CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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決戦、そして彼女の選択

 ついにヘルダルフがマオテラスと神依化して、巨大なドラゴン(西洋竜)となってコタローらを襲った。

 

 アルトリウスの玉座はすでに崩れ、辛うじてコタローらが駆け回れる足場が残っている程度。

 その足場を彼らは、ヘルダルフの鉤爪を避け、穢れのブレスを避け、縦横無尽に走った。

 

 スレイは次々に神依化し、最大の技でジークフリードの引鉄を引いた。

 

 聴こえるはずがないのに、コタローにさえ、死に向かうとは思えないほど強くスレイを鼓舞する天族らの声が聴こえた気がした。

 

 

 “今だスレイ!”

 

 “幕を引きましょう!”

 

 “終わりにするわ!”

 

 

『無駄だ!』

「まだみんな戦ってる!」

「そうだよ! あんた、それがわかんないの!?」

『現実を受け入れられんのか……愚か者どもめ』

「現実なら今、私たちの目の前にある! お前を追い詰めているという事実として!」

 

 アリーシャもロゼもまた、ナイフを、槍を揮い、彼女らの全力でスレイをサポートしている。

 

 そして、コタローも。「(パワー)」と「(ファイト)」を纏い、微力ながらも神依化ヘルダルフに拳と蹴りを打ち込み、他の3人に鉤爪が伸びれば、「(ウッド)」で巨腕を絡め取って攻撃を止めた。時には「(フロート)」や「(スルー)」をスレイらに作用させて攻撃から逃がしもした。

 

 高位カードでないとはいえ、さくらカードを5枚以上同時使用というのはコタローの魔力どころか生命力も削っていたが、構っていられる場合ではなかった。

 

(だってアリーは、スレイさんは、ロゼさんは、命懸けで戦ってる。天族の人たちは、文字通り命を燃やして突破口を開いてくれてる。そんな中でおれだけ何もしないわけにはいかない)

 

 スレイが風の神依を纏い、ジークフリードを神依化ヘルダルフに向けた。――これがラストショット。

 

「「はああああっっ!!」」

 

 横薙ぎに振るわれた巨腕を、左右からロゼとアリーシャが体で受け止めた。

 

「「スレイ!」」

「ああ!」

 “いい頃合いだな!”

「“シルフィスフィア!!”」

 

 魔弾は過つことなくまっすぐに、神依化ヘルダルフに吸い込まれて、炸裂した。

 

「はぁ、はぁ……終わったよ、みんな……っ!」

 

 倒れたロゼをアリーシャが慌てたように支えた。

 

「大丈夫、息してる」

「よかった」

 

 アリーシャはそっと、意識も薄いロゼを床に横たえた。

 

「万策尽きたか」

 

 ぞっとしてふり返った――ヘルダルフはそこに健在だった。

 

 

 

 

(あれだけやって、あんなに犠牲にして、まだ? そんなのって)

 

 すると、スレイが導師のマントを翻してコタローらの前まで来た。

 

 スレイは悲しげに笑った。

 

 スレイの闘気を纏った拳が床に叩きつけられた。

 足場が切り離される。スレイとヘルダルフがいる足場だけが穢れの海へ堕ちていく。

 

 コタローはとっさに「(フロート)」でスレイを引き上げようと構えた。

 

 だが、そのコタローより速く行動を起こした者がいた。

 アリーシャだ。

 

 アリーシャはためらいも迷いもなく、羽根が生えているかのように軽やかに、飛び降りた。

 

 一瞬、すれ違う時だけ、アリーシャの表情が見えた。――笑って、いた。

 

「っ……『(フロート)』」

 

 怪我がないように、決して引き上げるためではなく、コタローは落ちるアリーシャに浮力を働かせる魔法を使った。

 

 遠くなっていく足場の上、スレイがアリーシャを抱き止めたのを、確かに見届けた。




 最後の最後にやりたかった、とっておきのシーンをついに書けて感無量です。
 マーリンドでの「君を追いかける」発言をアリーシャは貫きました。

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