CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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選んだものは

 アリーシャとコタローという新しい仲間を迎えたスレイらは、決戦前に彼らを塔の街ローグリンへ連れて行き、集めた瞳石の記憶――ヘルダルフがいかにして災禍の顕主となったか、災厄の時代が何故始まったかのいきさつを見せた。

 

 

「そうか。こんな事情が……それで君は災禍の顕主を、いや、ヘルダルフを救いたいと言ったんだね、スレイ」

 

 スレイは肯いた。

 

「短い時間しか共に過ごしていないけど、うん、実に君らしい答えだと思う」

「アリーシャにそう言ってもらえると心強いな」

 

 笑い合うスレイとアリーシャ。……もはやロゼと天族がいようがいるまいが二人の世界だと、当人たちだけが気づいていない。

 

 コタローが石碑に触れた。

 

「けど、ここまで来ちゃった人を救うってことは……ミケルさんのかけた『永遠の孤独の呪い』を解くことですよね。それってつまり……」

「うん――」

 

 スレイはベルトから、ザビーダから譲られたジークフリードを取り出した。

 

 天族をエネルギーに変換し、意思ある攻撃として撃ち出し、ヘルダルフとマオテラスの力の繋がりを絶つ。その果てにヘルダルフはようやく人に戻るだろう。スレイはその時にヘルダルフを――

 

「――わかったよ」

 

 アリーシャが、ジークフリードを握るスレイの手に、上から両手を重ねた。そして、微笑んだ。

 

「それが君の出した答えなら、私はどんな結末になろうと君と共にいよう。君を追いかけると言ったからな」

「おれは――」

 

 コタローは一度大きく息を吸い、吐いた。

 

「魔法使いの究極の魔法は、『人を幸せにする魔法』だって聞いたことがあります。ならおれは、魔法使いのおれがどこまで通用するか試したい。力も、心も、全部ぶつけて」

 

 虎を思わせるまなざしに宿るのは真剣さ。

 

 もしアリーシャとコタローが、スレイの出した答えとは違う答えを出していたら。それをスレイは心の底で恐れた。

 だが、彼女らは付いて来てくれると言った。

 

 

 

 

「イズチに戻ろう。カムランに続く道があるはずだ」

「そういえば、カムランの事の直後にジイジたちは駆けつけていたな」

 

 すでに先を見据えて歩き出したスレイとロゼと天族らの背中を、アリーシャは寂しげに見つめた。

 

「アリー、行かないの?」

「コタロー」

 

 アリーシャはコタローをしかと見据えた。

 

「私はスレイと共に行く。その結果が、もし、君との別れに繋がっても。そうしてあげたいと、思ってしまったんだ」

 

 アリーシャらはスレイから距離を空けて歩き出した。

 

 マオテラスの器と自浄作用については、ローグリンまでの旅路で説明された。そのカラクリを知ったスレイがどういう手を打つかも、笑顔やはしゃぎ方が少ないスレイを見れば予想はついた。

 

「……そう。決めちゃったんだね、アリーも」

「すまない」

「謝らないで。アリーは何も悪いことしてないんだから。それに、アリーは女の子だからね」

 

 コタローが微笑んだ。その笑みに何度癒され、励まされたことか。スレイと知り合う前からの友達で、辛い時にこそ一緒にいてくれた、たった一人の親友。

 

 親友と、特別な人。

 心の中で天秤にかけて、アリーシャの心は後者に傾いた。




 戦争は?という質問は面会謝絶でございます。
 地の文からアリーシャがラスボス戦でどう行動するのか分かった方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな皆様はお口をミッフィーでございます。

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