CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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狂った暗殺者

 アリーシャは身を縮めながら、霧の森を歩いていた。

 

「すれい、こたろー、どこ?」

 

 そうやって進むことでスレイやコタローから遠ざかっていることに、精神が幼くなっているアリーシャは気づかない。

 

 ばさばさ!

 

「ひぅ!?」

 

 ――ただ鳥が飛び立っただけの音でも、霧で視界を埋め尽くされているアリーシャには恐怖だった。

 

 アリーシャはただ訳のわからない音に怯えて走り出した。

 霧の森を、方角も考えず、めちゃくちゃに走り回った。

 

 やがて息が苦しくなってきたことで、アリーシャはその場にぺたんと崩れ落ち、嗚咽を上げた。

 

「かえりたいよぉ……っ」

 

 何度も袖で涙をぬぐったが、涙は次から次へと溢れて止まらない。それがまた辛くて、もっと涙が出た。

 

「――おんや~? こんな所で何を泣いてるんだ、お嬢ちゃん」

 

 アリーシャは顔を上げた。

 

 狐のような鋭い目鼻立ちに、これまた毛皮のような金髪の男。どこかで見たようなコスチューム……

 

「だれ?」

「おっと失礼」

 

 男は突然アリーシャの胸倉を掴み上げ、アリーシャを乱暴に立たせた。

 

「やっ、いや」

「俺はルナール。暗殺ギルド『風の骨』のメンバーだよ。元、ね」

 

 暗殺ギルド。「風の骨」。その名に、ぱちん、とアリーシャの中で弾けるものがあった。

 

「はるばるアロダイトまで足を運ばされたんだ。ちっとつまみ食いしたっていいだろう?」

「はっ、く」

 

 胸倉を掴み上げられているせいで息が上手くできない。視界が明滅する。

 

(すれい……すれい、すれい、たすけて!)

 

 ルナールが大口を開けた。獣のような牙が、まさにアリーシャに突き立てられようとした――

 

「がっ!?」

 

 拘束が緩んでアリーシャは地面に転がった。急激に入って来た空気にむせて咳き込んだ。

 

 見上げれば、ルナールの脇腹に1本のナイフが突き刺さっていた。

 

「アリーシャ!」

 

 アリーシャとルナールの間に立ちはだかる、赤毛の少女。

 

「ろ、ぜ」

「無事みたいね」

 

 ふいにアリーシャを誰かが抱え起こした。

 

「すれい!」

「よかった、間に合って」

 

 スレイはこの上なく安堵した顔をしてアリーシャの肩を抱いた。

 

 スレイの後ろにはコタローもいた。二人の姿を見て、アリーシャの胸から恐怖が消えていった。

 

 

 

 

 ロゼは背を向けたまま、ルナールに対して油断なく2本のナイフを構えている。

 さらに、スレイの後ろにいたコタローがロゼに並んで構えた。

 

「どうし、て」

 

 アリーシャがつたない口調で尋ねる。おそらくは、ロゼに。

 

「あたしが持ち込んだトラブルだからね。先にあんたたちが無事か確認してからケリつけようと思ったんだけど。裏目っちゃった。ごめん」

 

 ――スレイらが霧のアロダイトの中でロゼに合流できたのは、本当に奇跡的な偶然としか言い様がなかった。

 

 

 ロゼはペンドラゴへ駆けつけ、「風の骨」の仲間を救うのには成功した。

 だが、仲間を捕縛するよう裏で情報を流したルナールへの制裁は間に合わなかった。果ては、ロゼと対峙したルナールは、「お前の目の前で導師を八つ裂きにする」との不穏な捨て台詞を残して逃げた。

 

 イズチに来た時のロゼはみじんもそんな事情を窺わせなかったが、本当はスレイらを心配してイズチへ駆けつけたのだ。――ルナールがそれを尾けたことにも気づかないほどに、急いで。

 

「あんたらは下がってて。あたしの仕事だ」

 

 するとルナールは片手を顔に当て、律の狂った笑い声を上げた。アリーシャがより強くスレイの腕にしがみついた。

 

「気が変わった。やっぱり、てめえは――この手で殺してやるよォォォ!!」

「ほざけっ」

 

 両者は同時に地を蹴った。




 ペンドラゴでの風の骨救出イベントをここに持ってきてみました。
 

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