CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
暗く静まり返ったカムランを歩きながら、唐突にロゼが言った。
「コタって神依化はできないのよね。素質がないんだっけ」
「え? ああ、はい」
「ロゼ!」
「何よ、アリーシャ。怖い顔して。本当のことだし、コタだって受け入れてることでしょ」
「受け入れてたとしても、他人が堂々と指摘していいことと悪いことがある」
「ちょ、アリーもロゼさんも落ち着いて。ロゼさん、何でいきなりそんなこと?」
「んー。いや、人間4人に天族4人でしょ。コタも神依できたらぴったり合うなーって思っただけ」
困った。どう返せばアリーシャにもロゼにも恥を掻かせずにすむか。考えに考え――
「ロゼさん。初心忘るるべからず、ってことわざ、知ってますか」
「知ってるわよ、そんくらい。始めたばっかの頃の初々しい気持ちを忘れず謙虚にやってこーってことでしょ」
「残念。ハズレ」
「「ちがうの!?」」
「導師さんまで……この『初心』は『初めてやった時の未熟さ・みっともなさ』って意味でして。『あのみじめな頃には戻りたくないから頑張ろう』というのが本当の意味なんです。おれはまさにそっちの意味で使ってます。魔力がなくて、一番簡単な魔法もできなくて、馬鹿にされて陰で笑われる、それが『本当のおれ』です」
ロゼの言う通りその部分は受け入れていたからか、意外とすんなり口にできた。
「それを忘れようとしてカードたちや従士の立場に縋ったら、後からみじめになるし、手に入れた力を手放したくなくなる。だから、最初からその手のものは断るんです」
「ずっとコタローが従士契約断ってきたのって、そういうことだったんだ」
「そういうことだったんです」
「うーん、納得したよーなできないよーな」
「もういいじゃないか。コタローがそうしたいなら私は味方する」
「ありがと、アリー」
「でもそれって、ワタシたちと話したりできなくてもいいってことでもあるわよね」
アリーシャはふり返った。
エドナがジト目でコタローの背中を睨んでいた。
「エ、エドナ様っ。コタローは決して皆様を蔑ろにしたいと思ってるわけでは」
「慌てすぎ」
「まあ、視えない聴こえないなりに、コタ坊もよくやってきたじゃねーの」
「アリーシャさんやカードさんには優しいコタローさんです。きっと私たちをいつでも視られる状態であれば、私たちとも良い関係を築いてくださったでしょう。――そんな日が来ないのが、少し残念です」
「ああ。ヘルダルフと相対すれば、僕らは――」
やはり
「辛気臭い顔しない」
「いたっ」
エドナが傘の先端でアリーシャの額を小突いたのだ。
「あなたはスレイだけ見て、スレイだけ追っかければいいの。わかった?」
「エドナ様……はい。ありがとうございます」
アリーシャは腰を折って礼をし、先を進むスレイを追いかけた。
今更ですが、コタローが従士契約を頑なに蹴ってきた正式な理由を。
ここを逃すと言えそうにないので。
うちでは言いにくいことを言うのはロゼの役回りです。