CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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抗うことは生きること

「あなたがそのカードを使う瞬間を待っていた」

 

 アリーシャが懐からさくらカードを出して投げた。「(ミラー)」のカードだ。

 

 槍の穂先が「(ミラー)」を突くなり、コタローらの前に鏡の壁が出現した。

 鏡の壁は「(アロー)」が放った矢を全て呑み込み、逆に「コタロー」に向けて矢を発射した。

 

(そうか! 『(アロー)』の矢は魔力で出来てる、いわば純粋なエネルギーの塊。それなら『(ミラー)』でも打ち返せる!)

 

「なっ……ああああああああっっ!」

 

 「コタロー」に無数に矢が刺さった。自分のことではないとはいえ、自分の姿をしたモノが傷つくのを見るのはいい気分ではなかった。

 

 石畳を後ろへ滑って倒れた「コタロー」が、視界から消えた。幻術が解けて純粋な天族の姿に戻ったからだろう。

 

 幻術が解けたことで、さくらカードたちがコタローの手元へ戻ってきた。今が戦いの最中でなければ涙していたかもしれない。

 

「おかえり」

 

 それだけ告げて、コタローはいつもと逆の内ポケットにさくらカードを入れた。

 

「もうやめましょう、サイモン()

 

 アリーシャが前へと進み、膝を突いた。

 

 サイモンは一体どんなことをアリーシャと話そうとしているのか、コタローには知れない。

 すると、肩に手が置かれる感触がした。スレイだった。

 

 視えた。サイモンの姿。前に見たエドナとそう変わらない年頃の、濃紫で全身を包んだツインテールの少女だった。

 

「抗えばそれだけ苦しむ。なぜ、苦しみから解放されありのまま生きるという、我が主の目指す世界を否定する。忘れたわけではあるまい? その業ゆえに命を落とした風の天族の存在を」

 

 サイモンが短杖をアリーシャに振り下ろした。アリーシャは避けなかったため、短杖が彼女の肩を叩いた。だがアリーシャは笑って短杖の先を掴んで下ろさせた。

 

「わかります。私も一度、現実の全てから逃げ出しました。けれど、そんな私を受け入れてくれたんです。スレイは。コタローは。ミクリオ様たちは」

 

 アリーシャはコタローらをふり返り、キレイに笑った。それからまたサイモンと向き直った。

 

「サイモン様。抗えばいつだって優しい世界が待ってるなんて言いません。抗うこと、そのものが、生きるということなのではないでしょうか」

 

 それはいつだって正しく在ったのに嘲笑を受け続けたアリーシャだからこそ、重みのある言葉だった。

 

「何だそれは……そんなもの、空虚な自己満足ではないか!」

「いいじゃねえの、自己満足で」

「結果は重要だが、かといってそれは経過が不用には繋がらない」

 

 ザビーダもミクリオも、アリーシャの主張を肯定した。

 

「サイモン様。今は我々も急いでおります。ですから、またゆっくりお話しましょう。全てが終わってから」

 

 アリーシャが立ち上がり、肯いた。スレイが肯き返してから、コタローの肩から手をどけた。

 

 もう壁の幻影はなかった。その道を彼らは進み始める。

 

 幼い少女の啜り泣きが聴こえた気がした。




 先に言っておきます。
 作者はアリーシャDLCを知りません。プレイしてませんし、プレイ動画も観ておりません。
 なぜなら、拙作のアリーシャはDLCのアフターアリーシャには繋がらないからです。

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