CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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つばさ/エクシリア2編
王様とカードキャプター2世


 べちゃっ

 

「ふみゃ!」

 

 木之本つばさが異世界で初めて体験したことは、顔面からコケることだった。

 

「う~、いったぁ」

 

 顔をこすりながら起き上がった。

 全身をチェックする。服装、良し。カード、良し。鍵、良し。

 

 母の親友があつらえてくれたベレー帽を直し、つばさは歩き出した。

 

(何だろ、ここ。商店街? アーケード? にしては、お店もやってないし、人もいない。まだ作ってる途中、なのかな)

 

 

 

 

 ――木之本つばさは特別な使命を負ってこのエレンピオスへ来た。

 

 つばさ自身と、弟たちと妹が、好奇心で封印を解いてしまった魔法具「さくらカード」を探し出し、封印して持ち帰ることである。そのためにはるばる異次元まで渡ってきたのだ。

 

 

 “あなたたちが散らばらせたカードはね、イタズラしたり、悪さしたり、最悪、人様を傷つける危険な物なの。だから普段は主のわたしの近くに置いてあった。その意味が分かる?”

 

 

 母に諭され、つばさはただ「ごめんなさい」としか言えなかった。

 

 そんなつばさたち兄弟姉妹に、父が言い渡した。

 異次元に散逸した「さくらカード」を再封印し、持ち帰るようにと。そのための封印具も授かった。

 

 

 “わたしがいけないの! お姉ちゃんなのに止めなかったから。だから、カード探しに行くのは、わたしだけにして! ちゃんと全部集めるから”

 

 

 だが、父は「全員でやったなら全員が責任を負うべき」として、結局、兄弟姉妹全員で旅立つことになった。

 

 かくなる上は最短でさくらカードを封印し、弟妹たちの世界へ手助けに行くほかない。

 

 つばさは決意も新たに、ペンダントトップを握り締めた。

 

 

「――の次は中身だ。この地を二か国協調の象徴とする上で締結を急がねばならん条約は山とある。だというのに」

 

 ばちっ、ばちっ。声に混じって、家電製品がショートしたかのような音がする。

 

 つばさは慌てた。

 慌てて、近くの荷箱の陰に隠れた。

 

「国家の大きな決断時に水を差すがごとき下らぬ所行。この俺が見過ごすとでも思ったか」

 

 壊れたロボットに囲まれて、刀を持った背の高い男と、燕尾服でびしっと決めた眼鏡の老人が、いた。

 

「ガイアスさん」

「アーストだ」

「失礼、アーストさん。この自立兵器、やはり製造番号が削り取られていますね。アルクノアに横流しされたものと見て間違いないでしょう」

 

 男と老人の話に聞き耳を立てていたつばさだが、会話の内容の3分の1も分からなかった。

 

「! そこにいるのは誰だ!」

 

 ここで動かなければ死ぬ。母譲りの第六感がつばさに告げた。

 

 つばさは方向もデタラメに飛びのいた。直後に、隠れていた荷箱が半分に裂けた。

 

「? 子供……?」

 

 危なかった。飛びのかなければ大怪我をしていた。

 

「翡翠色の虹彩……リーゼ・マクシア人でしょうか」

「いや。それにしては纏う空気が違う。エレンピオス人の格好はしているが」

 

 むかーっと、した。つばさは勇気を出して立ち上がり、男を鋭く指差した。

 

「ひ、人に刃物向けちゃいけないって、お母さんに教わらなかったんですか!?」

 

 …………物凄い間があった。

 

 とたんに男のほうが後ろを向いて口元を押さえた。

 

「アーストさん。笑いたい時は声を上げて思いきり笑ってもいいんですよ」

 

 人が勇気を掻き集めて注意したのに、この態度。さらにむかーっとしたつばさである。

 

「失礼しました。貴女のようなお嬢さんがいるとは思いませんで。あの方にも悪気はなかったのです。少しピリピリする事情がありまして。どうか許していただけませんか?」

「そ、ういうことなら……はい、分かりました」

「ありがとうございます。ところで、お嬢さんはどうしてこのような場所に?」

「ええっと。道っ、道に迷っちゃって、出たとこがここでっ。それで外に行こうとしたら……」

 

 この老人とあの男がいたのだ。と、両拳をぶんぶん揮って、説明できる範囲で説明した。

 

「ではお詫びに我々がお送りしましょう。エレンピオス側のマクスバードでよろしいですかな」

 

 つばさは黙って肯いた。

 

 つばさにはまだこの世界の知識がない。変に疑われないためにも、老人の言うことに従ったほうが賢明だと考えた。

 

 アーストと呼ばれた男はすでに先を行っている。

 老人は笑ってつばさの背を押した。

 

(藤隆おじいちゃんみたい)

 

 つばさはそれが嬉しくて、老人に対しての警戒をすっかり解いた。

 

「おっと、いけませんでした。私はローエン・J・イルベルトと申します。お嬢さんのお名前は?」

「つばさ、です。――ツバサ・キノモトです!」

 

 つばさは元気に名を告げた。




 まずは一話目の改訂版です。特に変えていません。

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