CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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彼女を探して

 逃げ出したアリーシャが入り込んだのは、よりによってアロダイトの森だった。

 

 侵入者を迷わせる森。そんな場所で、あの状態のアリーシャが無事でいられるのか。

 スレイは焦燥に駆られるまま、森へ飛び込み、気づいた。

 

(霧? 今まで森じゃ一度も霧なんてなかったのに)

 

 いつもミクリオと遊び場にしていた森は、霧が深く漂っているだけで知らない危地のように感じられて不気味だった。

 

「アリーシャ! どこだ!」

 

 走りを歩みに変え、周りを見ながら進む。そうすると、森の植物が一様に枯れていることがわかった。

 

「何で……森もジイジの加護領域なのに」

「『(ミスト)』ですよ」

 

 霧の中から前触れなくコタローが現れたので、スレイは危うく尻餅を突くところだった。

 

「霧を発生させて物を腐食させるさくらカードです。さすがに生き物には効果ありませんけど。この霧のおかげですっかりアリーを見失いましたよ」

「この霧、どうにかできないのか?」

「1ヶ所に霧を全て集めないと封印できないんです」

「何だ。だったらザビーダに頼んで、風で霧を集めちゃおう!」

 

 スレイはザビーダの真名を唱えた――というのに、風の神依は発動しなかった。

 

「え? え? 何で!」

「この霧そのものが憑魔の領域みたいな働きをしてるんでしょうね。前に霊応力が下がって天族の人たちとコンタクトできないことがあったでしょう? それみたいな感じです。――あ、そうだ」

 

 コタローは白いコートの内ポケットから、白黒の図柄の円盤を取り出した。天遺見聞録にも載っていない図柄だった。

 

「これが一番手っ取り早かったか。―― 玉帝有勅 神硯四方 金木水火土 雷風 雷電神勅 軽磨霹靂 電光転 急々如律令 」

 

 円盤が回転し、六芒星の羅針盤へと変じた。

 羅針盤から光の線が、森のさらに奥へと伸びた。

 コタローは光の線を追うように歩き出した。

 

「なあ、それ、何?」

「さくらカードの位置を標す道具です。アリーも3枚、さくらカードを持ってます。これで辿れるはずです。……最初からこうしとけばよかった」

 

 コタローが進み始めたので、スレイもコタローの後ろを付いて行くことにした。

 

「なあ」

「何です」

「さっき、何でロゼにあんなこと言ったんだ?」

「あんなことって?」

「その、恨む、って」

 

 コタローは足を止めてスレイをふり返った。修羅場慣れしたスレイでも竦むほど鋭い目。虎に睨まれたらこんな気分かもしれない。

 

「アリーが言ったまんまですよ。ロゼさんは、そのつもりがなかったとしても、アリーが欲しかったものを全部持ってた。天族を視る目、神依化の素質、そしてあなたの従士……というより、あなたの隣に堂々といられる立場」

 

 アリーシャの欲しかったもの。

 何かを強く「欲しい」と希求したことのないスレイにはピンと来なかった。

 

()()なったからアリーはその現実を忘れられた。そして、やっと、あなたがそばに来てくれた。後は時間が癒してくれるはずだったのに」

「そこにロゼが来た?」

「思い出したくない現実の象徴が現れたんです。怯えて当然です。ロゼさんもほんっとタイミング悪い」

 

 コタローは片手で顔を覆って首を振った。

 

「来たものはしょうがありません。とにかく今はアリーを見つけましょう。早く行ってあげないと。きっと怖がってる」




 コタ君がちょっとキレ気味なのですが伝わりましたでしょうか?

 これを書いていて自分も再発見したのですが、スレイって物欲ありませんよね。
 寝食に対してはそりゃあるでしょうが、他人に何かを求める時ってそれが必要だからって時が多くて、自分からこうしたいああしたいって言わないように見えました。

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