、闘志は消えていない。

 

 前方に視線を戻せば、逃げていくアルクノア兵たち。すでにマクスバード/エレン港へ抜けてしまっていた――が。

 

 一人の男が立ち、長刀を一閃した。

 それだけでアルクノア兵の半分が吹き飛ばされて倒れた。

 

「アーストさん!」

 

 ツバサは明るい声を上げて、ガイアスに駆け寄った。

 アルヴィンとジュードも走ったが、ガイアスとの再会を喜ぶ暇はない。

 

 彼らはガイアスの両脇を抜けて、アルクノア兵を追って埠頭の倉庫へ駆け込んだ。

 

 

 

 

 

 ツバサはガイアスとローエンに駆け寄り、長杖をペンダントトップに戻した。

 

「アーストさん、一時帰国じゃなかったんですか? ローエンさんも……あ! もしかして緊急の案件って」

「これのことだ。敵の動きが予想より速かったがな。あいつらが追っているなら」

「なるほど。これ以上の心配はなさそうですね。――集まった警備隊は全て暴動の鎮圧に当てました。おっしゃる通り敵の動きが速い。今回は完全に後手後手ですね」

「あ、あのっ。わたしにもできること、ありますか?」

 

 星の長杖を握り締めて見上げるツバサに、ガイアスとローエンの真剣なまなざしが注がれる。

 

「そばにいろ」

「え?」

「何かすることが出来たら言う」

「はい!」

 

 「できること」がまだないのに、そばにいていいとガイアスは言ってくれた。それがツバサを高揚させた。

 

「……アーストさん、その言い回しは自覚しないと誤解を招きますよ」

 

 ツバサはガイアスと見交わし、二人揃って首を傾げた。




 ここ、ガイアス組と絡ますかジュード組と絡ますかですんごい悩みました。
 ガイアス組にしたのは、原作「双極のクロスロード」でジュード&アルヴィンがストーリー的に二人で戦わねばならなかったことと、ツバサとガイアスの親密度を上げるためだったことが理由です。

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