CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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はじめての友達

「オレたち、しばらく街にいるから。用があったら報せて。それじゃ!」

 

 そう言い残し、新米導師は足取りも軽くアリーシャの屋敷を辞去した。

 

「まだ興奮冷めやらぬって感じだね」

 

 コタローはアリーシャの横に並んだ。

 

「そ、そんな顔をしているだろうか、私」

 

 アリーシャは慌てた様子で両頬を両手で押さえた。それでも頬の紅潮は隠しきれていないのだが。

 

「してる。そういうアリーも可愛いよ」

「からかわないでくれっ」

 

 からかったつもりはなく、むしろ本心から(下心はなく)言ったのだが。コタローは苦笑した。

 

「さて。導師さんもちゃんとアリーに会いに来たし、おれも行くかな」

「さくらカード探し? もう?」

 

 アリーシャには初めて会った時に事情の全てを打ち明けてある。

 何せ、風呂に入れられ、破れたコスチュームを繕ってもらい、細かい傷を全て手当てされ、温かいお茶まで出してもらったのだ。

 これでほだされるな、というほうが無理である。

 

 アリーシャは天族とは異なる「さくらカード」という存在や、異世界からの訪問者であるコタローに、最初こそ懐疑的だったが、証明のために「(ツイン)」のカードを使うと、目を輝かせて信じてくれた。

 

「レディレイクにはまだ見つけてないカードがあるはずだから」

 

 コタローは内ポケットから太極のマークの小さな円盤を出した。

 これはかつて、父がカードを探す際に使った羅針盤という物だ。この羅針盤を展開させれば、放つ光の標す先にクロウカード、今ではさくらカードが、ある。

 

 アリーシャは確かにコタローの「はじめての友達」だ。いつでも一緒にいて他愛ない話をしたり、買い物に出かけたり、街を散策したりしたい。

 だが、それは叶わない。アリーシャは姫で、コタローはさくらカードを探す使命を負っているから。

 

「またすぐ来るよ。その時は新しいカード、紹介するから」

「……私にできることは、ある?」

「あるよ。信じて待っててくれることと、笑顔で迎えてくれること」

 

 アリーシャはきょとんとしていたが、やがて、花咲くような笑顔を浮かべた。

 

「いってきます」

 

 コタローは庭の木へよじ登り、再び塀を越えて屋敷を出た。

 

 

 

 

 

「さてと」

 

 レディレイクの中心街に出たコタローは、適当な暗い裏路地に入り込んだ。

 取り出すのは、太極図の円盤。

 

「玉帝有勅 神硯四方 金木水火土 雷風 雷電神勅 軽磨霹靂 電光転 急々如律令」

 

 太極の円盤がくるくると回り、六芒星の形に展開する。中国魔術の様式が濃い羅針盤は、人前で展開しては後ろ指を指されかねない。

 

(視えないって点じゃ、ちょっと天族が羨ましいかも)

 

 溜息一つ。コタローは羅針盤を掲げた。

 光の線が空へ向けて走る。

 まっすぐでないということは、目当てのカードは遠くにありそうだ。レディレイクは広い。

 

(やっぱ『(フライ)』のカード欲しいって素直に言えばよかったかも。背中に羽根生やして飛ぶなんて男のおれには恥ずいとか思わなきゃよかった。あ~あ)

 

 恰好をつけて出て来て恥ずかしい限りだが、このままではすぐにアリーシャの屋敷に逆戻りしてしまう。

 

(それはヤダな。よし。頑張って足で探すか)

 

 羅針盤を小型化し、コタローは両頬を叩いて気合を入れ、表通りに出た。




 小狼が羅針盤を展開するのに使った呪文を調べるのにちょっと苦労しました。長!
 コタローは嘘がつけない子です。その辺はさくら似かもしれません。
 でも妙に意地っ張りなのは小狼譲りかもしれません^m^

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