CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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「輪」舞する運命の序曲

 ツバサはアーストとローエンに付いて歩いていた――のだが。

 

「こ、ここって長い道なんですね」

「いえ。最短で20分もあれば渡り切れるはずなのですが」

 

 ローエンは思案顔でアゴひげを撫でる。場を和やかそうとしたのに失敗して、内心「はぅー」である。

 

「ローエン。見ろ」

「これは……」

「ああ!」

 

 進んだ先には、たったさっきアーストとローエンが壊したロボット群が散らばっていた。

 

「わ、わたしたち、ここから先に歩いてった……ですよね?」

「はい。逆戻りもしていませんし、これは一体――」

「まさか…………さくらカード?」

 

 アーストとローエンが同時にツバサをふり返った。しかし、ツバサは自身の思考に没頭して気づかなかった。

 

(出られない。スタート地点に戻って来た。このキーワードが当てはまるカードは何?)

 

 ツバサは53枚のさくらカードの図柄を頭に思い描き、当てはまりそうなカードを思い出した。

 

「分かった! 『(ループ)』のカードね!」

 

 

 

 

 ガイアスとローエンの前で、ツバサが突然、ぱんっ、と両手を打ち鳴らした。

 

「分かった! 『ループ』のカードね!」

 

 するとツバサは床に両手両膝を突いた。

 

「何をしている」

「ここから出るために必要なものを探してるんです」

 

 ツバサは四つん這いのまま再び床観察に戻った。翡翠色の目は真剣そのものだ。

 

 ガイアスはツバサの横に片膝を突いた。

 

「それは俺たちにも見えるものか?」

「はい。ここから出られないのは、ここのどっかの空間がデタラメに繋がっちゃったからです。だからどこかに継ぎ目があるんです。見た目に絶対変なとこがあるはずなんです」

「分かった。――ローエン、俺たちも継ぎ目とやらを探すぞ」

「畏まりました」

「え!? で、でもでも」

「出られなくなって困るのは俺たちも同じだ」

「ありがとうございます!」

 

 ツバサは立ち上がり、深々とガイアスに向けて頭を下げた。

 先ほどのガイアスらとの言い合いはもはやツバサの中では流されたらしい。

 

「あっ」

「何だ」

「あった――」

 

 ちょうどガイアスとツバサの後ろに、赤い糸を張ったような「線」が引かれていた。

 「線」は橋の壁にまで及んでいる。

 似た風景が続く場所なので、風景の誤差に気づけなかった。痛恨の極みである。

 

「これか」

「これです! これを切っちゃえば封印でき……」

 

 そこでツバサははっとしたように口を押さえ、ガイアスを見上げた。

 

「斬ればいいんだな」

 

 ツバサは口を押さえたまま大きく肯いた。

 

 ガイアスは長刀を構え、「線」を一刀両断した。

 すると、コドモが折り紙で作ったような紙の輪がふよふよと現れた。

 

 ガイアスはそれも斬ろうとしたが、その前にツバサが立ちはだかった。

 

「これはダメなんです!」

 

 ツバサはガイアスに背を向け、ペンダントトップの星型の飾りを外した。

 

「星の力を秘めし鍵よ。真の姿を我の前に示せ。契約の下、つばさが命じる。封印解除(レリーズ)!」

 

 大気が揺れ、微細な風が吹き始める。マナがあの星型の飾りに流れ込んでいるのだ。

 

 星型の飾りが拡大していく。三角の線を六つ繋いだ六芒星の中心には、大きな赤い宝石。一角から柄が伸びていく。

 それは六芒星をモチーフにした、ツバサの身長より長い杖だった。

 

「汝のあるべき姿に戻れ! さくらカード!」

 

 振り下ろした杖の先端に、細長い札が象られる。

 紙の輪は分解し、その札に吸い込まれて消えた。

 

 ツバサの手に桜色の細長い札が収まってから、ツバサは堪えきれないといわんばかりの笑みを浮かべた。

 

「やったー! お母さん、見てた!? つばさ、一人でできたよー!」

 

 夢中になっているツバサの手から、ガイアスは札をすばやく取り上げた。

 

「あ!?」

「何だこれは? 精霊術とも算譜法(ジンテクス)とも違うようだが」

「か、返してください! それ、大事な物なんです!」

「アーストさん。さすがに今のは大人げなかったですよ」

「――すまん」

 

 ガイアスが札をツバサに返すと、ツバサは心から安心した顔をした。

 

 ツバサはカードを足に巻いたカードホルダーに納めるなり、

 

「あの、ご迷惑おかけして、本当にごめんなさい!」

 

 勢いよく頭を下げた。

 

「このカードのせいで、変な道歩くことになっちゃって。わたしたちがこの子たちの封印、解いちゃったから。だから、ごめんなさい。迷惑、かけて」

 

 悄然としたツバサを見下ろしながら、ガイアスは考えを巡らせる。

 

(あの杖、少量とはいえマナを消費して実体化していた。それに空間をデタラメに繋げるなど、ローエンの精霊術でもできるかどうか。その現象をこんな小さなカードが起こした? しかもそれを、この娘は封印したと言った)

 

「――どうやら事情を詳しく聞いたほうがよさそうだ」

「ほえ?」

「ここでは落ち着いて話もできん。場所を移す」

「――アーストさん。ツバサさんが困っていますよ」

 

 ローエンが囁いた。

 縮こまるツバサは、言われてみれば確かに、猛獣に遭遇したウサギのようだった。

 

「お前の話を聞きたい。そのカードとやらについて」

「この子たち、悪いことに使ったりしません?」

「しない。約束する」

「なら、いいです」

「いいのか? 口から出任せかもしれないぞ」

「さっき、手伝うって言ってくれました。それに『(ループ)』を切るの、わたしだけじゃできなかったし、何も聞かずに切ってくれました。だから」

 

 ツバサは満面の笑みでガイアスを見上げた。

 

「ツバサさんがよろしいのでしたら、マクスバードのホテルに行きましょうか。ちょうど我々も部屋を取っていたのです」

「はいっ」




 2話目も特に変えておりません。そのままです。

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