CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
スレイの腕の中でアリーシャは身じろぎする。スレイの腕をすり抜けてまた別れようとしている。
させじとスレイは腕の拘束力を強めた。
「やっと見つけた! 遅れてすまない。霧のせいで全然見えなく、て……」
「契約を辿って足で探すというのもなかなか新鮮ではありました、け、ど……」
霧の向こうからミクリオとライラが、アリーシャを抱き締めるスレイを見て、メドゥーサに睨まれたかのように石化した。
「し、失礼いたしましたっ」
「取り込み中すまない!」
「二人とも! 取り込み中……ではあるけど、ちょっとこっち向いて! 大事な話だから」
スレイはコタローを呼んで、アリーシャが逃げないように捕まえていることを頼んだ。
コタローはさっくり了承し、アリーシャとがっしり腕を組んだ。
「騒がしいわね。すぐわかったわ」
「俺が風を読んで進路を決めた分も加算してほしいねえ。何だ。全員集合してんじゃないの」
エドナとザビーダも霧を抜けて現れた。これで話せる。
「アリーシャが治った」
「本当か!?」
一番にミクリオが食いついた。ミクリオは特にアリーシャを心配していたから当然の反応だ。
「そうなの? アリーシャ」
「……はい」
待て、とスレイの頭で警鐘が鳴る。今の会話に違和感が――会話?
「アリーシャ……視えてる、の?」
アリーシャ本人もはっとしたように口を覆った。
「どう、して。私、視えて、お声も、聴こえて」
「子供返りの時のまま五感が固定されちゃったみたいね」
「一度開いた目、開いた耳は、簡単には閉じないものです。色々ありましたが、今、アリーシャさんの才能は開花したのでしょう」
アリーシャはスレイの後ろに集まる天族たちの前に歩み寄った。
「ミクリオ様」
「うん」
「ライラ様」
「はい」
「エドナ様」
「なあに」
「ザビーダ様」
「おうよ」
アリーシャは感極まった顔を両手で覆った。
「どれだけ、どれだけこの日を夢に見たか……ああ、神様、ありがとうございます!」
「神様じゃない」
コタローが即座に言い挟んだ。
「アリーが自分で掴み取ったものだよ。だから自分を褒めてあげて。おめでとう、そして――おかえり、アリー」
アリーシャは泣き笑いで皆を見た。
「これで思い残すことなくハイランドに帰れます」
「だから、待ってってば! 今アリーシャが一人でハイランドに帰るなんて危なすぎる!」
「初めて君と会った時は一人でも帰れた。大丈夫だよ」
「あー、そういうことじゃなくて! 何てったらわかってくれるんだよ~」
「導師さん。せめてもう少し落ち着いて話せるとこへ帰りませんか? イズチとか」
「コタロー、ナイスアイディア!」
「それには『
「霧の全部を一ヶ所に集めなきゃいけないんだっけ」
「そんじゃここはいっちょ風の天族の出番だね」
自ら協力を買って出たのはザビーダだった。
「いいのか?」
「要するにこの霧まとめて一ヶ所に集めりゃいいんだろ? ザビーダにーさんにまっかせなさい」
ザビーダはおもむろにハットを脱ぎ、ロゼの頭に被せた。
「風で飛んだらいけねえからよ。預かっといてくれや」
「……うん」
ザビーダが両腕を上げて目を伏せた。風が生まれていく。アロダイトの森を聖なる緑風が吹き抜けていく。
緑風はスレイらの頭上で霧を包むゆりかごとなった。
「ここまでやってくれれば充分過ぎます」
コタローがアリーシャの腕を離したので、今度はスレイがアリーシャと手を繋いだ。
「星の力を秘めし鈴よ。真の姿を我の前に示せ。契約の下、虎太郎が命じる。
紙垂が何十条にも翻り、清冽な音色の鈴がコタローの手に収まった。
「汝のあるべき姿に戻れ! さくらカード!」
風のゆりかごから、「
やがて完全に光が収まってから、カードはコタローの手に落ちた。
「これで全員揃った――」
コタローは感慨深げに「
これでいつものアロダイトの森だ。
スレイはミクリオを見、ミクリオも意に気づいたようで、二人は笑い合った。
「じゃ、行こう」
「待ってくれ。本当にその、私も、行くのか?」
「行くの。帰るかどうかはそん時に決める。それまではオレから離れないこと。いい?」
「わかったよ」
スレイはアリーシャの手を引き、意気揚々と先頭を歩き始めた。
「どうしたの?」
エドナは聴こえないと知りつつ、声をかけた。
いつもなら真っ先にアリーシャに付いて行くコタローが、「
「――好きなことを忘れる、か」
「忘れる?」
コタローは「
エドナは穴をあけんばかりにコタローの背中を見つめてから、自身も歩き出した。
意外と早くアリーシャ元に戻りました。もうちょっと引っ張りたかったネタなんですがねえ。無念。
そしてスレイのほうはアリーシャ手放さない行動に出るようになりました。
スレアリ! スレアリ!