CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

60 / 180
力は求めないモノ

 暗く静まり返ったカムランを歩きながら、唐突にロゼが言った。

 

「コタって神依化はできないのよね。素質がないんだっけ」

「え? ああ、はい」

「ロゼ!」

「何よ、アリーシャ。怖い顔して。本当のことだし、コタだって受け入れてることでしょ」

「受け入れてたとしても、他人が堂々と指摘していいことと悪いことがある」

「ちょ、アリーもロゼさんも落ち着いて。ロゼさん、何でいきなりそんなこと?」

「んー。いや、人間4人に天族4人でしょ。コタも神依できたらぴったり合うなーって思っただけ」

 

 困った。どう返せばアリーシャにもロゼにも恥を掻かせずにすむか。考えに考え――

 

「ロゼさん。初心忘るるべからず、ってことわざ、知ってますか」

「知ってるわよ、そんくらい。始めたばっかの頃の初々しい気持ちを忘れず謙虚にやってこーってことでしょ」

「残念。ハズレ」

「「ちがうの!?」」

「導師さんまで……この『初心』は『初めてやった時の未熟さ・みっともなさ』って意味でして。『あのみじめな頃には戻りたくないから頑張ろう』というのが本当の意味なんです。おれはまさにそっちの意味で使ってます。魔力がなくて、一番簡単な魔法もできなくて、馬鹿にされて陰で笑われる、それが『本当のおれ』です」

 

 ロゼの言う通りその部分は受け入れていたからか、意外とすんなり口にできた。

 

「それを忘れようとしてカードたちや従士の立場に縋ったら、後からみじめになるし、手に入れた力を手放したくなくなる。だから、最初からその手のものは断るんです」

「ずっとコタローが従士契約断ってきたのって、そういうことだったんだ」

「そういうことだったんです」

「うーん、納得したよーなできないよーな」

「もういいじゃないか。コタローがそうしたいなら私は味方する」

「ありがと、アリー」

 

 

 

 

「でもそれって、ワタシたちと話したりできなくてもいいってことでもあるわよね」

 

 アリーシャはふり返った。

 エドナがジト目でコタローの背中を睨んでいた。

 

「エ、エドナ様っ。コタローは決して皆様を蔑ろにしたいと思ってるわけでは」

「慌てすぎ」

「まあ、視えない聴こえないなりに、コタ坊もよくやってきたじゃねーの」

「アリーシャさんやカードさんには優しいコタローさんです。きっと私たちをいつでも視られる状態であれば、私たちとも良い関係を築いてくださったでしょう。――そんな日が来ないのが、少し残念です」

「ああ。ヘルダルフと相対すれば、僕らは――」

 

 やはり()()するのか。わかっていてもアリーシャは俯いてしまった。

 

「辛気臭い顔しない」

「いたっ」

 

 エドナが傘の先端でアリーシャの額を小突いたのだ。

 

「あなたはスレイだけ見て、スレイだけ追っかければいいの。わかった?」

「エドナ様……はい。ありがとうございます」

 

 アリーシャは腰を折って礼をし、先を進むスレイを追いかけた。




 今更ですが、コタローが従士契約を頑なに蹴ってきた正式な理由を。
 ここを逃すと言えそうにないので。

 うちでは言いにくいことを言うのはロゼの役回りです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。