CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
イズチの杜には今日も元気な笑い声が響き渡っている。
それが壊れた心が発する声だと言って、どれだけの者が信じるだろう。
ライラは沈鬱な溜息をついた。
アリーシャはスレイと指を絡め合って手を繋ぎ、イズチを散策している。その後ろから気配を消してコタローが付いて行く。
アリーシャは、ライラにとっては特に珍しくない物でも、足を止めて「あれなぁに?」とスレイに尋ねている。
一目見ただけでは睦み合う恋人にさえ見えるが、その内実の悲しさをライラは知っていた。
「お。ライラ、みーっけ」
「あら、ザビーダさん。村を見て回っていたのではなかったんですの?」
「あらかた見終わった。――こんだけの数の天族が集まって村になってるなんざ、それだけで驚きだがな」
「はい。基本的に私たちが同胞に巡り合える機会はごくごく稀ですから。地の主になったりされた方は特に」
「ここは女の村人も多いんだ。ちょっとは女子トークできたかい?」
「いやですわ。奥様方の井戸端会議に突撃できるほど、私、強くありません」
「言うねえ」
「そういうザビーダさんこそ、村人を女性と見るやお声掛けしていませんでしたか?」
「おお。こんな昼間にメンフクロウが」
「飛んでませんよ」
「はっはっは。ライラのごまかし方が感染ったかね」
そろそろ日も高くなって、あとは落ちるばかり。
ここで何度、日が昇り、落ちる光景を見てきただろう。一体何日を無為にこのイズチで過ごしただろう。
全ての決着はもう目の前だというのに。
「ザビーダさん」
「はいよ」
「アリーシャさん、どうなってしまうんでしょう」
「それは『俺たちがアリーシャ姫をどうするのか』って解釈でOK?」
ライラは胸の前で両手を組み、顔を上げて肯定を口にした。
「――スレイさんはアリーシャさんが治るまでおそばにいるつもりです。秘力を全て授かり、かの者に立ち向かう準備こそ万全に整いましたのに」
「ライラはアリーシャをここに置いてって、スレイを災禍の顕主との戦いに専念させたいわけか」
「幸いにして、アリーシャさんにはコタローさんがいます。レディレイクに連れ帰れずとも、俗世を離れた場所で慎ましやかに暮らしてくだされば……」
「それ、スレイが許すもんかねえ。今のあいつは『導師』じゃねえ、一人の『男』だ。意中の『女』を取り上げられたら、穢れに染まっちまうかもしれねえぜ」
そんな、と声を上げようとしたところで、騒ぎの音が聴こえた。
ライラはザビーダと顔を見合わせ、二人して騒ぎのしたほうへ駆け出した。
この二人に関しては単に大人(?)同士なので組んでもらいました。
CPの意図、ゼロです。
ちょっとした好奇心ですが、過去の導師に恋愛か使命かを迫られた人はいたんでしょうか?