CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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旧友の窮地

 ――ヘリオボーグ研究所。

 

「バランさん。ちょっと資料室に行ってきますね」

「データベース化されてない資料が要るの? 紙媒体から引っ張り出すの大変だよ~」

「ジュード先生、私も一緒に行きましょうか」

「お願いします。ありがとうございます、マキさん」

「じゃあ俺も。このまま座ってても煮詰まって、いい案出なさそうだし。帰りにコーヒーでも奢ったげるよ」

 

 ――その行動が、その日が最悪の1日になるきっかけであり、その日に最高の出会いを果たす分岐点だったと、ジュードは後に知ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 とあるマンションの一室に、魔力の波動が満ちていた。

 

「うん。いい感じ」

 

 ツバサは、痕こそ残ったものの傷自体は完治した太腿を見、満足して笑った。

 

 ――ターネットが「(ソード)」に操られてツバサに負わせた傷。

 現代なら救急病院に行けばいいが、エレンピオスにはまだそこまでの医療の発展はなかった。

 よって、ズルだと分かっていたが、ツバサは自己修復の魔法で傷口を塞いだ。

 

 修復や治癒の魔法が使えるのは、きょうだいではツバサともう一人の弟だけだ。母の友人がイギリスから母を訪ねてきた時に教わった。

 その友人の()()が何者かを知って、姉弟して仰天して固まったのも、懐かしい思い出だ。

 

 

 GHSが鳴った。ツバサはすぐに電話に出た。

 

「はい、ツバサです」

『ローエンです。おはようございます、ツバサさん』

「ローエンさん? どうしたんですか。こんな朝早くから」

『いえ。実は私の友人が怪現象に遭遇しているそうで。もしや、さくらカードかもしれないと思い、ご一報入れた次第です』

 

 ローエンが話す所によると――ガイアスのターネットの一件に触発されたかは措いて、ローエンは古い知人に電話した。電話して何を話そうと思ったわけでもない。ただ互いに近況報告でも、という軽い気持ちだった。

 

 

 “ごめん、ローエン。これ言うの、物凄く不本意なんだけど………………助けて”

 

 

 ローエンが慌てて彼に状況を尋ねると、彼はヘリオボーグの研究所の一室に閉じ込められたのだと言った。しかも、内部からはGHSが外部に繋がらない。非常開錠ボタンを押してもドアは動かず。

 一晩を凌いで、ようやく、精霊の助けとばかりにローエンから電話があったのだという。

 

 

『――という経緯でございます。ツバサさんに心当たりはありませんか?』

 

 ツバサは考える。キーワードは「部屋」、「閉じ込める」、「中から外へ通じる手段がない」――

 

「『(ロック)』かもしれません」

『ロック?』

「錠前のカードです。鍵穴に取り憑いて、その部屋を物理的にも魔法的にも封鎖する効果があります。確認ですけど、部屋の中からGHSは通じなかったんですよね?」

『はい』

「そして、その部屋はかなり古い」

『紙媒体の資料を仕舞うくらいですから、年季はあるかもしれませんが』

 

 すっく。ツバサは簡易ベッドの上で立ち上がった。

 

「だったら確定です。『(ロック)』のしわざです。準備してすぐ行きますから、その研究所の行き方、教えてください」

『承りました。ではトリグラフ中央駅にて30分後に。お待ちしております』

「へ? い、いえ、行き方教えてくれたら一人で」

『私が、ツバサさんと一緒に行きたいのですよ。アーストさんもね』

 

 アーストの名に一つ心臓が跳ねた。昨夜の一幕がいくつも瞼に蘇る。

 ツバサはぷるぷると頭を振って思考を切り変えねばならなかった。




 おや? 何かのフラグが立ちそうな予感がしますよ?(ニヨニヨ

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