CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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白でも黒でもなく

 村を抜け、かつてはマオテラスの神殿だった場所へ至る階段の前で、アリーシャらは一度止まった。

 

「アルトリウスの玉座。かの者の牙城ですわ」

「おっそろしい量の穢れだな。スレイがいなけりゃドラゴンになってるぜ」

「――ザビーダ。ありがとう」

 

 突拍子のない謝辞に、さすがのザビーダも首を傾げている。

 

「オレたちの出会いが救う方法を生んだってのが、すげー嬉しくてさ」

「お前……ったく、この甘ちゃん導師め」

 

 スレイらしい受け止め方だ、とアリーシャはこっそり微笑した。

 

「あ、そうだ。ザビーダ、帽子貸して」

 

 これまたロゼが突拍子もなく言った。

 ザビーダが笑って帽子をロゼに被せた。ロゼは帽子の左右の鍔を引っ張って何かを呟いた。全ては聞こえなかったが、「デゼル」という名前が混じっていたのはアリーシャにもわかった。

 

「はい。返す。サンキュ」

「もういいのかい?」

「おう!」

 

 一番に進み始めたのはスレイとミクリオだった。さらにロゼが続いた。

 

「……スレイたち、カムランに入ってから一度もおじいちゃんの話しなかったわね」

「ええ。ゼンライ様に危害を加えるのは無意味だと、かの者に示しているのでは」

「ビビってるように見えるぜ、俺はよ。あれじゃ自分らの弱点を認めてるようなもんだ」

「なればこそ、我々でスレイとミクリオ様を支えなければ」

 

 ライラとエドナ、ザビーダがアリーシャを一斉に見た。

 

「す、すみません。従士の立場で出過ぎたことを」

「いいえ。アリーシャさんの言う通りでしたわね。導師を支えるのが従士と主神と陪神の役目。ありがとうございます、アリーシャさん」

「ライラ様……」

 

 そこでコタローが口を開いた。

 

「アリー。ライラさん、何て?」

 

 アリーシャはライラの言葉をそのままコタローに伝えた。

 

「アリーシャさん。ついでにコタローさんに『どの立場でもないあなたですが、どうか私たちを助けてくれれば幸いです』と伝えてくれますか」

「あ、はい。――――、――――」

 

 コタローはふむふむと肯く。

 

 アリーシャはコタローの背を押して、ライラの前に押し出した。返事は自分で伝えてほしかった。

 

「ええっと。おれなんかで役に立つなら、頑張りま……イテッ」

「はい、ありがとうございま……あいたっ」

 

 コタローとライラが同時に頭を下げたせいで、頭と頭がぶつかったのだ。

 

「いてて……あはは。ちゃんといるんだな、そこに。最近おれ、仲間外れ多かったから、忘れてたや」

 

 

 

 

 

 城に入り、一間の扉を開ければ、そこがすぐに玉座の間だった。

 

「あれが……ヘルダルフ、ですか」

 

 コタローは思わず震える腕をもう片方の腕で押さえた。

 自分にも視える上に、かの獅子の男が噴き上げる穢れまで初めて視えた。

 あれが、この世界を侵す者。

 

(こっちは4人……いや天族の人たち含めたら、8人。でも、8人で束になっても勝てない気がする)

 

 ヘルダルフは玉座を降りて来て、語る。苦しみから解放される世界、それを求めることが摂理だと。

 

「いいえ。それは当たり前で多数意見であるというだけで、摂理じゃない。だって私が逃げた先に、解放なんてなかった」

 

 アリーシャに続いてスレイらも反論する。苦しみがあるから楽しさが、生きる実感があると。

 

 

「最後にもう一度問おう。導師スレイ。ワシに降れ」

「断る!」

 

 ずしん。ヘルダルフが立ち止まった。この時点でコタローはすでに星の鈴を封印解除(レリーズ)し、さくらカードを手に全て出していた。隣を見れば、アリーシャも同じだった。

 

「災禍の顕主と導師。やはり世の(こく)(びゃく)ということか。だがワシは白とは変じぬ」

「オレも黒にはならない!」

 

 おのおのの武器を構えたスレイらの前に、コタローは一歩大きく踏み出した。

 

「コタロー?」

「おれが隙を作ります。アリーと導師さんとロゼさんは、そこに3連続で神依の技を叩きこんで、マオテラスとの繋がりを見つけてください」

 

 ぱしっ。

 アリーシャがコタローの手に何かを握らせた。

 彼女に預けていた3枚のさくらカードだった。

 

「任せるよ」

「うん――任せて!」

 

 かつてこれほど意志が沸き立ったことがあろうか。役立たずだと思っていた自分にもあった、「役に立ち方」。

 

 すると、肩を大きな掌が叩く感触があった。

 

「ザビーダ様が手伝ってくださるそうだ」

「あ……ありがとう、ございます」

 

 風を操る天族が味方になった。その時点でコタローの中で瞬時に戦略が構築された。


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