CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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King&Girl meets Boys

 目覚めたツバサは狭い簡易ベッドの上で起き上がり、ぐいーっと伸びをした。

 

 小さな部屋を見回す。あるのはテーブルと椅子と小さな冷蔵庫くらいの、殺風景な1DK。これが今のツバサの住まいだ。

 

 

 ――「(ループ)」を封印後、ツバサはガイアス(アーストというのはプライベートな名前だった)とローエンに、さくらカード関係の事情を打ち明けた。長い長い時間をかけて。

 彼らはツバサの言葉を疑わなかった。

 それどころか、ローエンが保護者として立って、こうしてエレンピオスでの家まで世話してくれた。

 

 簡易ベッドから足だけを下ろし、GHSを開けた。このGHSもローエンが手配してくれた。

 

 すっかりローエンに甘えっ放しなので、生活費くらいは自分で稼いでいる。クエスト斡旋所に出ている、届け物やら探し物の項目は今やツバサの独壇場だ。できるだけ魔物退治のクエストは受けたくなかったからもある。

 

 GHSの電話帳を起動すれば、この世界に来てから3つ目の名前が載っていて、笑顔になるのを止められなかった。

 

「ルドガー・ウィル・クルスニクさん、かぁ。カードさんが気に入るくらいだから、きっと心が綺麗な人なんだろうなぁ。よし、わたしもがんばるぞー!」

 

 ツバサは簡易ベッドを立ち上がって、着替え始めた。

 

 

 

 

 ツバサはいつもの格好(母の親友があつらえてくれたコスチューム)に着替えてマンションを出た。

 今日も張り切って、さくらカード探しだ。

 

 意気揚々と歩いて商業区に差し掛かった時、騒ぎを耳で、肌で感じた。

 ツバサは迷わず人波を掻き分け、騒がしさの音源を目撃した。

 

 同じ制服を着た、ツバサと同じ年頃の男子5人が、警官から逃げていた。

 その内、眼鏡をかけた青年が一人、人とぶつかって転んだ。そのぶつかった相手というのが、何とガイアスだった。

 ツバサは急いでガイアスと眼鏡の青年に駆け寄った。

 

「アーストさんっ。大丈夫ですか」

「ツバサか。俺は何ともない」

「よかったあ。――あなたは? 怪我とかしてない?」

「クラック! 逃げろ!」

 

 先を走る赤毛の青年が叫んだことで、ツバサの質問に答えは返ってこなかった。

 

「いたぞ! 我らの威信が懸かっていますよ! 全員とっ捕まえなさい!」

 

 ツバサは、怒鳴る警官と焦るクラックを見比べ――クラックの腕を掴んで引っ張った。

 

「あんた……」

「早くしないと追いつかれちゃいます。走って」

「あ、ああ」

 

 クラックが立ち上がったのを見計らい、ツバサはクラックの手を引いて走り出した。

 ツバサらの後ろからはガイアスも付いて来た。前は「身分を隠している身だから厄介事は避けたい」と言っていたのに、今回は進んで関わってくれるらしい。ついにやけてしまうツバサだった。

 

 

 

 

 クラックの案内で、ツバサとガイアスは港の宿に逃げ込んだ。

 

「はうー……こんなに走ったの、マラソン大会以来だよ~」

「マラソン?」

「な、何でもないです! こっちの話」

 

 慌ててごまかしたのが功を奏してか、クラックはそれ以上を追及しなかった。

 

「クラック! 無事だったか」

 

 ロビーの最奥のスペースに座っていた赤毛の青年が、こちらを向くなり席を立ってやって来た。

 

「へへ、まあな。この人たちのおかげさ」

 

 すると、赤毛の青年は、ツバサとガイアスを隠しもせず睨んだ。

 

「俺はクラック。あんたたちは?」

「俺は……アースト」

「ツバサ・キノモトですっ。よろしくお願いします」

 

 ツバサは大きく頭を下げたので、頭のベレー帽が落ちた。慌てて拾う前に、クラックが拾って軽く埃を払って手渡してくれた。

 

「ありがとうっ」

 

 クラック以外にも3人の男子学生がやって来て、ガイアスに我先にと話しかけている。途中で警備兵を伸したガイアスの技がすごかったというのが話題の主眼だった。

 

「あいつはリーダーのターネット。俺の親友だ」

 

 その「親友」に舌打ちされたのをどう受け止めればいいか。

 ツバサは弱く苦笑するしかなかった。




 マシーナリーズとの早めの邂逅もあまり変えてはいないですね。

 ここで重要なのは、ツバサがまだ「錠」を封印していないということくらいですか。

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