CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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奪われたカードたち

 遺跡を進みながら、コタローは考えていた。

 

 道中、サイモンという天族が、幻術で何度もスレイとロゼの幻を出して攻撃してきた。本人たちは相手が自分の鏡写しであろうと容赦なく退けた。

 

(仲間の姿をした幻を傷つけるのって、どんな気分なんだろう。おれだったら、幻でもアリーを傷つけるなんてできないのに)

 

 

 ついにコタローらは遺跡の最奥に辿り着いた――つまり、行き止まりだった。

 

「何で!? 一本道だったのに」

「これも、幻?」

「……もうすぐ幻術は解けると思う。サイモンは天族だから」

 

 スレイが誰もいない空間を見据えた。

 

「こんな穢れた領域の中じゃ、力を揮うのも難しいんじゃないか」

 

 スレイの声に応えるように、ちょうどコタローの背後の空間が波打ち、気配が増えた。

 

(やばい!)

 

 ふり返った時には遅かった。布が破れる鈍い音。棒か杖かでさくらカードが入ったほうのポケットが破かれたのだ。

 

 さくらカードは石畳に散らばった。

 

 力のさざ波を感じた直後、正面に立っていたのは、星の鈴を持ったコタロー自身だった。

 

「おれ!?」

「仲間を真似て攻撃させにくくしようってわけ? 悪いけどさっきので慣れちゃったわよ」

「いいや。姿を真似る利点は他にもあるさ。例えば」

 

 「コタロー」の姿をしたサイモンは、紙垂を翻して星の鈴を掲げた。

 

「木之本桜の創りしカードよ。その力を開放し、我が敵を討ち払え。新たな主、虎太郎の名の下に」

 

 さくらカードが浮き上がるや、その内、「(ウッド)」のカードが発動した。

 木の蔓がコタローらを鞭のように打たんと迫った。コタローやスレイらはどうにか避けた。

 

「こういうこともできるわけだ」

「カードの個人認識機能を幻惑したのか!? お前ぇッ!」

「あははははは!! この札自体の魔力とやらで私はさほどの力を要しない。私が穢れに負けるのが先か、貴様らが札の霊威に負けるのが先か。競争と行こうじゃないか!」

 

 次に「コタロー」が使ったのは「(サンド)」のカードだった。

 建物の中にも関わらず砂嵐が生じ、こちらに渦を巻いて向かってくる。

 

「――この!」

 

 翠の神依を纏ったスレイが、風の壁を起こして砂嵐を防いだ。

 風壁と砂嵐が晴れた時、正面に「コタロー」はいなかった。

 

「ここだよ」

 

 声は上からした。見上げれば、天井に足を着けて逆さまに立つ「コタロー」がいた。「(フロート)」で浮いているのだ。

 

「ならこっちだ! 『ルズローシヴ=レレイ』!」

 

 スレイの神依が翠から青へ変化した。スレイは大きな弓から「コタロー」に矢を放った。

 だが矢は、確かに「コタロー」の脳天を貫く軌道だったのに、「コタロー」をすり抜けた。

 

「『(スルー)』かっ」

「スレイ、代わって! ――エドナ! 『ハクディム=ユーバ』!」

 

 ロゼがエドナと神依化し、逆さに立つ「コタロー」に向けて跳び、ナックルパンチをくり出した。

 

「『(ウッド)』」

 

 木の蔓が蜘蛛の巣のようにロゼを磔にした。

 

「く、このっ、何で、取れな…!」

 

 五行思想だ。木剋土。土は木に弱い。母が「(アーシー)」のカードを封印する時に「(ウッド)」を使ったことは聞いていた。

 迂闊だった。地水火風の属性がある天族なら、似たような思想を持っていてもおかしくなかったのに。

 

 「コタロー」は天井を蹴って離れ、一回転してロゼの腹に両足を叩き込んだ。

 

「ぐぇ……!」

「ロゼッ!」

「ロゼさん、神依解いて! 早く!」

 

 ロゼはコタローの言を聞き入れ、エドナとの神依を解いてくれた。ロゼともう一人分の重さが床に落ちる音がした。

 

「げほっ、げほっ」

 

 コタローは正面を向き直した。さくらカードは一列に並んで宙に漂っている。

 

「げっほ……ねえ、コタ。いっそあのカード壊しちゃだめかな」

「なっ! ダメに決まってるでしょう!」

「でもあれさえなきゃサイモンも何もできないよね!?」

「だからってあれは母上の……」

 

 そう、母の「トモダチ」なのだ。例えカードの形で、言葉が通じず、時にこちらを困らせるイタズラをしても。

 そして今は、主となったコタローにとっても友達なのだ。

 

「『(アロー)』」

 

 言い合っている間に「コタロー」は正面に降り立ち、カードの一枚に星の鈴をかざしていた。

 「コタロー」の後ろに無数の矢が現れる。刺されば命に関わる。それでも――それでも。

 

 

(おれには友達を傷つけるなんてできない)

 

 

「放て!!」

 

 矢の弾幕に刺さる覚悟をほぼ決めた、その時だった。

 

 

「あなたがそのカードを使う瞬間を待っていた」




 普通に幻術戦では原作そのままなので、ちと変化球を。
 でないと何のためにCCさくら要素を入れたか分からなくなりますからね(^_^;)

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