CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
ルナールが青い炎の手でロゼを殴ろうとした。
だがそれより速く、コタローがルナールの懐に入り、燃えるほうの腕を掴んで捻り上げた。
その上でコタローはがら空きになったルナールの脇腹を蹴った。
(強、い。『
「穢れ……」
「アリーシャ?」
「あの男――穢れてる」
息を呑んだ。
退行したアリーシャは、天族だけでなく穢れや憑魔も視えてしまうのか。
だとしたら俗世から切り離したイズチに連れてきた意味がなくなる。
(剣置いてきたの失敗だった! これじゃロゼとコタローに加勢もできない。せめてミクリオたちと繋がれたら!)
コタローがルナールの両腕を背中で捻じ上げ、地面にうつ伏せに押し倒した。
「コタロー、そのままにしといて。トドメはあたしがやるから」
「殺すんですか?」
「あたしはそうやって生きてきた」
「ッ……おい、あんた。これ以上、導師さんにもロゼさんにも風の骨の人たちにも手ぇ出さないって誓え。そしたら命は取らないでやる」
「ガキが一丁前にほざくんじゃねえ! 俺はそこにいる女をなァ、導師の目の前で八つ裂きにしてやるんだよォ!」
「無駄よ、コタロー」
「浄化は! できないんですか」
「加担したと思いたくないならどいてなよ」
「……おれが離したらすぐ殺すんでしょう」
「殺すよ」
――ここで問答していなければ、何かが変わったのだろうか。
ルナールがコタローを青い炎で弾き飛ばした。
吹き飛ばされたコタローは近くの樹の幹に背中を叩きつけられ、ずるずると崩れ落ちた。
「か……は」
ルナールは霧から霧へ飛び移り、焦るこちらの様子を愉しんだ上で、真上から飛び出した。
転身。ロゼがナイフを順手に切り替え、落ちてきたルナールの首を斬った。
ここでロゼは暗殺者として致命的な失敗を侵した。
ロゼのナイフは目測よりずれ、ルナールの喉笛を浅く斬ったに留まった。
仕留めきれず顔色を変えたロゼに対し、ルナールはにたりと笑うと、霧の中に飛び込んで姿を消した。
「待て!」
ロゼの声に返ってきたのは、律の狂った嘲笑だけだった。
アリーシャは再びその場に崩れ落ちた。震えながら両手を見下ろす。
“今見えているものが現実であり事実。そんなことも分からぬか!!”
重なる。フラッシュバックする。「あの日」の光景が、行為が、頭に再生される。
瞬間、あまりに呆気なく、今日までアリーシャが目を逸らしていたものが胸に去来した。
叫びも暴れもしなかった。ただ、一粒だけ涙が落ちて、土に染みた。
しゃがみ込んだままのアリーシャの肩に、コタローが手を置いて微笑みかけた。
「アリー、大丈夫だよ。こわいのはもう終わって……」
「コタロー」
「アリー? ッ、まさか!」
「私、殺した。
「アリーシャ!? 元に……戻った、の?」
アリーシャは無言で一つ肯き、一人で立ち上がった。
「今まで本当に、すまなかった。私の心が弱いばっかりに、君たちにも天族の方々にも、ひどい迷惑をかけた」
「ちょ、どこ行くんだよ、アリーシャ」
「ハイランドに帰る」
言って背を向けたアリーシャを、後ろから、スレイがきつく抱き締めた。
「帰らせない。あんなとこ、アリーシャが帰りたいって言った『家』なんかじゃない」
帰ってもまた忍従の日々。唯一の味方だったマルトランも二重の意味でいなくなった。もはや王室にアリーシャの居場所はない。
わかっていても。
引き留めるスレイの感触が、どれだけ胸を高鳴らせても。
アリーシャ・ディフダは、ハイランド王国の姫なのだ。
(だから、この感触だけ体に刻んで、これをよすがに生きていこう)
アリーシャはスレイの腕を振り解こうとした。
今度はちゃんと抱きしめてあげられたスレイ君でした。
いやここ本当悩んだパートです。アロダイトの森に憑魔はいないですし、入った例といったらこの狐男のみ。
そういうわけでペンドラゴの救出イベントをここに持ってきたわけです。